Ch.13 アブナイ集落 その二
結城 克己は椅子に座って農具の手入れをする土塗れの女性を見ると勢いよく起き上がった。
「それ!それ!」
結城 克己は土塗れの女性に駆け寄った。
「な、なに!?」
土塗れの女性は驚いたまま結城 克己を見つめる。
「それ、砥石!?」
結城 克己は土塗れの女性の手に握られた砥石を見つめる。
「うん、そうだけど・・・」
(近い・・・)
土塗れの女性は結城 克己の横顔を見て顔を赤くする。
「マジか!!あったのか!」
結城 克己は砥石を見てはしゃぐ。
「いや、そりゃ・・・あるでしょ・・・」
土塗れの女性は困ったように言葉を紡ぐ。
「ということは、鍛冶をする人が集まる場所もあったりするんじゃないか!?」
結城 克己は土塗れの女性を見て目を輝かせる。
「こういうのがあるのになんでないと思うのさ・・・」
土塗れの女性は農具を見せる。
「王都にはなかったんだよ・・・!」
結城 克己は綺麗に手入れされた農具をじっくりと見つめる。
「何か欲しいものでもあるの?」
土塗れの女性は、少し恥ずかしそうに農具を結城 克己から遠ざける。
「特別欲しいものがあるわけじゃないけど・・・俺、魔法使えないからさ。武器とかあった方が安心かなって」
結城 克己は土塗れの女性に笑む。
「魔法使えないの!?」
土塗れの女性は驚愕する。
「使えない」
「えぇ~・・・都の人だからすごい魔法使えると思ったのに・・・」
土塗れの女性はしょんぼりする。
「そう落ち込まないでくれよ。力仕事ならできるからさ」
「・・・」
土塗れの女性は黙って結城 克己を見つめる。
「そうだ。君の名前聞いてなかった」
結城 克己はキーリーに訊ねる。
「私?キーリーよ。あんたと同じ二十五歳」
土塗れの女性、キーリーは自己紹介した。
「キーリーか。よろしく」
「うん、まぁ・・・よろしく」
夕方になるとベッドで休んでいた結城 克己が起き上がった。
「ここって風呂ないの?」
結城 克己はキーリーに訊ねる。
「ないよ」
キーリーは短くそう答えた。
「じゃあ、普段どうやって体を洗ってるんだ?」
「布を水に浸して擦る・・・かな」
「どこかに水源があるのか?」
「うん。近くに川がある。でも、流れが急だから入らないようにね」
「ちょっと川まで案内してくれないか?」
「まぁ・・・わかった」
「日が長くなってきたな」
桶がかかった天秤棒を担いだ結城 克己は太陽を見つめる。
「日が長くなってきたって?」
キーリーは結城 克己を見る。
「太陽が沈むまでの時間が長くなったよねってことだよ」
「あー。そうだね」
キーリーは太陽を見る。
「これから夏が来るな」
結城 克己は太陽を見ながら笑んだ。
「そう言えば、ここの夏って暑くなるのか?」
結城 克己はキーリーに訊ねる。
「うん、結構暑くなるよ。都の人が経験したら倒れちゃうかも」
キーリーは結城 克己を見て不敵な笑みを浮かべた。
「そんなに暑くなるのか・・・気を付けないとな」
結城 克己は真剣な表情でそう呟いた。




