92話 決着、獣冠祭!
Q.アイザックはカルヴァトスが死んだこと知らないの?
A.知りません
ちなみにちょうど半年経ちました!
半年で13000pv!ポイントやブクマもたくさんいただきありがとうございます!!
これからも頑張りますのでよろしくお願いします!
――ドォォォォンッ!!
床が揺れた。
「っ!?」
一瞬遅れて、スクリーンが暗転する。
――ブツン。
「……は?」
映像が消えた。
さっきまで映っていた戦場は、もうどこにもない。
映像の先になにがあるのかもわからない、完全に情報が遮断された。
「おい、今の何だ!?」
「中継は!? 戻せ!」
声が飛ぶが、返答はない。
ここからは何も見えない。
さっきの衝撃だけが、妙に重く残っていた。
「おいおいどうなったんだよ!!」
「オルゼは!?アイザックは!?」
「いいところだったのに!!」
分からない、何が起きたのかも、
誰がどうなったのかも。
「...」
「終わりましたね」
しかし、結末を感じ取った2人がいた。
「界帝様?」
特等席でミカードは眉間をつまんで俯いていた。
「あぁ」
「界帝様、戦っていないのにどうして疲れているのですか?」
「そう見えるかな?」
「えぇ」
「そりゃ帝国の危機を乗り越えたんだ、どっと疲れもするだろう」
「そういうものですか?」
「そういうものさ」
「さぁ、まだ大会は終わっていない、優勝者を迎え入れようじゃないか」
ミカードは立ち上がり、『機構星騎士』に指示を出す、それぞれが持ち場につく。
「さぁ、誰が来るだろうか...満身創痍の中、殺し合いを乗り切って魔石を持ち帰る者は!」
...
..
.
「んで、どうするよ、あの魔石」
「どうしましょう〜」
「正直私もヘトヘト」
アイザック、シオン、ミークは胡座を書いて魔石見上げていた。
「完全に万策尽きたわ...」
「ポーズを決める余力もなぁぁい!!」
「叫ぶな、無駄に体力を使うな」
そして向かい合い、円の形をとるようにシュガー、ガレット、ダイコーが腕を組んでいた。
決着後、アイザックの魔力を使ってミークが治療。
治療されたシュガーが折れた骨をくっつけ応急処置、最低限動ける状態にまで回復した。
「でも...ガレットさん、あんためっちゃ働いてたんだな」
魔石のすぐ近くに他の参加者が山のように積み上がっていた、全員死んではおらず、気を失っているだけだった。
「仕事だ、カーペットを用意しろと言われたのでな」
「でも結局オルゼもどっか行ったし、バンドが足りないんだよな」
「あいつ最後の最後まで嫌がらせしてきたわね」
オルゼ=スティングレイは死んではいなかった。
しかし『星穿』を受けた流れで遥か彼方に吹き飛んでいった。
魔力の探知もできないため探しようがなく、そもそもその体力もない。
「おっけー、とりあえず確認だ、優勝者の願いは「参加者全員のウイルス治療」、みんなそれでいいな?」
アイザックの声に全員が頷いた。
「アイザック、でもいいの?それじゃアンタが...」
元の世界に帰るため、シャクシ島に渡らなけばならない。
アイザックの目的はこの大会に優勝し、その橋渡しをするために参加したようなものだったからだ。
「いやいいよ、人命優先だ」
「そうだけども...」
「他の方法を考えるさ」
「...わかった」
それ以上シオンは何も言わなかった。
「よし、それじゃあこの馬鹿でかい大岩をどうやって持って帰るかに集中できるな」
「おん...ミーク!!」
「はい?」
「魔法でぶっ壊せないのか!」
ダイコーは大声でミークの名前を呼んだ、ミークは声に対し特に驚くような反応は見せず静かに応える。
「試したんですけど、無理ですね、魔法耐性つきです」
「厄介だな!!」
「シオン、物理的に壊すのは?」
「難しいわね」
「そうか...なら...」
アイザックはたちあがり、ぽっと呟いた。
「運んでいくしかねぇか」
それはアイザックの口から出た狂気の発想だった。
...
