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わんこ農園にようこそ! 〜スマホゲーム世界に転生した俺の愉快な日々〜  作者: 鳴神楓
第1章 わんこ農園にようこそ!

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17/23

17 オブジェ

「コケコッコー」


 窓の外からニワトリの鳴き声が聞こえて目が覚めた。

 ああ、ニワトリ小屋のニワトリが鳴いているんだなと思うのと同時に、体が勝手に動いてベッドから起き上がったので、そういえば昨日も同じようにニワトリの声からゲームシステムで体が勝手に動く朝のルーティーンが始まっていたことを思い出す。

 昨日はまだニワトリ小屋はなかったし、確かコケコッコーと鳴くのはオスのニワトリだけだったと思うので、あれは単なるゲームのSEってことだろう。


 そんなことを考えているうちにも体は勝手に動いていて、キッチンカウンターの椅子に座って「いただきます」と手を合わせる。

 トーストや目玉焼きといった、昨日とまったく同じメニューの朝食を食べながら隣を見ると、チビとダックも並んで席に座って朝食を食べていた。


「おはよう、2人とも」

「はい、おはようございます、ポチさん!」

「おう、おはよう」


 チビとダックがそれぞれ返事をする。


「そういえばチビは昨日、朝ご飯の時間に今日の予定を打ち合わせしておくといいって言ってたっけ」

「はい、そうですね」

「じゃあ打ち合わせ……と言ってもやることは昨日と変わらないしなあ。

 あ、でも今日また追加要素来るかもしれないな。

 次に何か来るなら畑かな?

 さすがに米と卵しかないのに生産施設が増えるってこともないだろうし、たぶん農作物がくるだろ」


 まあ、この予想には俺の希望も含まれている。

 炭水化物の米、タンパク質の卵と来たから、そろそろビタミンが取れる野菜が欲しい。

 キャベツとかトマトとかベタなやつが来ないかと期待している。


「そうすると、俺が掲示板と畑をやった方がいいな。

 チビとダックで、ニワトリ小屋とおにぎり屋を分担してくれ。

 作るのは例によって卵と塩むすびで」

「わかりました、ぼくがニワトリ小屋に行きますね!」

「おう、じゃあオレがおにぎり屋か。任せとけ」


 2人が了解したところで、ちょうど全員が食べ終え、「ごちそうさま」と手を合わせて席を立つ。


「そういえば、2人とも仕事以外で何か希望はないか?

 夕ご飯で食べたいものとか、見たいテレビとか」


 家を出るまでのわずかな隙に尋ねてみると、ダックが少し照れくさそうに口を開いた。


「なあ、夕方の自由時間に遊ぶものが欲しいんだけど……」

「遊ぶもの?」

「ああ。スマホのショップ画面にある『オブジェ』の項目から、何か買えないか?」


 ダックの言葉に俺はなるほどと頷く。

 昨日、ダックとチビは何もない原っぱで思う存分駆け回ったようだが、ドッグランにあるようなトンネルとか小さな山とかあった方が楽しめるかもしれない。


「よし、じゃあラジオ体操が終わったら、みんなで買えるものを確認してみよう」


 家の外に出ると、今日もいい天気だった。

 畑に向かって気をつけの姿勢で待っていると、どこからともなくラジオ体操のメロディが流れてくる。

 やはり順番はあまり覚えていなかったが、ゲームシステムのおかげで体は勝手に動く。

 自動修正される動きに身を任せながら、3人でラジオ体操をこなした。


 体操が終わって体が自由になった瞬間、俺はスマホを取り出してショップの画面を開いた。

 言われた通り「オブジェ」のタブをタップしてみると、様々な庭飾りのアイコンがずらりと並んでいる。


「おー、いろいろあるな……。

 でも、みんな結構高いな……」


 噴水や銅像みたいな大きい飾りや、すべり台やブランコのような人間用の遊具、それに俺が想像していたようなドッグランにありそうな犬向けの遊具もあるが、どれもそれなりにいい値段がする。

 せっかくのダックの希望だから買ってやりたいが、また新しい施設や仲間のわんこの引っ越し代でコインが必要だろうから、使いすぎるのも良くない。


「ポチさん、高いのなら今無理をしなくても、また今度でも……」


 チビが心配そうにそう言った時、ちょうど良さそうなものを見つけた。


「あ、これはどうだ? この赤いボール。

 これならそんなに高くないし」

「お、ボールか、いいな。

 それ買ってくれたらうれしい。

 チビはどうだ?」

「そうですね、ボールは僕も好きです。

 ポチさんがそれで良ければお願いします」

「よし、じゃあ買うぞ」


 購入ボタンをタップすると、スマホの画面から淡い光が放たれ、俺たちの足元の原っぱに、ポロンと赤いゴムボールが出現した。

 大きさは握りこぶしくらいといえばいいのか。

 子ども相手のキャッチボールに使うような小さいやつだ。


「……これ、オブジェか?」


 スマホの画面では大きさはわからなかったが、想像していたよりかなり小さい。

 他の大きそうなオブジェとの値段の差を考えると妥当な大きさかもしれないけど、ただのゴムボールがオブジェ枠に分類されていることにちょっと納得がいかない。

 けれど、チビとダックはそのボールを見て嬉しそうに尻尾を振っているから、まあこれでも良かったのだろう。

 考えようによっては、このボールなら俺も一緒に犬の姿の2人と遊べるから、ちょうどいいかもしれない。


「よし、それじゃあ夕方3人であれで遊ぶのを楽しみにしつつ、日中はしっかり働こうな」


 俺がそう言うと、2人は元気よく返事をして、それぞれの仕事場へと向かっていった。



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