Ch.33 港とスイレン その三
翌朝、結城 克己とシスタートリーナは役場に入った。
状況は日に日に悪化していて今日は既に七人が運び込まれたとのこと。
「三半規管の異常だろう。何度か見たことがある」
克己は酒で酔ったように歩く漁師を見つめる。
「治るのでしょうか」
マクスウェルは克己に問う。
「・・・」
克己は黙って首を横に振った。
「町長。昨日役場からトリヴァーズ別邸に向かう時、岩場に上半身が人、下半身が魚の生物を見た」
克己はマクスウェルに報告する。
「それは人魚です。間違いない」
マクスウェルは神妙な面持ちで答えた。
「人魚は人に対して攻撃的です。その声は鈴の音のようで美しいとされていますが、人に対して向ける声はそれは恐ろしいものであるとか・・・」
マクスウェルは漁師たちを見る。
「人魚が原因か・・・!!」
漁師たちは怒りで震える。
「待て。何事もすぐ決めつけるべきじゃない」
克己の一声で漁師たちは怒りを抑えた。
「シスタートリーナ、人魚が知られるようになったのは何年前ですか?」
克己はトリーナを見る。
「今から約六千三百年前です。そこから百年ほど狩猟され、人前に姿を見せなくなったそうです」
トリーナはそう答える。
(人前に姿を見せなくなった生き物が人が住む町に接近した・・・夜とは言え、流石にあそこまで接近するだろうか・・・)
克己は少し考え、一つの答えを出した。
「・・・沖に何らかの生き物が現れたかもしれない」
「何らかの生き物ってなんだよ・・・」
漁師たちは呆れと困りが混じった視線で克己を見て頭を掻く。
「これから詳しく調査しようと思う。人と武器、それから、耳を塞げるものがほしい」
克己はみんなを見る。
「人なら俺が集めてくる!」
「じゃあ、俺は武器を用意しよう」
「耳を塞ぐなら蜜蝋だな。すぐに用意するぜ」
漁師たちは力強く笑みながら克己にそう話す。
「よし、任せた!!」
克己の掛け声で屈強な海の男たちが動き出した。
港には超がつくほど屈強な男たちが集まり、巨大な帆船に町中の武器を運び込む。
「トリーナさん、王宮に伝言を頼みます」
克己は男爵のマントを身に纏う。
「ユウキ様、今回の調査・・・嫌な予感がします。私も同行させてください」
トリーナはクロスボウの点検を行う克己を見る。
「嫌な予感がするのならなおさら頼む」
克己はそう言うとクロスボウを担いだ。
「・・・」
トリーナは克己を見て黙る。
「任せましたよ」
克己は帆船に向かう。
「・・・」
トリーナは帆船に向かう克己にお辞儀をすると、鎧などの装備を置き、剣一本背負って馬で駆けていった。
巨大な帆船が錨を上げて帆を広げる。
結城 克己たちは蜜蝋で耳を塞いで沖へと出る。