そして、時間が経過した。
「ーーーzzz」
会場は静けさに包まれていた。
液晶から何も映らなくなってから数十時間、なんの進展もない。
「...暇だね」
「暇ですね」
「液晶は映らないのかい?」
「何が起こってるかわからない戦場にわざわざ中継用の魔道具を再設置しにいけと?」
「そうは言わないけど」
その時だった。
ーーードォォォオオンッッッ......
「!?」
「うぉ!?」
「なんだ!?」
突然鳴り響く轟音、うたた寝していた観客が飛び上がる。
「おや」
「戻ってきたよう...ですね」
ーーードォォォォオオオオオンッッ....
「中継を繋げ!」
「どこに?」
「下層とこの層を繋ぐ入り口だよ、戻ってくるとしたらそこからしかない」
液晶は入り口を中継した。
防衛のための『機構星騎士』が巨大な空洞に向けて身構えている様子が映し出される。
ーーードォォォォオオオオオォォォオオン
「しかし、この轟音はなんだね?」
「さぁ...」
不可解なのは規則的に響き渡る轟音だった。
激しい戦闘がここまで聞こえてきているのかいずれにせよ下層で起こっていることは何一つわからない。
「さぁ、迎えよう!はじめに戻って来る勇者を!!」
会場が湧き上がる、熱狂を次第に取り戻し、全員の視線が液晶に集中する。
ーーードォォォォオオオオォォォオオンッッッ!!!
しかし。
「は」
その光景に映るのは、とても信じられない光景だった。
...
..
.
「ファイトォォォオオーーーッッ!!」
「いっぱぁぁぁぁぁあああつーーーッッ!!」
ーーードォォォォオオオオオンッッ!!!
「押せぇぇぇえええええ!!」
ーーードォォォォオオオオオンッッ!!
「「「おおおおおおおおおおッッ!!」」」
ーーーゴゴゴゴゴゴッッ
「まじか」
アイザック達は、30メートルある巨大な魔石を。
押して持ってきているではないか。
「もういっぱぁぁぁあああああつッッ!!!」
ーーードォォォォオオオオオンッッ!!
アイザックとダイコーは音速のスピードで魔石に激突、数センチほどズレた。
衝撃のダメージはミークの魔法『転送障壁』、ダメージを2回無効化する魔法で軽減。
ミークや魔法使いは全員に強化魔法を施し、シオンを含む生き残った戦士全員で魔石を押して進んでいたのだ。
ちなみに身体は限界を超えているが、それは気合いだ。
「はーーー」
「「「ぉおおおおおおッッ!!」」」
ーーーゴゴゴゴゴゴッッ
「ファイトォォォオオッッ!!」
「いっぱぁぁぁあああああちゅッッ!!」
ーーードォォォォオオオオオンッッ!!!
「なにやってるんだあいつらはーーーはははははッッ!!」
界帝ミカード=グランノアーリは笑うしかなかった。
そう、参加者を全員殺してバンドを集めるというルールーーーというものは存在しない。
魔石を持って帰った者が優勝なのだ、だからアイザック達の行動は何もおかしなところはない。
否、ミカードにとっては彼らの行動こそが「模範解答」だったのだ。
「界帝様?」
側近の声に、ミカードは肩を竦めた。
「……いや、すまない。少し嬉しくてね」
「嬉しい、ですか?」
「ああ」
視線はスクリーンのまま、魔石を押す彼らを見ている。
「殺し合う必要なんてないんだ、血を流さなくても目的は果たせる。そんな当たり前のことをな、誰もやろうとしなかった」
小さく息を吐く。
「勝つために殺す。奪うために壊す。歴代界帝含む過去もずっと、それしか知らない連中ばかりだったからな」
その声音に、ほんのわずかに混じる疲労。
「だが、あいつらは違う」
アイザック達が、また魔石にぶつかる。
――ドォォォォオオオオオンッ!!
「はは……無茶苦茶だ!無茶苦茶、だがッッ!!」
だがその目は、どこか楽しげだった。
「だが、ああいうのがいいッッ!!こんなくだらないやり方を、ぶち壊してくれる奴が」
そしてすぐに、いつもの調子に戻る。
ーーーバシィィィンッッ!!
