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Ch.40 アブナイ北の大地 その四

カニを食べ終える頃、結城 克己のテーブルに酒が届いた。

届いた酒は高いアルコール度数を誇るウオッカ。しかも、割り材はない。

「男爵閣下、乾杯しましょう」

マリアは三十ミリリットルほどしか入らない小さなグラスを持った。

「マジですか?やるんすか!?」

克己は同じように小さなグラスを持った。

「乾杯!」

克己とマリアはウオッカを飲み干した。

「カーッ!やっぱり強いな!!」

克己はグラスを置いた。

「流石ですわね」

マリアは克己を見て笑む。

「そうだろ?」

克己はマリアを見て笑む。

「ユウキ様、ウオッカが気に入ったならジールナイェ・ミャーサを食べて欲しいなのです」

ブローニャは克己を見て笑む。

「なにそれ」

「トドの脂身なのです」

「トド!」

克己は興味深そうに言った。

「大人はお酒と一緒によく食べるなのです」

「カニよりも安いんだな」

「トドは一頭がとても大きいなのです。だから、とってもたくさん取れるなのです」

「なるほどな。だから安いのか」

克己はブローニャを見る。

「なのです」

脂八割、赤身肉二割という割合のトドの脂身は野性味に溢れていてこってりとしている。

好まれるような味ではないことは確かだ。

しかし、高いアルコール度数を誇るウオッカを合わせた瞬間、口の中で突如として革命が起きる。

野性味溢れるこってりとした脂をアルコールが洗い流し、隠されていた本来の甘味と旨味を露わにする。

この二日酔い確定の組み合わせが極寒地帯の男たちを熱狂させる。

「飲み過ぎちゃうよ」

克己は幸せそうにジールナイェ・ミャーサをウオッカで流し込む。


ウオッカを飲んで酷く酔った結城 克己とマリアはブローニャに引っ張られて領主邸に戻った。

ブローニャは助けを求めるべくトリーナの部屋をノックした。

「はい」

ドアを開けたトリーナは部屋から顔を出した。

「セルグニーナ子爵閣下。・・・と、ユウキ様」

トリーナは困り顔のブローニャと床に転がった克己を見る。

「どうした?」

マデリンがトリーナの肩から顔を覗かせる。

「ごめんなさい。飲ませすぎてしまったなのです・・・」

ブローニャはトリーナに助けを求める。

「後は任せてください」

トリーナはブローニャを見て笑む。

「ありがとうございますなのです」

ブローニャはトリーナに深々と頭を下げるとマリアを引っ張って去っていった。

「へっへっへ・・・どうしてやろうか」

マデリンは克己を見て不敵な笑みを浮かべる。

「姫様は部屋で大人しくしていてください。すぐに戻りますので」

トリーナは克己を背負って克己の部屋に行った。

「・・・」

克己をベッドに寝かせたトリーナは部屋から出ようとするも足を止めた。

(大丈夫でしょうか・・・)

トリーナは心配そうに克己を見ながらベッドに座った。


「ねぇ、かつ。そろそろ外に行ってみない?私、付き合うからさ」

「・・・」

「ねぇ、かつ。きっとさ、良いお兄さんだったって思ってくれてるよ」

結城 克己が見たどこか淡く切ないこの夢は、大切な子と別れた数年後に見た光景だった。


「・・・寒い・・・」

克己は震えながら目を覚ます。

「・・・えぇ?」

克己は隣で布団をかぶって眠るトリーナを見て驚く。

「あぁ・・・寝てしまいました・・・」

目を覚ましたトリーナは寝ぼけまなこで克己を見る。

「布団とるなよ・・・」

克己は起きようとするも頭を押さえて呻く。

「どうしました!?」

トリーナは動揺しながら体を起こす。

「二日酔い・・・」

克己は凍ったマグロのようにコテンッとベッドに突っ伏した。

「あらら・・・」

トリーナは安堵と心配が混じった目で克己を見る。

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