表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【100話達成ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど魔王の遺した無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
2-3章 龍界地底砲塔マナタン:獣冠祭編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/105

93話 閉幕!

Q.最後主人公がゴールラインに行くあたり、よく誰も抜け駆けしなかったよね


A.そんな欲深いやつは序盤魔石に集まってるので、魔石に潰されてるかオルゼが連れてきたゾンビに食べられました

 ――ドン、ドン、ドンッ!!


 腹の底に響く太鼓の音が、帝都全体を揺らしていた。


「おらぁ!!道あけろォ!!」

「主役様のお通りだぁぁあああ!!」


 通りは人で埋め尽くされている。

 旗が振られ、紙吹雪が舞い、屋台の煙と歓声が混ざり合う。


 獣冠祭の閉幕から一夜。

 帝都は今、かつてない熱狂に包まれていた。


「優勝者ぁぁあああッ!!」

「ミィィィィィィクッ!!」

「ミークちゃーーーん!!」


 その中心。


「あぅ……」


 担ぎ上げられているのは――ミークだった。


「……っ」


 肩車のように持ち上げられ、逃げ場はない。

 四方八方から視線と声が飛んでくる。


「こっち向いてくれー!!」

「サインくれぇぇ!!」


「ぐ...ぐぅぅぅぅ……!」


 顔は真っ赤、額からは汗がだらだらと流れている。

 視線を合わせることすらできず、きょろきょろと落ち着かない。

 まるで捕まった小動物だった。


「事故とはいえざまぁみろ」

「事故とはいえざまぁないわね」


 アイザックとシオンは遠くからそれを見下ろしていた。


「結局みんな結果を受け入れちゃうのね」


 その光景を肴に果実水を嗜む男女、アイザックとシオン。


「そうみたい、寝て覚めたら俺完全に蚊帳の外だもん」


「優勝惜しかったね」


「いやいいよ、気絶した俺が悪かった...んまぁでも目的は果たせたんだからいいじゃねぇか」


「...」


 シオン達の拠点にいる仲間達を難民として受け入れる、それが当初の目的。

 必要な40億BPは稼ぎ切り、既に渡航手続きを進めている。

 しかしシオンは口籠った、何かを言いたそうに。


「よくないよ...」


「シオン?」


「界帝様への願いは「参加者全員の疫病の治療」、そうは言ってたけど...それじゃあ貴方の願いは...」


「...」


 アイザックの願い、それは元の世界に帰るための道筋。

 「シャクシ島への渡航」だった。

 その島にアイザックが元の世界に帰るための手がかりが得られる、そのためにマナタン帝国まで渡って来たのだ。


 しかしその手立ては完全に失われた、アイザックはもう帰ることはできない。


「いや、帰れないって決まったわけじゃねぇよ」


「え?」


「確かにシャクシ島はマナタン帝国からの橋渡しがないと行けない、でもそれだけが行く方法とは限らねぇだろ」


「つまり?」


「イカダでも作るか」


「ぶはっ!...アンタってそういうとこあるわよね」


 シオンは曇った表情から打って変わり、笑顔になった。


「ねぇ、アイザック...」


「ん?」


「ここ、いいところだよね」


 空気が変わる、ここは竜骨が見下ろす帝都全体を写している、冷たい風が肌を撫で、澄んだ空気に満ちている。


「...カルが教えてくれたんだ」


「そうでしょうね...」


「あぁ...」


「ねぇ...アイザック」


「ん?」


「アイザックってさ...どうして元の世界に戻りたいの?」


「...」


 アイザックは、すぐには答えなかった。

 遠くで、祭りの歓声が揺れている。


 高台を撫でる風が二人の間を通り過ぎていく。


「...」


「...」




「俺さ、この世界でもいいかなって思ってる」




「え?」


 それは意外な答えだった。


「最初は早く帰りたい、って思ってたけど...」


 アイザックの脳裏に蘇る苦しい記憶、いままで苦しいことも辛い事も多くあった。

 だがその経験が、冒険が、アイザックを強くしていったのだ。

 