ミカードは手を叩く。
その豪快な音は会場はおろか、帝都全土に響き渡る。
「準備を急がせろ、優勝者を迎えるんだ」
口元に浮かぶのは、楽しげな笑みだった。
「面白い連中をなぁ!!」
そして...。
ーーーゴゴゴゴゴゴッッ!!
「あ...」
「やった...」
全員が息を呑んだ、坂を超え、たどり着いた。
会場の前に。
「やった...」
誰かがつぶやいた。
「やったぞぉおおおおおおーーーーーッッ!!」
「「「うぉぉおおおおおおおーーーーーーッッ!!!」」」
歓喜の声が上がる、シオンも、ダイコーも、ミークやシュガー、ガレット、その他満身創痍の戦士達。
そしてアイザックまでも。
「しゃああああぁぁぁいい!!全員優勝だぁぁあああああッッ!!」
拳を突き上げ、血塗れの体で勝利を宣言してみせた。
歓声が、少しずつ落ち着いていく。
荒い呼吸だけが残った。
「……はぁ、はぁ……」
その中で、シュガーがゆっくりと顔を上げる。
視線の先には、ガレット=ヘーゼル。
「……ねぇ」
かすれた声。
「なんで、助けに来なかったの、私がエウロペにやられた時」
「...」
「あんた、見てたでしょ」
責めるようでいて、どこか弱い響きだった。
ガレットは少しだけ間を置いてから答える。
「依頼だ」
「……は?」
「お前の親、お前の師範からのな」
シュガーの目がわずかに見開く。
「一度、痛い目を見ろ。全部失って、そこからやり直せ――そう言われている、一線を超えないよう見張っていろともな」
「……っ」
言葉が詰まる。
拳を握るが、力は入らない。
「だから見ていた」
ガレットは淡々と言う。
「死なない程度に、な……まぁ、思ったより無茶はしていたが」
「……ふざけんな」
小さく、吐き捨てる。
だが、その声にさっきまでの棘はない。
「……ほんと、最悪」
「そうだな」
あっさりと肯定する。
一瞬だけ、沈黙。
そして――
「でも」
シュガーは息を吐いた。
「……まだ、終わってないから」
顔を上げる。
「私は必ず幸せに、裕福になってやる、何度でも私は諦めないから」
ガレットはそれを見て、わずかに口元を緩めた。
「ならいい」
短く、それだけ言った。
それぞれが勝利の余韻に浸っている時、太い声が彼らを迎え入れた。
「素晴らしいッッ!!よくぞ戻ってきた!!」
「!」
「ッ!!」
「あ...」
会場と化した闘技場の上に界帝は見下ろす。
「最高の結末だ、歴代の大会の中で最も熱く、気持ちの良い終わりだと思っている、みんなよく戦った!!」
参加者は全員息を呑んでミカードの言葉を聞いていた。
「だが、それ故に残念だ」
その言葉に、空気が凍りついた。
「ルールはルール、優勝者は1人だけーーー今ここで優勝者を決めるがいいッッ!!」
「ど、どうやって...!!」
「何、最初に会場にたどり着いたら良いのだ、だから地を張って、妨害をして、辿り着け今ここは会場の前だーーー会場へ先についたものが優勝者だ!!」
戦慄する、今ここに最後の戦いが始まろうとしていた。
「ーーーいやもういいっす」
「は?」
応えたのは参加者の1人。
「もう願い決まってるんで、あとは金っしょ?それだったらオルゼ倒したアイザックが受け取るべきだろ」
ダイコーが引き継ぐように続ける。
「界帝様、私も同意見だ、MVPを押しのけてまで優勝するつもりはないし」
「……だな」「違いない」「悔しいけどそうね」
誰かが頷く。
「ここまで来て、争う理由もねぇ」
「終わりでいいだろ、もう」
静かに、しかし確かな同意が広がる。
「みんな....」
全員の同意を確認したミカードは小さくため息をついてアイザックに告げた。
「アイザック!」
「はい!!」
「この会場の先にいわゆるゴールラインがある、君がいくんだ」
「え、魔石は?」
「どうせ入り口に入らないよ、界帝サービスだ!!」
「ほんとか!!」
「さぁ行きたまえ、みんなが待ってるぞ」
「おぅ!」
参加者の激励と背に、アイザックは一人歩きだした。
――ざ、ざ……。
足音が、やけに重い。
「……っは、は……」
アイザックの呼吸は荒く、視界が揺れていた。
一歩踏み出すたびに膝がわずかに折れる。
遠く――歓声が聞こえる。
