20 子犬が生まれた!
チビのお腹は毎日どんどん大きくなっていく。
現実の犬の妊娠期間は知らないが、たぶんゲーム仕様で普通より早く産まれそうな気がする。
俺はもちろん、他のわんこたちも毎日の作業をいつも通りこなしつつ、どこかそわそわとした落ち着かない雰囲気を漂わせている。
夕方になって犬の姿に戻ってからの自由時間も、以前のように外で元気に駆け回るわんこは少なくなり、多くの仲間が家の中でおとなしくテレビを見たりしながら、それとなくチビの様子を気にしていた。
そんな緊張と期待の混ざった日々が10日ほど経った、ある日の夕方のことだ。
日中の作業を終えて家に帰ると、リビングの犬ベッドの前に、チビと……小さな5匹の子犬たちの姿があった!
「うわ、生まれた……!」
子犬たちは生まれたばかりのはずなのに、すでにしっかり目が開いていて、よたよたと覚束ない足取りでチビの周りを歩き回っている。
相変わらず極端なゲーム仕様だが、とにかく無事に生まれたことに心底ホッとした。
子犬としてもかなり小柄な方で、5匹とも見事に垂れ耳で胴長短足ぎみの姿をしている。
チワワとミニチュアダックスフンドのミックス、いわゆる「チワックス」だろう。
俺は近くにいたダックを咄嗟に抱き上げると、思わず大声を上げていた。
「お前かーっ! お前が父親だったのかーっ!?」
急に捕まえられたダックは「ワン?」ときょとんとした顔をしている。
まるで娘を嫁に出す父親のような気持ちでつい感情的になってしまったが、冷静になればチビとダックはこの農園の初期からずっと俺を支えて一緒に頑張ってくれた仲間であり、一番仲が良かった2人だ。
ここは素直に祝福するべきだろう。
「……ごめんごめん、怒って悪かったよ」
苦笑しながらダックを床に下ろしてやると、ダックはトコトコとチビと子犬たちの元へ歩み寄っていった。
チビもダックも、子犬たちに囲まれながらとても睦まじそうに寄り添い合っている。
いかにも幸せそうな家族といったその様子にほっこりしつつも、ちょっとだけ2人がうらやましかった。
その日の夜は、わんこたちみんなで豪華な料理を囲み、盛大な出産お祝いパーティーを開いた。
仲間たちの楽しそうな歓声と、生まれたての子犬たちの愛らしい声が賑やかに響き渡る。
幸せで温かいお祝い気分のまま、夜になりベッドへ向かう。
人数が増えたことでダブルサイズに新調した俺のベッドだが、なぜか大型犬たちが乗りたがる傾向があった。
今夜も例に漏れず、数人の大型のわんこたちにベッドを占領され、彼らのもふもふとした体に挟まれるようにして横になる。
「農園もずいぶん立派になって、仲間のわんこたちもたくさん増えて、子犬たちまで生まれて……。
毎日楽しいし、ご飯も美味しい。
このゲームの世界に転生できて、本当に良かったなあ……」
幸せな温もりに包まれながら、俺はしみじみと自分の今の境遇に感謝した。
「まあ、欲を言えば、これで魚が食べられたら、本当に言うことはないんだけどな」
肉や穀物、卵は手に入るようになったが、この農園には川や海といった水辺がないため、魚を獲ることができない。
それだけが唯一の小さな不満だった。
とはいえ、今の生活にはおおむね満足している。
俺はいつものようにベッドの大型犬たちのぬくもりを感じながら、ゆっくりと眠りへと落ちていった。
──────
ポチや他のわんこたちがみな眠りについている、静まり返った深夜のこと。
突然、ベッド脇のサイドテーブルに置かれたスマホの画面がパッと明るく点灯した。
そして操作もしていないのに、画面が勝手に動き始める。
〜大型バージョンアップ、およびゲーム名称変更のお知らせ〜
そう画面に表示された後すぐに、自動的にデータのダウンロードとアップデートが開始される。
しばらくして更新が完了すると、画面が切り替わり、ゲームのタイトルロゴが新たなデザインへと書き換わった。
「どうぶつ開拓記 〜わんこ農園にようこそ2〜」
──第一部完──
というわけで、「俺たちの農園生活はこれからだ!」エンドで一旦第一部完結とし、閑話を挟んでから、不定期で第二部を続けます。第二部は時間を巻き戻して、「18 炭水化物とゴムボール」の後からになります。
なお、閑話はこのゲーム世界とは別の世界、別キャラの話で、設定裏話的なやつです。
読まなくても支障はないので、苦手な方は飛ばしてください。




