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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第四話・忍び寄る影(6)

 ダフネの護衛について六日目――。

 ()()が姿を現すことなく日が暮れ、辺りは闇に包まれた夜になる。

 (つき)の曜日とは由来通りか、最も月が大きくなる曜日。そう――レオンが地上に来て一番最初にフィトの部屋から月を見た曜日だ。

 大きな輝く月を見上げて、やっぱデケーなぁ……と、物思いにふけるレオン。

 しかし――その静かなる思考をぶち壊す出来事は唐突(とうとつ)に起きた。



「はい、並んで並んで~! 準備はおーけー?」



 リオンの声掛けに女性陣一同がこくりと頷くと――「……それじゃ、いっくよ~?」と、白銀に光る髪を揺らしながらリオンは右の手のひらに魔力を集中させた。

 すると次の瞬間――その手から、ブワッと風の魔法が発動する。



『……きたきたぁーっ! ちょーきもちいぃーっ!』

『……これぇ~、本当にいい気持ちよねぇ~♡』

「ほぁー……」



 リオンの風魔法を受けて、何とも心地よさそうに言葉を漏らす女性たち。

 吹っ飛び対策で眼鏡をはずしたゼフィランサスは『……魔法で髪を乾かすなんて、思いつきもしませんでした。控えめに言って最高です』と、普段見せないようなうっとり顔を見せる。

 そう――フィトと樹の精霊たちは、すっかりリオンの風ドライヤーの虜になっていたのだった。

 リオンの右手から吹く、柔らかく髪をなびかせる風。それは髪が乱れるほどの強さでもなく、かといって乾くまでに時間を要するほど弱いものでもなく――。本当に絶妙な風力なのだ。



「いやぁ~、それほどでもあるかな~? 何たって、この風加減は僕にしか出来ない芸当(げいとう)だからねぇ」

「それほどでもあるよぉ! おかげで毎日髪がさらさらだもんっ! リオン、ありがと!」

「たはは、フィトが喜んでくれるならいくらでもやったげるよ!」



 にこにこと笑い合う二人を見て面白くなさそうに「けっ、くだらねーな」と、目を半開きにするレオン。

 そんな兄に対し――「何だよ兄さん、女の子に歓喜の声を上げさせてる僕の事が羨ましいなら素直にそう言いなよ。見苦しいし、みじめだよ?」と、リオンはせせら笑う。



「あぁ? 誰が羨ましいって? 馬鹿言えよ」

「強がらなくてもいいんだよぉ? ほら、言えばいいじゃんか~。俺もイケイケのモテモテになりたいってさぁ?」

「おいコラ。誰がお前みたいにチャラチャラしたいっつったよ? チャラってる頭でちゃんちゃら可笑しなこと抜かしてんじゃねぇーよ」

「はぁ? チャラってないし、僕はただ女の子に優しくしてるだけですけどぉ? ひがみ根性丸出しのヒヨ兄に言われたくないなぁ!」

「誰がひがみ野郎でヒヨ兄だ! さっきから言わせておけば……アホリオンが調子乗ってんじゃねぇぞ!」



 ガルルルル! と、相変わらず兄弟喧嘩を繰り広げるふたりを見て――『……このやり取り、もう見飽きました。ここに来てもう何度目ですか? これに毎日付き合わされるフィトには心底同情します』と、ジト目でゼフィランサスは話す。

 フィトが苦笑いしながら「ふたりとも、もうそこまでにしよ?」と、犬耳兄弟に声をかけたその時――。


 レオンの視界の端に、闇に紛れる鈍色(にびいろ)の光が映った。

 ――――瞬間。レオンはすぐさま駆け出して槍を振りかざし、風を切る音と共に飛んできた漆黒の弓矢を叩き折る。



「――――誰だッ!?」



 奇襲を予測していた為、敵の攻撃を完全に防いだレオンは身構えながら声を張り上げる。

 弓矢の出先は、遺跡の吹き抜けから見える上空。そこには――建物のてっぺんに月光を浴びて立つ影がひとつ、ゆらりと立ち上がった。逆光で顔は見えない。

 しかし、敵はそれ以上の攻撃を放ってこない。何か理由があるのだろうか。

 緊張を走らせながら、ついにこの時が来たかと――兄の隣に立つリオンは同じく槍を手に構える。


 それから間もなく、その影はしゅたっと地面に降り立つ。そして、深く被った黒いローブをばさっと取り外すと――その正体を全員の前にあらわにして見せた。

 その顔を見て、信じたくないがこうも簡単に決まってしまった事実に驚愕(きょうがく)するレオンとリオン。

 そして思わず「ネメア……?」と、リオンが名前を口にする。



「もぷぅーッ! 何で邪魔するんだよぉッ! バカ犬兄弟、こんこんちきーッ!」



 つんつんとはねたマリーゴールド色の長い髪をサイドテールでまとめ、右目に黒い眼帯を当てた少女。身長はフィトよりずっと小さく、かなり幼い見てくれだった。

 隠れていない左目は髪色よりも濃いオレンジの柿色をしており、頭部に生えた動物の耳がぴょこぴょこと動いている。



「オイオイ、よくも邪魔してくれたな!? オマエらがいなかったら、確実に()()()の弓が樹の大精霊を貫いてたのにさぁ! せっかく月の曜日まで待ったってのにさぁ! 計画が台無しのめっちゃくちゃだよッ! ぬぁーッ!」



 ぷんすかと怒って一人地団太を踏むネメアを見て、言葉が出ない兄弟。

 後ろで樹の精霊たちとフィトは、その様子をじっと見守る――。

 行き場のない気持ちが溢れ出し、そんな事は認められないと、レオンとリオンの心が悲鳴を上げる。

 怒りと悲しみを抑えきれず、レオンは声を絞り出した。



「何で……お前なんだよ……。それに()()()()まで、グルだってのか……?」

「あー? なに言ってんのかイマイチよく分かんないけど、ネメア達には目的があるんだよッ! 分かったらそこ、どいてくんないかなぁッ! ……てか、ウドラ! 隠れてないでいい加減出てこいよッ!」



 支離滅裂な喋りをするネメアに対し――「まったく……。勘弁して下さいよ。今回も作戦を滅茶苦茶にして、怒られますよ? ……結論。もう怒られるのは決定ですが」と、低い声を響かせ――月光をバックにもう一人の仲間が姿を現した。

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