Ch.38 アブナイ北の大地 その二
数時間後、結城 克己とブローニャを乗せた王宮馬車と教会騎士団の馬車からなる列が王宮を出た。
「セルグニーナ・セーヴェルナヤか~・・・一度は行ってみたかったのだ」
ブローニャはバカンス気分でついてきたマデリンを見て膨れている。
「なんで王女が来ているなのです?」
ブローニャは克己に耳打ちをする。
「上手く言い訳できなかった・・・」
克己は悟りを開いたような顔でブローニャを見る。
馬車の列は都を出て北へ向かう。
何日も休憩を挟み、三ヶ月ほどかけて溶けかけた雪が積もる北の大地周辺まで移動した。
馬車が止まるとブローニャが馬車から降りた。
「何かトラブルか?」
マデリンはブローニャを見て首を傾げる。
「王都の馬車が入れるのはここまでなのです。ちょっとした寒冷地に住む程度の生き物では途中で凍死してしまうなのです」
ブローニャはマデリンに手を差し出した。
「いらない。ユウキ、手を貸して」
マデリンは克己に手を差し出した。
「貸さないぞ」
克己は馬車から降りる。
「・・・」
マデリンが頬を膨らませる中、トリーナがマデリンの手を握って馬車から降ろした。
「ここからは歩きか?」
克己は真っ白な世界を見る。
「それは流石に無茶なのです・・・」
ブローニャは困ったように克己を見る。
その時、馬が小さく見えるほど巨大な狼が大きなソリを曳いて来た。
「これが北の大地の乗り物か?すごいな」
克己は巨大な狼、ボリショイ・ハスキーを見て驚く。
「はいなのです。この子たちが居ないと北の大地は進めないなのです」
ブローニャの簡単な解説に克己は感嘆の声を漏らす。
「ここからは・・・これを!」
ブローニャは分厚い服ともこもこの帽子を克己たちに差し出した。
結城 克己とブローニャを乗せた大きなソリを曳くボリショイ・ハスキーが十メートル近く雪が積もった雪道を進んでいく。
「・・・」
ペンギンのような姿になるまで厚着した克己は少し不服そうに吹雪を見つめる。
「おひげが生えたペンギンも可愛いと思うなのです」
ブローニャは克己を見てそう言うと、同じくペンギンのような姿になるまで厚着したマデリンが噴き出すように笑った。
結城 克己とブローニャを乗せた大きなソリは何十日もかけて南部、中部と一気に駆け抜け、北部にある巨大な煙突がシンボルの町、ゴーラト・ディマホードフへ入った。
シンボルである巨大な煙突はごみの処理から炭の生産、金属の加工に至るまで様々な用途で使用されている。
「すげぇ・・・こんなスチームパンクな場所がこの世界にあったんだ」
克己はゴーラト・ディマホードフを見てキラキラと目を輝かせる。
「ここでは」
マリアは克己を見る。
「ここでは色々な武器が作られているなのです!」
ブローニャはマリアを押しのけて話す。
「そのうち、魔法にも負けないすごい武器が完成するなのです!」
ブローニャはドヤッと胸を張って自慢げに語る。
「教会騎士が身につけている鋼鉄の剣もここで鍛造されたものなんですよ?」
マリアは克己を見て笑む。
「もしかして、キーリーが言ってた鍛冶師が集まる町って・・・」
克己はトリーナを見る。
「間違いなくここなのです!!」
ブローニャは克己の前でぴょんぴょん飛び跳ねてアピールする。
「マジか!」
克己はブローニャを見て目を輝かせる。
「なんかもう行けないだろうなって勝手に思ってたけど、案外あっさり来れちゃったな」
克己はゴーラト・ディマホードフを見て嬉しそうに笑った。
「早く宿へ行くぞ。疲れた」
興味なさそうに話を聞いていたマデリンはトリーナの袖を引っ張る。




