Ch.60 アブナイ北の大地リターンズ その五
大宴会場を離れる克己をブローニャとソフィアが呼び止めた。
「ユウキ様!こっちに来るなのです!」
ブローニャは克己を見て笑む。
「・・・」
克己はブローニャに近づいた。
「一緒にフェスティバルを楽しむなのです!」
ブローニャは克己の手を引っ張る。
「おいおい、コケるなよ?」
克己は微笑みながら引っ張られる。
(いつか・・・いつか話せるかな)
克己は寒空を彩る色鮮やかな大輪の花を見つめる。
「おう!ミシカの英雄!」
鍛冶師たちは笑みながらジョッキを掲げた。
(あの過去を・・・俺が生きた世界の話を)
克己はみんなに手を振る。
みんなが酒飲み対決に熱中している時、ほろ酔いの克己は黄金がふりかけられた巨大な赤エビを食べながら静かに酒を飲んでいた。
「驚いたのだわ」
ソフィアは克己の向かいに座る。
「だから言ったなのです。ちゃんと大人っぽいって」
ブローニャはソフィアを見る。
「大人っぽいって、俺は大人だよ」
克己はエビを切り分けるとジョッキを持った。
「あぁ、しゃべると子供っぽいなのだわ」
ソフィアは克己を見る。
「コラ!」
ブローニャはソフィアを叱る。
「まぁ・・・どれだけ姿が立派になっても、中身はまだまだ子供なのかもな」
克己は酒に映る己を見つめる。
「・・・」
ブローニャとソフィアは酒を飲む克己を見つめる。
「俺、もっと大人になるよ」
克己はジョッキを置いた。
「え?」
「イズモの領主になる」
「・・・」
ブローニャは克己を見て目を輝かせて微笑む。
「・・・」
ソフィアは克己とブローニャを見て笑むと立ち上がった。
「どこへ行くなのです?」
ブローニャはソフィアを見る。
「パレードを見てくるのだわ」
ソフィアは去っていった。
「・・・今から言うことは独り言だ。聞き流してくれればいい」
克己はそう前置きをすると語り始めた。
自分の過去を、自分がいた世界のことを。
それは楽しそうで、嬉しそうで、悲しそうで、切なさに満ちていた。
「とても頼りにしてくれた親戚の子が居たんだ。君と同じくらいの年だった」
ブローニャは克己の言葉を思い出しながら酔い潰れた克己を引っ張っていく。
「いつも兄さん兄さんってうるさくて、何かあるとすぐに手を引っ張って来た」
ブローニャは克己の言葉を思い出しながら克己を見て切なく微笑む。
「どうして優しい人から先に逝ってしまうんだろうな」
ブローニャは克己の言葉を思い出しながら涙を零す。
「あの子が生きてくれるなら、俺はどうなっても良かったのに」
ブローニャは克己の言葉を思い出しながらマリアを見る。
「あらあら」
マリアは酔い潰れた克己を見て静かに笑う。
「今は、王国の人たちに会いたくないみたいなのです・・・」
ブローニャは克己を抱きかかえるマリアにそう話す。
「いいわ。私が面倒見ておきましょう」
マリアは克己を長椅子に寝かせて膝枕をした。
「・・・」
マリアは克己の耳を優しく撫でる。
祭りが終わってから少し経った頃、克己たちは溶けかけた雪が積もる北の大地周辺にいた。
「イズモの領主になったら、友好の証としてセルグニーナ・ブラガラードヌィエ・クリヴィェートキを送るなのです」
ブローニャは克己を見て笑む。
「ありがとう」
克己はブローニャを見て微笑む。
「お世話になりました」
トリーナはブローニャにお辞儀した。
「また、どこかで」
ブローニャは克己たちに手を振る。
「このチビ!いつまでも美味しいものを独り占めできると思うなよ!?」
マデリンはブローニャにぷんぷん怒る。
「私はあなたよりお姉さんなのです。だから、怒らないなのです」
ブローニャはドヤッと胸を張る。
「クーッ!ムカつく!!この太っちょ!」
「何を!?この下はちゃんと細いなのです!」
ブローニャはマデリンにぷんぷん怒る。
「姫様、さっさと乗れ」
克己とトリーナはマデリンを引っ張って馬車に投げ込んだ。




