#01「選択肢の中で炎を選ぶ」前編
「ーっ!!」
何だこの記憶…コンビニの袋持ってる…学校帰りか?
あ、桜綺麗だなぁ…後ろに気配を感じる
なんか背中痛いなぁ…なんだこれ…手に血がついてる?なん…か…意識…が…
「はぁ!!はぁ!!…なんだ夢かぁ」
奇妙な悪夢を見た…断片的に映し出される謎の映像…なんなんだこの夢は…全く、目覚めの悪い朝だ。
少し気分が悪いがまぁ気にしても無駄だろう…
「よし!朝飯にするか!」
俺は気持ちを切り替えて朝食を取りに冷蔵庫に向かおうとしたが…そもそも冷蔵庫ってどこだ…?
おかしい…確かに俺は寮で目覚めた…なのに寝た記憶もない、寮で生活していたはずなのに…昨日までの記憶が一切ない。覚えてるのは自分の名前が佐久間 旭だということと常識や知識といった基礎的なことだけ。
今思えばいつ寮に通い始めたのかも全く思い出せない。
まぁ考えても答えが出るわけないけどな…
少し違和感があるが今は記憶喪失だったってことにしておくか。
なぜか昨日までの記憶がないこととか一切気にならない…少し不気味に感じるが興味がないので仕方ない。
手始めに俺はこの部屋のどこになにがあるのかを理解するために色々なところを見て回った。
「これでこの部屋の構造はだいたいわかったぞー」
部屋は特別広いわけではないが一人で暮らすぶんにはちょうどいい。
部屋はあらかた見たが気になったものが一つだけあった。俺はそこへと向かいそこに置いてあった一枚の紙を読んだ。
「規律高校、入学式要項?」
読んでみるとどうやら俺は規律高校とやらの一年生で今日が入学式らしい。なんか急に緊張してきたな…
一旦深呼吸をして少し上がった心拍数を押さえて入学式の時間帯が書かれている場所を読んだ。
「えーっとなんだって…集合時間…8時半!?」
待って今何時だ!!やば!!
時計はちょうど8時を迎えようとしていた。
やべぇ!呑気にしてる場合じゃねぇ!!
俺は急いでリュックの中に必要最低限の物をつめて制服へと着替え飛び出すように家を出た。
あと30分で登校!?これ間に合うか…!?
駆け足気味で通学路を歩いていたが…今日が初めての登校なのを忘れていた!どこに学校があるのか分からないぞ!!
どうする?入学初日から遅刻だけは避けたい!!俺はなんとか知恵を振り絞り学校までのルートを思い出そうとしてみたが…うん全く思い出せない!なんなら多分もともと学校までのルートを知らない!!詰みだ!!どうしよう!!そんなことを考えていると目の前に自分と同じ制服の生徒を見かけた。
良かったーあの人に着いてけば安心だろうな。
一時はどうなるかと思ったが九死に一生を得た。
「危ねー!!ギリギリセーフ!」
ーーーーーーーーーー
キーンコーンカーンコーン、チャイムとほぼ同時に教室に入った自分の席を見つけリュックを置いた。
ちなみに俺の席は教室の窓側の隅らしい。当たりがハズレかで言えば当たりだろう。くだらんことを考えつつ俺はゆっくりと腰を下ろし、少し荒くなっていた息を整えるために深く深呼吸をした。
「ふぅ…入学初日から遅刻は勘弁だぜほんと」
少し落ち着き、特にやることもないので暇つぶしとして教室全体を見回す…ざっと30人ほどのクラスだ。
その中には優しそうな見た目のやつからいかにも怖そうなやつまで多種多様な生徒がいる。
これから色んな人と関わるのが少し面倒くさいと思いつつ楽しみにしている自分がいる。
これから何人友達できるかな…
なんて呑気なことを考えていると教室後方側の扉がゆっくりと開き、奥から先生?らしき人が廊下に並ぶ旨の話をしていた。
「俺も並ぶか」
俺はゆっくりと腰を上げみんなと同じように廊下へと並んだ。おそらくこれから入学式が始まるのだろう。先頭を立っていた生徒が歩き始めて、それに続くようにみんなも歩み始める。
歩いてる最中、色々な所を見回してみたがこの学校はかなり広く作られているようだ。
