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Ch.6 アブナイ姫様 その六

アヒルのおもちゃで遊ぶマデリン姫を見届けてお風呂から出た結城 克己はクローゼットを開けた。

「どれくらい時間が経ってるんだろうな・・・」

「まぁ・・・今、元の場所に戻れたとしても・・・会社はクビだろうな・・・」

結城 克己はしまわれたスーツを見つめるとクローゼットを閉じた。

「また就活か・・・」

結城 克己はベッドに寝転がった。

「ユウキ様、入りますよ?」

ドア越しにトリーナの声が響く。

「はい」

結城 克己は起き上がった。

「ユウキ様。本当に明日、出ていかれるのですか?」

トリーナは結城 克己を見つめる。

「はい。色々とお世話になりました」

結城 克己はトリーナに深々とお辞儀をした。

「ユウキ様がお望みなら姫様の教育係として雇い入れると陛下も言っております」

「望まない。ここは・・・そうだな、俺には眩しすぎる」

結城 克己は城での生活を思い出して笑う。

「そう・・・ですか」

トリーナは寂しそうに結城 克己を見る。

「姫様によろしく言っておいてくれ」

結城 克己はトリーナに向かって雑に手を振った。

「あと・・・勉強はしておけ。将来、苦労する時が来るぞ。って言っておいてくれ」

結城 克己は真剣にそう伝えた。

「・・・はい」

トリーナは結城 克己に微笑んだ。

トリーナが部屋から去った後、結城 克己はベッドに入って眠りについた。

しかし、結城 克己はベッドが動いていることに気が付いてすぐに目を覚ました。

「・・・起きておったのか・・・」

マデリンは結城 克己を見て頬を赤くする。

「起こされたんだよ・・・」

結城 克己は眠そうにマデリンを見る。

「お主に・・・妾の初めてをやろう」

マデリンの言葉に結城 克己の目が完全に覚めた。

「だから、城にいて欲しい。妾の傍にいて欲しい」

マデリンは結城 克己を見つめる。

「俺は自分のことを大切にできる人が好きだ。十二歳の娘が二十五歳の男を引き留めるためだけに大切なものをあげるなんてありえない」

結城 克己はゆっくりと起き上がった。

「・・・」

マデリンは黙ってうつむいた。

「姫、俺から送る最初で最後の授業だ」

結城 克己はマデリンを見つめる。

「・・・」

マデリンは結城 克己を見つめる。

「自分を大切にできない人は、他人のことも大切にできない。勉強は視野を広げるための訓練だ。清潔な体を保つことで臭いが抑えられ、虫や小動物から媒介される病気の蔓延を抑えることができる。だから、勉強をしてお風呂に入るんだ」

結城 克己の声にマデリンは黙ってうなずく。

「この先、姫もきっと運命の人に出会う。その時は、自分のことも相手のことも大切にしてあげるんだぞ?」

結城 克己はマデリンを見て笑んだ。

「もしも妾に運命の人が現れなかったら、お主に責任を取ってもらうからな」

マデリンは結城 克己を見つめる。


翌日の早朝、結城 克己は王に別れの挨拶をするため玉座の間に訪れた。

「陛下、どうもお世話になりました」

スーツの上着を抱えるように持った結城 克己は王に深々とお辞儀をする。

「ユウキよ、困った時はいつでも来い。お主はもう臣下のようなものだ」

王は結城 克己を名残惜しそうに見つめる。

結城 克己は玉座の間を去った。

そして、城の中を懐かしそうに見渡しながら正門へと向かった。

「ユウキ!」

マデリンは結城 克己に声をかける。

「姫!?」

結城 克己は驚きながらマデリンを見る。

「ユウキ」

髪をバッサリと切ったマデリンは結城 克己に長い髪の束を差し出した。

「昨日のことを忘れないように、妾のことを忘れないように持っていろ」

マデリンは結城 克己に微笑んだ。

「この姫様・・・アブナイ!!」

結城 克己は長い髪の束を握らせるマデリンを見て顔を青くした。

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