「……もう、少しだな」
かすれた声で呟く。
その瞬間ーー。
「危ないですよ」
横から、すっとアイザックを支える。
ミークだった。
「……来てくれたのか」
「えっへん、です」
「シオンは...」
「大怪我で絶対安静です」
「そうか」
(じゃんけんして私が勝ったのは内緒です)
軽く言って、肩を貸す。
体重がかかる。
「アイザックくんは、1人で頑張りすぎだってシオンちゃんが言ってました」
「シオンも人の事言えないだろ」
「いえ、アイザックくんは頑張りすぎです...」
「ごめん...心配させてしまったな」
「いいえ、そんなことはありません」
ミークは知っている、アイザックの本心を。
皆んなを守るために「自分がやらなければならない」という、責任に囚われている事を。
「アイザックくんって」
少しだけ言葉を探す。
「いつも、こうやってボロボロになるじゃないですか」
「……否定はしないな」
「見てる方は、結構つらいんですよ?」
少しだけ、冗談っぽく笑う。
「だから」
ほんの少しだけ、支える腕に力が入る。
「次は、私がちゃんと支えられるようになりたいです」
流れる静寂、ミークは口を開いた。
「もし、アイザック君が元の世界に帰っても……
「...」
「ーーーその時も、隣にいさせてもらってもいいですか?」
「!」
その時だった。
通路の先に、光が見えた。
歓声が、大きくなる。
「返事はいつでもいいので」
ミークは小さく笑う。
――眩い光が、視界を焼いた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」
ーーーアイザックッッ!!
ーーーアイザックッッ!!
ーーーアイザックッッ!!
次の瞬間、爆発するような歓声、アイザックのコール。
会場だった。
観客席が揺れている。
全員が立ち上がり、腕を振り上げ、叫んでいる。
「やるじゃねぇか小僧ーーーッッ!!」
「よく頑張ったーーーッッ!!」
その中心へと、二人は踏み出す。
「……すげぇな」
アイザックが、かすれた声で笑う。
「ですね」
ミークも小さく頷く。
だが――
「……っ」
その一歩で、アイザックの膝が崩れた。
「アイザックくん!?」
支えきれない。
体が、前に倒れる。
「あーーーダメだこりゃ」
そのまま――
ドサッ。
ミークに、のしかかる形で倒れ込んだ。
「ちょ、ちょっと……」
受け止めた衝撃で、ミークもバランスを崩す。
そのまま、後ろへ――
――ドンッ
ミークの柔らかい身体に包まれ、アイザックはすべての緊張が解ける。
「優勝だぁ...」
そう言って、アイザックは意識を失った。
「んも〜!」
しかしミークの表情は穏やかだった。
「でも、いいんです、いまはゆーっくり...休んでも」
アイザックの頭を撫で、静かに呟いた。
ーーーその時だった。
「え」
「は?」
会場が途端に静かになった。
「?」
ミークは会場の静寂を見て振り返る、観客の全員が唖然としている。
「え...なんです?」
ーーーまさか、新手の敵?
ミークは魔力を探るも反応はない。
否、それ以前の問題。
観客はミークを凝視していた。
「?」
否、正確にはーーーーミークの手。
「ん?」
ミークは視線の先を辿る、そこには地に手をついてる自分の手。
「ーーー」
しかし、その周り。
「ーーーあ"ッッッッ!!!!!!」
ミークの手は、ゴールラインを超えていた。
「え」
「は?」
...
..
ーーー優勝者、ミィィィィィク=キャメェェェェエルッッ!!!!
「「「「え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ーーーーーッッ???!!!」」」」
「ぁぁあああああ!!!ごめんなさぃぃいいいいいいーーーーッッッッ!!!!」
ーーー獣冠祭、これにて終幕!!
次回投稿は4/17 7:10!!
次回、2-3章『獣冠祭編』完結!!
アイザックが元の世界に帰りたい理由も判明します!
皆様たくさん読んでいただいてありがとうございます〜!!
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よろしくお願いします!!




