#01「選択肢の中で炎を選ぶ」中編
「ん…」
「やばっ!!」
入学式の疲れを癒すためにベッドへ潜ったつもりだったがいつの間にか寝落ちてたみたいだ。
それもかなり深い眠りに付いていたようで時計の秒針を確認すると針は6時を指していた。
流石に日は跨いでいないがそれでもかなり寝ていた方だろう。
入学式が終わって帰ってきたのが1時だから…だいたい5時間は寝ていたようだ。
「はぁ」
俺は溜め息を吐きながら重い腰を上げ起き上がる。
「えーと、まずは…なにすればいいんだ?」
まだ寝ぼけているのか頭が回っていない。
グ〜
腹部からの音でお腹が空いていることに気づいた。
「あっ!晩飯買いに行かなきゃ!」
朝は急ぎすぎてて朝食を食べる時間などなかったからこれが俺の記憶のかなでの初めての食事になるのだろう。冷蔵庫の中身は当然空なのでなにか買いに行かなければならない。
「財布…財布…」
朝は部屋を一通り見るので精一杯だったためにあまり財布や携帯などの細かいものを見ることが出来なかったが机の上に携帯と財布があるのは確認できた。
おそらくこの財布と携帯は支給されたものか自身で購入したもののどちらかだろうがどちらも使用した記憶がないので携帯に関しては初期設定から始めなければならない可能性がある。
携帯のことはあとに回して横に置いてあった財布を手に取り中の金額を確認する。
「うお!めっちゃ入ってる!!」
財布の中身を除くと中に一万円札が五枚入っているのが確認できた。
「いや…」
少し興奮気味になるが冷静に考えてみると携帯や財布、ベッドなど必要最低限しかないので歯ブラシや食器などの日用品は自分で揃えなければならない。
そこに溶ける金額を考えたら贅沢などはしてられないだろう。
我に返って溜め息混じりの息を吐く。金額のことを考えて重くなった体をゆっくりと動かし、財布を片手に玄関のドアノブに手をつけた。
…がそこでとあることに気づく。
「俺…コンビニまでの道のりわからなくね?」
今まで当然のようにコンビニに行こうとしてたがそもそもの道のりを知らない。
…こういう時のために携帯のマップアプリがあるのか…寮を出る前に気づけてよかった。
俺は部屋に戻るなり早速スマホの電源をつけたがやはり初期設定が完了されてなかったようだ。
特に手こずることはなくスマホの初期設定を完了させマップアプリを開いた。
コンビニまでは徒歩5分…コンビニが近いのは便利だな。
携帯と財布を両手に持ち再び玄関へと戻ってきた。
「今度こそ見落としてることはないな…」
しっかりと忘れ物がないかを確認した俺は玄関をあとにした。
ーーーーーーーーーー
あれから歩き始めてだいたい5分たっただろうか…目的地のコンビニへとついた。
コンビニとはいったがかなり広く、歯ブラシや食器など日用品が一式揃っている。
直近三日間分のご飯と日用品を買い揃えて会計を済ませる。
レシートを確認した俺は咄嗟に苦笑いをしてしまう。
「コンビニで一万円って…」
こんな経験はなかなかできないだろう。
まぁそれほど買ったということだ。
まだ帰るには早いな…
せっかく外出てきたし、時間もあるから寮の近くを散歩するとしよう。
散歩している途中、虫の鳴き声がそこかしこで聴こえてくる。
近くにコンビニがあるだけで都会というわけではなく、あたりには気や川などの自然が溢れていた。
まぁ俺からしたらうるさすぎない田舎の方が楽なんだけどな。
ぐぅー
そこから30分ほど歩いただろうか…さきほどからお腹が定期的に鳴っている。言われてみれば少しお腹が減ってきたな。
「結構歩いたことだしそろそろ帰るか」
俺は空腹を理由に散歩を終えまっすぐ帰路についた。
ーーーーーーーーーー
「これめっちゃうめぇ!」
寮に戻ってきてからコンビニで買ってきた日用品を一通り配置し、今は晩飯のカップ麺を食べているところだ。
てかどうでもいいかもだがご飯を箸で食べるという知識もきっと記憶喪失前に身についた知識なんだろうな…記憶がないのに知識はあるってなんか不思議な感覚だ。
カップ麺の美味しさに魅了された俺はあっという間に完食し、特に語ることのない風呂や歯磨きなどを終え就寝した。
ーーーーーーーーーー
「ふわぁ〜」
大きなあくびをかきながら目覚めた俺は、眠い目を擦りながらベッドから起き上がった。
「今何時だ?」
携帯の時刻は六時と表示されている。
六時か…昨日すでに五時間寝ているから…だいたい合わせて12時間ぐらい寝ていたことになる…ちょっと寝すぎじゃね?
