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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第四話・忍び寄る影(5)

 レオン、リオン、フィトが樹の祭壇を訪れて二日目の夜――。

 時刻は深夜二十四の刻。その時刻になると精霊たちは精霊石の前に(ひざまず)き、祈りを捧げるようにきゅっと手を組んだ。

 すると――その日もマナを放出していた精霊たちの身体に、とある変化が訪れる。

 精霊たちの身体から放出される桜桃色の光の粒はだんだん少なくなっていき――やがて、身体から眩い精霊光を発した後――。精霊たちの身体から光が消え、空気中に漂う粒たちだけが淡く輝き続けた――。



「あ、今日も消えちゃった……」

『……私たちの身体からマナが放出されるのは、二十四の刻までですからね。この後は、世界中にマナが巡るのをこの場で見届けるのです』



 少し残念そうにつぶやくフィトに、振り返って微笑むゼフィランサス。

 ふよふよと浮かぶ無数の光の粒に手を伸ばしながら――リオンは「この光たちはこれからゆっくりと世界を巡るのかぁ~。ほんと、生き物の血のめぐりと同じだねぇ」と、しみじみとこぼす。

 身体から大量のマナを放出させた大精霊ダフネは、疲労からかそれとも万年居眠り体質の眠気からか――、月桂樹にもたれかかりこっくりこっくりと舟をこぎ始めた。

 夜空には今宵もまんまるの月が浮かぶ――。レオンは美しく輝く月を見て「んん?」と眉間(みけん)にしわをよせ、首を傾げる。



「思ったんだけど……毎晩月のデカさ、違うよな? 何か小さくなってるっつーか……地上に来て一番最初に見た時はもっとこう、でかでかとしてたような……?」



 そんなレオンの発言にリオンは「え? 兄さん、知らなかったの?」と、リオン。

 知らなかったのは自分だけだったという居たたまれない雰囲気に「いやいや、だってしゃーねぇじゃねーかよ! 地上の事なんかわっかんねーっての! てか、何でお前は知ってんだよ!」と、レオンは弟の方を見て声をあげた。

 食って掛かる兄に対し――「え? だって、本で読んだし?」と、けろりとリオンは答える。

 返す言葉を失くすレオンに対し――「レオン、しょーがないよ? 冥界にいたんだもん、地上のこと知らなくてもおかしいことじゃないよ?」と、フィトはそう声をかけるのであった。




 ***




 樹の祭壇を訪れて三日目――。

 朝日が差す頃――。桜桃色の光の粒たちは大気に溶け込むように跡形もなく消えていき、今日も陽の光が地上を照らし出す――。



「ぜ~んぜん来る気配、ないよねぇ」

「ああ。()()がどこにいるのかは知らねーが、すでにこっちの動向を知ってて様子を見てんのかもしれない。気は抜くなよ」

「分かってるって。まぁ、こっちにいるメンツが誰も気配を感じないって事は、本当に近くにいないのかもしれないけどねぇ」

「まぁな。しっかし……状況がよく分かんないっつーのはやっぱモヤモヤすんなぁ……早く出てこいってんだよ」

「ははっ。兄さん、僕のせっかちがうつってるよ?」

「うるせ」



 首にかけた懐中時計を見て「……あ、交代の時間だね。僕はルルディと代わるから、よろしくねぇ」と、リオンは言い残してその場を離れる。

 月桂樹にもたれたままずっと眠り続けるダフネに寄り添うように、フィトもスヤスヤと寝てしまっていた。

 実際、この瞬間護衛はレオンひとりになってしまったが――月桂樹のハンモックで休んでいるルルディはすぐこっちに来れるし、もうそろそろ見回りに行ったゼフィランサスも戻ってくる頃だろう。

 そんな油断を少し心配するレオンだったが――、その日も()()が姿を現す事はなかった。




 ***




 樹の祭壇を訪れて四日目の夜――。

 夜空に浮かぶ月は、レオンの言う通り毎日大きさが変化していた。

 フィトや精霊たち曰く――(つき)の曜日、()の曜日、(みず)の曜日、()の曜日、(かぜ)の曜日、(つち)の曜日、(ひかり)の曜日――という一週間の七日周期で月の大きさが変わるとのこと。

 今日は土の曜日。明日でレオンとリオンの兄弟が地上に来て一週間を迎える事になるのだった。



「明日は光の曜日だから……ふたりが地上に来たのもそうだし、カリスト様が封印されてからちょうど一週間になるんだね」

「そうだねぇ。最初に地上に来た日は、ガルデニアのお祭りだったよね。何だか早く感じるなぁ~」

「あの時はまだ、家を出る事もこうして旅をすることも考えてなかったから……何だか遠くまで来ちゃったなーって考えてたの。……そういえばね、ガルデニアのお祭りも今日で終わりなんだよね」



 マナを身体から放出させながら果物を頬張っていたルルディは『……フィト、ホームシック?』と、心配そうに声をかける。

 ルルディの言葉を聞いたフィトは――静かにふるふると首を振る。



「叔父さんと叔母さんは……私がいなくなったこと、きっと何とも思ってないよ」



 気丈に話す黒髪少女を見て、思わず樹の精霊たちは顔を見合わせる。

 精霊たちはフィトから叔父と叔母と一緒に暮らしていた話は聞いたが、関係がうまくいってなかった事までは知らなかったのだ。



『……フィト、また変な事言っちゃってゴメン』

「へっ!? あ、ううん、私こそごめんね! そんなに深刻になるような話じゃないから気にしないでね? 一緒に暮らしてはいたけど、いろいろあって上手くいってなかっただけだから。……お兄ちゃんに会えたらもうあの場所に帰る気はないし、もういいの」

「そうだよ、あんな所にいる事ないよ。フィトが嫌な思いするの、僕はもう見てられない」

「俺も同感だな。フィト、早く兄ちゃんの事も探さねーとな」



 そんな話をしながら、今夜も夜は更けていく――。

 尻尾すら掴めない()()の動向を気にしつつ、ダフネの護衛は続く――。




 ***




 日はまた昇り、暮れていった五日目の夜――。

 そろそろ時刻は二十四の刻になる。光の曜日から月の曜日へと変わる――。

 しかし。その日も特に何もなく、時間は過ぎていく――。

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