「実は今はもうそんな風には思ってないんだよ、俺の世界って結構息苦しくてさ、だから可能ならこの世界に留まろうっておもってる」


「じ、じゃあどうして」


 アイザックは続けた。


「でも、俺も向こうじゃ友達もいるし親もいる、多分みんな俺がいなくなって心配してると思うんだ」


「...」





「だから一旦戻って...「()()()()()()()()()()()()()()()()」って一言言って安心させてやりたいんだよ」





「...そっか」


 シオンは小さく頷いた。

 その横顔は、どこか少しだけ寂しそうだった。


「優しいね、アイザックは」


「そんなことねぇよ、その為にミークにもシオンにも、これから迷惑かけるからよろしくな」


「...仕方ないわね」


 だが、ミークはともかく...シオンにその必要はない。

 シオンの目的は達成した、アイザックについて行く必要などないのだ。


「...」


 風が吹く。

 遠くの歓声が、少しだけ大きくなる。


「……ねぇ」


「ん?」


「イカダ作るって言ってたけど、資材とか...色々どうすんのよ」


「そこはまぁ……また競技場でなんとかするしかねぇな」


「設計は?航路は?食料は?」


「ぐ...うぐぐぐぐぐ...」


 唸るアイザック、シオンは呆れたようにため息をつく。

 でも――その顔は、どこか楽しそうだった。


「……ほんと、無茶ばっかり」


 そして、少しだけ視線を逸らして――

 一歩、アイザックの隣に立つ。



挿絵(By みてみん)




「全部、私が見てあげるわよ」


「……は?」


「資材も、設計も、航路も、食料も」


 淡々と、当たり前みたいに言う。


「アンタ一人じゃどうせ無理なんだから」


「いや、ちょっと待て」


「なによ」


「それってつまり――」


 アイザックが言いかける。

 でもシオンは、それを遮った。


「……放っておけないだけよ、本当はもうアイザックに付き合う必要はないんだけど、仕方なく、よ」


 それだけ言って、前を見る。

 帝都の景色が広がっている。

 祭りの音が、ずっと遠くで鳴り続けている。


「……そっか」


 アイザックは、少しだけ笑った。


 ....


 ...


「ツンデレ、というやつだアイザック」


「ッ!!」


 声。


 2人は一歩引き、その方向へ構えた。


「ごきげんよう、お二人さん」


「ダイ...」

「コー...ッ!?」


 ダイコー=オーディン、帝国最強。

 しかし、今宵の彼女は軍服ではなく漆黒のドレスを見に纏っていた。


「なん...なんだそれ!?」


「なんだ、私とてレディだぞ?祭りであればそれ相応の装いはするさ」


「え、で、でも...」


 それだけではない、彼女の荒く長い髪はサラサラに整えられていたのだ。


「一瞬だれかわからなかったぞ...」


「そうか、どうだ綺麗か!!」


「あぁ綺麗だ」


「ッ!」


 即答だった、ダイコーは逆に面食らったような表情を見せる。


「いや、まぁいい」


そしてダイコーは切り替えたように口を開く。


「シオン嬢、先はありがとう、おかげで助かったよ」


「ああ、いえ、どうも...ダイコーさんもすごい戦いでした」


「ありがとう、ところで...すまないが、2人にしてくれるかな?」


「は?」


 それは唐突だった。


「何、とって食おうだなんて思っていない...まぁ、彼がその気なら私は」


「アイザックッ!!」


 ーーースパァァァンッッ!!