まぁたくさん寝たおかげか体はものすごく軽いため、それに伴って気分がとても良い。今日はなんだかいいことがありそうだ。
朝食をとり終え学校の支度も完了したせっかく機嫌が良いため少し早めの時間帯に登校することにした。
「まだ七時か…もしかしたら俺が一番乗りになれんじゃね?」
さすがにこんな早い時間に登校してくる猛者はいないだろう。
寮を出た俺はスキップを踏みながら学校へと向かう。道中一人もすれ違わなかったため、ほぼ一番乗りで確定だろう。
「ふふんふーんふふんふーん」
学校に着いた俺は誰もいない校舎に少し高揚し、鼻歌を歌いながら教室へと向かう。
「スラマッパギー!!」
扉を全力で開き、大声で挨拶をしてみる。
まぁ誰もいないから返事なんて来ないんだけどな…
「…なんだ朝から騒がしいな」
「え?」
一番乗りかと思っていたが先に一人の生徒が座っていた。
え?幻覚かなにかなのか?
見間違えかと思い、目を擦ってみる。
いや、残念ながら幻覚ではないようだ…ということは
今の大声は聞かれていたということ!?
急に恥ずかしくなって顔が赤くなる。
「公共の場で大声をだすな、そういうのは周りに人がいないのを確認してから行え」
「あ、すんません…」
俺は突きつけられた事実に謝罪する…ん?つかこいつどっかで見た事あると思ったら…
「てかお前!昨日新入生代表挨拶してた人か!」
「初対面の人にお前呼びとは失礼だな」
「あ、ごめん」
なんだこいつ細かいな…俺は静かにため息をつきつつ、自分の席にリュックを置いた。
「…」
朝早めに来たけどやることねー!無計画すぎた…
あいつ…いちいち細かいけど仕方ない、俺は暇つぶしのために再びこいつに話しかけることにした。
「俺、佐久間 旭!うーん…趣味は無いけど好きな食べ物はカップ麺!よろしくな!」
明るめの挨拶で自己紹介をする。これはみんなとの自己紹介でも使っていく予定のやつだからいわば予行練習みたいなもんだ。
「はぁ…人が読書してる時に…まぁいいか、他生徒との交流も大事だな。俺は黒瀬 律、好きなものはない以上」
「いやそれだけ!?」
こいつ交流も大事とかいうわりに冷めてー
「好きな食べものとかねぇのかよ?」
「好き嫌いをしてるなんて随分と幼稚だな
好き嫌いせずに全てに感謝していただくのが普通だ」
「は?」こいつ割と話通じないタイプだな
俺は相手に呆れつつ、話を続ける。
「んー、じゃあさ!部活何入る?俺なんの記憶もなくて何習ってたとか忘れちゃったけど興味あるのはサッカー!ゴール決めるの楽しそうだし!」
今度は部活の話を振ってみる。
「…記憶がない?」
変なところに食いついたがまぁいいだろう、今度は記憶喪失の方で話を展開する。
「まぁな、だから小中学生だったころの記憶とかないんだよ、まぁ勉強とかは覚えてるんだけど」
「やはり…いやそんなわけは…」
一人ブツブツなにか話しているが気にしないでいいだろう。
「どうした?なんかあったのか?」
「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ」
明らかに態度が変わったのが伺えた…恐らくこいつなにかを隠してる…黒瀬 律、こいつについてけばなにかを掴めるかもしれない。




