Ch.59 アブナイ北の大地リターンズ その四
結城 克己が震える口を開く。
「い、今・・・転移者って・・・」
結城 克己は銀髪の女性を見つめる。
「言ったわ」
銀髪の女性はすっと場を落ち着かせるような穏やかで滑らかな声でそう答えた。
「どうして!!」
銀髪の女性の言葉に結城 克己は動揺を隠すように声を荒げる。
「どうして・・・俺が異世界から来たって・・・」
結城 克己は激しく動揺しながら訊ねる。
「私があなたをここに召喚してしまったから」
銀髪の女性の言葉に結城 克己は言葉を失う。
「私はミアズマと呼ばれている」
「最初の魔女・・・」
結城 克己は最初の魔女ミアズマの言葉に驚く。
「そういう肩書も持ってはいる」
「どうして・・・俺をここに?」
結城 克己はミアズマの向かいに座る。
「私は家に帰る方法を探しているの。その方法を探している途中で生み出した魔法が偶然あなたをここに召喚してしまった」
「・・・」
結城 克己はうつむいて黙り込んだ。
「ごめんなさい。悪意があったわけではないの」
ミアズマは結城 克己に謝罪の言葉を伝える。
「私は今まであなたを探していたの。あなたを元の世界に帰すために」
ミアズマがそう言った瞬間、結城 克己の脳が凄まじい速度で思考する。
元の世界で過ごした一瞬一瞬が、この世界で過ごした一瞬一瞬が、走馬灯のように流れる。
「ここに残っちゃダメかな?」
克己の言葉にミアズマが静かに驚く。
「俺・・・こっちで生きてる方が楽しいんだ。色々とアブナイ目にも遭ったし、めんどくさいこともあるけど・・・それでも、やっぱり楽しい」
「本当に?これから先、帰りたいって思っても帰れないかもしれないのよ?」
ミアズマは克己に忠告する。
「・・・」
ミアズマの忠告を聞いても克己は首を縦に振った。
「・・・わかったわ」
ミアズマは克己に優しく微笑んだ。
「ありがとう」
克己はミアズマを見て笑んだ。
「じゃあ、フェスティバルを楽しんで。変わり者の転移者さん」
ミアズマは立ち上がった。
「あの、一つ聞いても良いか?」
克己の言葉にミアズマが足を止めた。
「ここから東にいくと出雲っていう領地があるって聞いた。あんたと同じ、魔女の肩書を持つ者が統治してたって。新しい領主が決まらないとか・・・」
「その魔女は宇宙を旅したの。あなたが住んでいた地球という場所も観光したと言っていたわ」
ミアズマは克己を見て笑む。
「命が終わるその時が来るなら、あの美しいピンクの花を咲かせる木の下で死にたいとも言っていたわね」
ミアズマはその言葉を最後に銀色の霧となって消えていった。
「・・・ピンク色の花が咲く木・・・絶対に桜だ・・・」
克己はワクワクしながら笑みを浮かべた。
アブナイ北の大地リターンズ編
ミアズマ
降臨と共に古代文明を消滅させ、世界に魔法をもたらした伝説の存在。
最初の魔女という肩書を持ち、教会の信仰対象となっている。




