Ch.43 アブナイ北の大地 その七
食事場を離れた結城 克己が鍛冶場に併設されている射撃場で射撃訓練をしていると研究員たちが来た。
「ユウキ様、グラン・チェレパハが現れました」
研究員は克己に報告する。
「現れたか」
克己はそう言うと煙を噴くマスケット拳銃の銃口をフッと吹いた。
「すぐに向かおう」
克己は研究員と共に射撃場を出て生態研究所の近くにある巨大で重厚な昇降機の上に格納された一万四千トン級の超巨大な砕氷船、ヴェーラ級一番艦ヴェーラに乗り込んだ。
この巨大で重厚な昇降機は、何百基もの蒸気機関から凄まじい力を受け取りながら稼働する。
セルグニーナ・セーヴェルナヤを治めた女皇の名を冠した砕氷船は、ゆっくりと海まで下ろされて波を立てながら着水した。
煙突から黒い煙を噴き出しながら氷に包まれた海を航行するヴェーラ号の中には、小型化・簡略化されたフェスティバルの拠点がある。
乗組員はひたすら火薬を紙に包んだり、籠を作ったり、羊の腸を使った防水袋を用意する。
「グラン・チェレパハの甲羅には希少な食べ物がたくさんあるなのです」
ブローニャは克己に嬉々として話す。
「香辛料とか調味料が多いんだな」
克己は文献を確認する。
「この中でもレアなのが十万年以上生きたグラン・チェレパハからしか採れない究極の岩塩、"十万年岩塩"なのです!!」
「十万年岩塩!?何それ凄そう!!」
克己はブローニャを見て目を輝かせる。
「小さな粒の岩塩が金貨で取引されるまさに食べられる黄金なのです」
ブローニャの言葉を聞いた克己は少し考えると口を開いた。
「どうして王国に隠すような真似をするんだ?言えば協力してくれるだろうし、横取りをするようなあくどい組織でもないぞ」
克己はブローニャを見る。
「セルグニーナ・セーヴェルナヤは王国に編入してはいますが、仲が良いわけではないなのです」
ブローニャは克己を見る。
「そうか・・・」
克己はミノリ領のことを思い出す。
「それに、王国の連中が入ってきたらこちらの取り分が減ってしまうなのです」
「そうか・・・」
克己は悩ましそうに呟く。
「まぁ、いいや!今回は個人としてきたんだ」
克己は悩みを吹っ切った。
「セルグニーナ。王宮の馬車列の中にトリーナの部下たちが乗る馬車があった。俺たちを見たらあっちも動くんじゃないか?」
克己はブローニャを見る。
「そんなことはもう対策済みなのです!その対策としていくつもの部隊を投入したなのです!」
ブローニャは克己を見て自信満々な笑みを浮かべる。




