巻き戻し時計 ~こぼれ話~
仕事を終えた悠夜と仄は、悠夜の運転で本部に戻っていた。
普段訪れない場所ということもあり、助手席の仄は窓から見える景色を楽しんでいた。
「この辺って、小さなお店がいくつもあって、いいですね。夜なんで閉まってるのが残念ですけど」
「開発地区だから、整備も整っているね」
幅が広く、綺麗な道路は走りやすい。実感しながらハンドルを握る悠夜が補足する。
「じゃあこれからもっとお店が増えるんですね」
「そうだろうね」
「新しいお店の開拓がしたかったので、楽しみです!」
「ちょっと遠いけどね」
「そうなんですよねー。気軽に来られないのがネックです」
そう言って口を尖らせる仄に悠夜は苦笑した。
丁度、赤信号につかまり、ブレーキを踏みシフトをニュートラルに入れる。
悠夜の運転は丁寧だ。もちろん仄が乗っているので安全運転を心掛けてはいるが、余計な振動や音を出さない。
ほどなく信号が青に変わり、シフトをニュートラルからロウに入れ、半クラ発進をする。
エンジンをふかしすぎることもなく、スムーズにシフトチェンジをしてギアをトップまで入れる。
静かなエンジン音の振動が心地よく、眠くなってくる。
「……でも最初は、アンティーク・ショップに行きたいです」
「ああ、そうだったね」
「悠夜さん。連れて行ってくれるって……」
「うん。約束したからね」
「……約束、です」
「……仄?」
悠夜が前に注意しながら助手席に視線を送る。
仄は小さな寝息を立てていた。
力を使って疲れたのだろう。
あっという間に寝てしまった。
悠夜は小さく笑うと、また安全運転につとめることにした。




