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Ch.36 港とスイレン その六

数日後、港町の医療所で結城 克己は目を覚ました。

「・・・片目と片足だけで済んだか」

克己は右目に巻かれた包帯と足に触れる。

「動揺・・・しないんですね」

トリーナは悲しそうに克己を見る。

「今のところ、痛くないしな」

克己はゆっくりと起き上がる。

「まだ動いては・・・」

トリーナは簡易的な義足を付けた克己を支える。

「何人死んだ?」

克己は支えられながら歩みを進める。

「少なくとも・・・五十人は・・・」

「・・・・・・そうか」

克己はトリーナと共に部屋を出た。


「男爵閣下!よくぞお目覚めで!!」

マクスウェルは克己に駆け寄った。

「・・・賑わっていますね・・・」

克己は都並みに活気付いた港町を見て驚く。

「男爵閣下が討伐したクジラとクラーケンを一目見ようと人が集まりまして」

トリーナはそう答えた。

「倒したのは俺じゃない。みんなで倒したんだ」

克己は静かに仲間たちを思い出しながらトリーナを見つめる。

「おいおい、隊長!また起きちゃいけねぇぜ」

「今はゆっくり休んでろよ」

「じゃあ、料理運んでおくからな!」

魚介料理を持った漁師たちは克己を見て笑むと医療所に入っていった。

部屋に戻った結城 克己は上裸になって鏡を見る。

鏡に映ったその姿には痛々しい傷が刻まれている。

傷を見た結城 克己はトリーナに支えられながらベッドに入った。

「・・・」

克己は黙って天井を見つめる。

「ユウキ様。あの帆船、牽引されて港まで戻って来たんですよ。今は修繕工事が行われているんだとか」

トリーナは克己を見る。

「・・・」

「傷が癒えたら一緒に見に行きませんか?」

「・・・そうですね」

克己は瞼を閉じて深く息を吸う。

「魔法が使えない身でありながらよく頑張ったと思います」

「・・・ありがとう」

克己はトリーナを見た。

「・・・」

トリーナは克己のベッドに入る。

「と、トリーナさん!?」

克己はトリーナを見て焦る。

「今日は・・・そばに居させてください」

トリーナは克己を抱きしめる。

「・・・」

克己は黙って天井を見つめた。


一ヶ月後、活気づく漁港に結城 克己の姿があった。

激戦の傷を残すためにあえて違う木材で修繕されたあの帆船が記念船として浮かび、船内には当時の戦いを再現するように木製の船員たちが設置されている。

「似合うかな・・・?」

克己は整えられた髭に触れる。

「威厳が出ていい感じですよ」

トリーナは克己を見て笑む。

「おぉ!ユウキ!良いではないか!!」

マデリンは克己を見て目を輝かせる。

「姫・・・陛下まで」

克己は王とマデリンを見る。

「今日、この町に新たなシンボルができる。そのお披露目式典だ」

王は克己を見て笑む。

「そうですか」

克己は王を見て笑む。

「ユウキ!一緒に魚介を食べに行こう!」

マデリンは克己を引っ張る。

「姫様は式典に行かねばなりません」

姫専属従者副長はマデリンを見る。

「えぇ~!?」

マデリンは不服そうに姫専属従者副長を見る。

「では、また王宮で」

王は克己とトリーナを見て笑む。

「はい」

克己とトリーナは王を見て笑みながら返事をした。

「・・・」

マデリンを押す姫専属従者副長はトリーナを見て静かに笑んだ。

「ユウキ様、私と一緒に町を歩きませんか?」

トリーナは克己を見て微笑んだ。

「良いですよ」

克己はトリーナを見て笑んだ。

「さぁ」

トリーナは克己の手を握って歩き始める。

(これ・・・どこかで・・・)

克己は貝の串焼きを食べるトリーナを見つめる。

「ユウキ様、一口どうぞ」

トリーナは微笑みながら克己に貝の串焼きを差し出した。

「いいんですか?いただきます」

克己はそう言うと貝の串焼きを食べた。

「美味い!」

克己は目を輝かせる。

「じゃあ、トリーナさん。マグロの串焼きどうぞ」

克己は微笑みながらトリーナにマグロの串焼きを差し出した。

「で、では・・・」

トリーナは少し恥ずかしそうに言うと、マグロの串焼きを食べた。

「美味しいです」

トリーナは克己を見て微笑んだ。

「・・・」

克己は何もない串を見つめる。

「ユウキ様、次は何を食べますか?」

トリーナは克己を見て笑む。

「・・・」

結城 克己は過去を思い出す。


「あー!!全部食いやがった!」

「良いじゃん」

「俺、まだちょっとしか食ってなかったんだぞ?」

「ほら、次はあれ食べようよ!」

「しょうがねぇ人だな・・・」

「かつ」

その気配を思い出す度、結城 克己は寂しさに包まれる。

結城 克己は、まだまだ孤独なのかもしれない。

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