「ぎゃっ!?」


 シオンの蹴りが炸裂、アイザックは軽く悲鳴をあげる。


「ははは!冗談だ、私も年下に興味はない」


「ふん、どうだか」


 そういうとシオンは渋々近くの階段を降りていった。


「...」


「...」


 流れる静寂、先程の甘い空気とはうってかわって緊張が走る。

 冷たい風がさらに冷たく感じる頃、状況に耐えきれずアイザックは口を開いた。


「えっと...あの...なんです?」


「アイザック.....ありがとう」


「?」


 突然の感謝の言葉、アイザックはきょとんとする。


「え、なんで?」


「オルゼ=スティングレイ、あいつは身内...ツミレの仇だ、私がついぞ届かなかったあいつを。私の代わりに倒してくれた、だから感謝してる」


「...そうか」


「私の時間はずっと止まっていた、奴への...『獣』への憎悪は今も、そしてこれからも変わりはしないが、それでもやっと前に進めるような気がする」


「...なら、よかった!」


「アイザック」


「ん?」



「................祖国ノルゲ.....()()()()()は健在か?」




「ッッ!?...そうか...!!」


 ダイコーの正体、故郷を知ったアイザックの目は輝いた。

 

 花火が打ち上がる背景を背に、アイザックとダイコーはお互いの故郷について談笑していた。


 ...


 ..


 上では、アイザックとダイコーが何か話している。


 声は届く。

 だが――


「……ノル、ウェー……に...ほん?」


 聞き慣れない響き。


「なにそれ……」


 単語だけが聞こえる、けれど意味が繋がらない。

 まるで知らない言語を聞いているみたいだった。


「……なんの話してんのよ、あいつら」


 首を傾げる。

 笑っているようにも見える。


 なんとか会話に混ざりたいが、けれどその会話は自分の知らないどこか遠い場所のものみたいで――


「……ふん」


 不服そうに小さく息を吐いてシオンは階段を降りた。


 ...


 ..


 .


  夜空に、大輪の花が咲いた。


 ――ドォンッ!!


 遅れて、光が帝都を照らす。

 歓声が、再び波のように広がっていく。


「うぉぉぉおおおおおおッ!!」

「ミークッ!!」

「ミークッ!!」

「ミークッ!!」


 人々は叫び、笑い、祝福する。

 誰もがこの結末を、心の底から受け入れていた。


「ゔぇぇぇ、私も美味しい料理食べたかったでずぅぅぅ!!」


 ーーー1人を除いて。


 ミークは担ぎ上げられ続けたせいで祭りのご馳走に何一つありつけなかったようだったが...


 なにはともあれ戦いは終わった。


 祭りは終幕を迎えた。


 その中心にいるのは、一人の少女。

 震えながら、何も言えず、ただ担がれていた少女。


 だが――


 その手は、祝福の盃と夢、そして未来を掴んでいた。


 そのすぐ傍らには、帰る場所を求めて歩む少年と、

 その隣に立つことを選んだ少女がいる。


 向かう先も、まだ定まっていない。


 だが――

 彼らは先がなくても既に歩き始めていた。


 花火が、夜空を裂く。

 歓声が、帝都を揺らす。


 笑い声が、どこまでも続いていく。

 これは終わりではない。


 これは――

 一つの旅の終着にして、新たな旅の幕開けでもあるのだ。






 ーーーーー


 2-3章 龍界地底砲塔マナタン 獣冠祭編 閉幕


 ーーーーー









 そこはある研究部屋、液晶を除く女性が1人。


「すごいわ!すごいわアイザック君!一歩また成長したのね!」


 3つの影を背に、年甲斐もなくはしゃぐ姿は異様。


「そうだ!アイザック君も多分ここに来るわよね!準備しなくちゃ!」


 そう言うと食器棚から必要なものを担いで走り出す。


「さぁさぁさぁ子供達!準備をして!パーティの準備よ!」


「「「ーーー!」」」


 高い声で返事をする子供達。

 庭に置かれた食卓に次々と皿を用意する。


「私たちの実験をみたら、アイザック君たちも驚くわ!なにせーーー」


 エウロペは、自分を見下ろす竜骨をただ見上げて呟いた。


()()()()()()()()()()()()()!!」


 その夜。


 帝都の喧騒の裏側で――


 決して目覚めてはならないものが、

 静かに、その時を待っていた。



次回投稿は4/19 7:10!!


次回、2章最終、2-4章開幕!!

エウロペとの決戦です!


皆様たくさん読んでいただいてありがとうございます〜!!


高評価、ブックマークを押していただければ作者のモチベーションに繋がります!!

よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