整備がしっかりしていてかなり予算が使われているのが一目見ただけでもわかる。あとで校内探索でもしようかな。しばらく歩いてると入学式を行う場所だと思われる体育館へと着いた。
指定された席へと座り式が始まるのを待つこと5分。スピーチ席にいた先生が喋り始めて式が始まったことが伝えられる。
まぁこれといって面白いこともないので軽く聞き流している。
式が進行している最中、これからのことを考えていた。入学式は午前中で終わるため、午後はフリーになるのだがこれといってやりたいこともないがなにもしないのはもったいない思っているのでどうしようか悩んでいる。
まだ家の中を見ただけで外などはあまり見れていなかったし散歩でもしながら街の雰囲気を味わうとするかな。
「本日はこのような素晴らしい式を開いていただき誠にありがとうございます。」
放課後の過ごし方を考えているうちに式も終盤になってきたのか新入生代表が代表挨拶を話している。
その男はサラッとした黒髪にキリッとした目、細いメガネといかにも真面目そうな見た目をしている。
遅刻ギリギリに登校した俺とは無縁の世界を生きてるだろうなー
「新入生代表、1年 黒瀬 律」
新入生が挨拶を終え、閉式の言葉も終え、入学式は終了した。
教室へと戻ってすぐ、担任と思わしき人が教室へと入ってくる。
「みんなおはよう!!俺はこのクラスの担任を務めることになった堂前 豪だ!!一年間よろしくなー!!」
とても元気な大声が教室全体に響き渡る。
なんとも騒がしいやつが担任になったな。
見た目は声量に負けず劣らずなムキムキボディでいかにも体育会系な人間だ。
そんな全力の自己紹介に感化されたのかクラスのみんなからの拍手喝采が鳴り止まない。
しかしその自己紹介と拍手でクラスの空気が和んだか好奇心旺盛なクラスメイトたちが次々と先生に質問を投げる。
内容は先生何歳なの?や先生って彼女いるんですか?とプライベートにガッツリ踏み込んだ質問が多い。
先生も生徒の質問にしっかり答えるように「24歳独身だ!」や「彼女なんていたら教師やってねぇよ!」などしっかりと答えている。いやいいのかよそれで
しかし自己紹介というのは自分の周りからの第一印象を作る重要なイベントだ。
ここでミスると友達作りにも影響がでてしまう。自己紹介で滑るのだけはなんとしても避けたい。
今から最高にウケる自己紹介の内容を急いで考えなくては…俺はたくさん思考を巡らせる…が当然自己紹介なんて何を言えばいいのか分からなくて困る。
「まぁ今日は俺がこのクラスの担任だよってことを伝えるために自己紹介しただけだからな…お前らの番は明日だ!」
内心少し焦り気味だったため先生の一言に少し安堵した。これで自己紹介の内容を濃く作れる。
そこからは明日から使う教科書の配布や連絡事項を伝え、帰りの挨拶とともに一日の学校は終わりを告げた。
カバンを背負い校門から出て寮へと帰ろうとした時、俺は不思議な光景を目にする。
沢山生徒がいて今日は入学式なのに…なぜか生徒の両親らしき人たちが誰一人いない。
全生徒寮生だったとしても不思議だ。入学式ぐらいは保護者の参加があるのではないか…?
しかし言われてみれば自身の両親の記憶もない。
俺には両親がいなかったということか…?
こんなに不思議なことなのになぜか気にならなかった。…なんでだ…
今朝と同じような違和感に俺は不気味さを感じたが不思議と探ろうとも思わなかったので寮へとまっすぐ帰ることにした。
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「ただいまー」玄関へ入り誰もいない家にただいまと言ってみたがまぁ当然、返事はない。
靴を脱ぎ部屋へと入った俺はカバンを下に置き、疲れを押し付けるようにベットへと飛び乗った。
「はぁー午前授業だってのになんでこんなに疲れだよー」
不思議なことに終われた一日だったからかどっしり疲れた。がそれと同時にこれからどのような学校生活が待っているのか楽しみにしている自分もいた。




