90話 あの夜見た星は、何よりも美しかった
Q.1章のセルシは間章で『機構星騎士』のせいで帝国に攻めきれなかったって言ってたけど、2章の彼らってただの雑兵だったよね?
A.その雑兵の中に当時所属していた昇格前のダイコーがいて、彼女にしばかれたからです
「...」
その光景はかつてみた一種の地獄に似ていた。
大地は裂け、抉れ、原形を留めていない。
砕けた岩盤と瓦礫が幾層にも積み重なり、そこかしこから赤い煙が噴き上がっている。
空間の“天蓋”は、もはや天蓋といえない程に赤く染まっていた。
赤。
ただ一面、赤。
渦巻く煙が雲となり、重く垂れ込め、脈動している。
その奥で、幾筋もの雷が走るたび、地下とは思えない閃光が世界を照らした。
――バチィッ。
雷が落ちる。
雷鳴を背に赤い雷を纏い、ただ一人、そこに“立つ”影。
笑っている。
その男だけが、この地獄の中心で。
誰1人立ち上がれる者はいなかった。
倒れ伏す者。
動かない者。
息も絶え絶えに地に縋る者。
誰も、空には届かない。
――その中で。
瓦礫に半ば埋もれるようにして、一人の男が仰向けに倒れていた。
「……」
動かない。
いや、動けない。
胸は上下している。
だがそれだけだ。
全身が焼け爛れたように軋み、骨の一本一本が悲鳴を上げている。
「……ぁ……」
ようやく、息が漏れた。
視界は滲み、輪郭は曖昧で。
それでも――
上だけは、妙に鮮明だった、赤い雲、脈打つ雷。
そして、その中心にいる赫い稲妻。
――見上げる。
また、この構図だ。
「……っ……」
唇が、わずかに歪む、笑ったのか、歯を食いしばったのか、自分でもわからない。
ただ一つ、はっきりしているのは。
――また届かない、という事実だけだった。
だが、しかし、だ。
ーーードォッ!!
「む!?」
迫る一筋の閃光、しかしオルゼはそれをも容易く躱す。
「そうか、まだお前がいたな、ガレット!!」
「状況はよくないようだな」
ガレット=ヘーゼルは紫紺の狼にまたがり、弓を構えてただオルゼを見据えていた。
「確かお前、勇者達に戦力外通告されたんだよな!!」
「昔の話だ」
短く吐き捨てる。
かつて勇者の隣にいた、魔王討伐の一員として戦っていた。
だが仲間をーーー後に世界最高の魔法使いと謳われるマンダカミアを庇い、大怪我を負い小さな村に置き去りにされた。
動けるようになった頃にはすべて終わっていた。
魔王は討たれ、勇者は称えられ、世界は歓声に包まれていた。祝杯の誘いも来たが、行けるわけがなかった。
その後だ、疫病が広がったのは。
かつての仲間はもういない、最後に残ったのは自分だけだった。
「……それで、ここにいる」
目的もなくただ彷徨い、たどり着いた島で、とある者からの依頼でシュガーと行動を共にした。
かつて勇者と話した事を思い出す。
「残った者は、去った者の意思を継いで戦わねばならない、でなければ去った者達は救われない」
「ほう?ならどうする」
ガレットは弓を引き絞る。
「勇者が守りたかったこの世界を――」
一切、迷いなく。
「俺が守るだけだ」
そう、オルゼに対して言い放った。
「吠えたな...死ぬかッ!!」
そして2人の激闘が始まった、傍で地に伏す者をよそに。
...
..
.
ーーー熱い。
燃える、全身が痛い。
「ぁ…」
……痛く、ない。
さっきまで確かにあったはずの痛みが、ふっと消えていた。
沈んでいく、深く、深く。
音も、光も、何も届かない場所へ。
「……」
水の中のようで、違う。
もっと重い。
粘つくような闇。
それでも。
――手だけが、温かい。
「……?」
ぼんやりと視線を落とす、あるのは自分の手。
誰かに握られている、細い指、震えている。
「……」
意識が、浮かび上がる。
ゆっくりと。
引きずり上げられるように。
――音が戻る。
――匂いが戻る。
――痛みが、戻る。
「ッ!!」
世界が、叩きつけられる
ーーーー。
「ッ!!」
そこは戦場だった。
「シオン...!!」
シオンは全身火傷だらけの状態で魔石をアイザックの手に握らせていた。
その魔石を介してアイザックに簡易的な魔法を施していた。
「『鎮痛魔法』......」
「なに...やってんだ...!!自分に使え...!!」
「ごめん...ね、こんなことしかできなくて...」
シオンの声は掠れていた、今にも途切れそうな意識の中、持てる力の全てを使ってアイザックの痛みを取り除いていたのだ。
「なんで...」
「貴方が大事...だからよ」
「!!」
その言葉で胸が張り裂けそうになる。
また、だ。
自分の不甲斐なさで、また仲間が傷付いた。
「...ごめん...俺のせいだ、俺のせいで」
蘇るかつての記憶。
ドリンク=バァの一撃で血を噴き出すミーク、
粉砕されるナルボ、
囮になったセルシの背中。
「アイザック」
「っ!!」
しかし、そのトラウマをシオンは遮った。
「まだ負けてないわよ...今、貴方がすべき事は何?」
「俺のすべき事...」
そうだ、まだ戦いは終わっていない。
見上げると二つの星がぶつかり合っているのが見える、ガレットとオルゼだ。
「...綺麗ね」
「綺麗だな」
「でも、前にもこんなことなかった?」
「!!」
そうだ...。
マンダカミア=キャメル。
瓦礫とガラス、夕陽を背に浮かんでいた姿は美しかった。
ドゥルセ=デ=レーチェ。
まるで高み立つその姿はアイザックの心と決意を動かした。
ドリンク=バァ
恐ろしく強い強敵、空に浮かぶ奴の姿はまさしく凶星だった。
カルヴァトス
舞台に立つ姿は美しく、妖精のようで華やかだった。
「そうだ...」
そうだ。
アイザックの見上げた相手は、全てーーー。
「星のようだった」
「そうね...」
そして。
「俺たちは...その星を撃ち落として来た」
「うん」
アイザックはボロボロの身体でゆっくりと立ち上がる、全身が悲鳴を上げる。
「まだ、終わってない...あの星を...撃ち落とすまでは、な」
拳に魔力を込める。
穏やかな光。
粒子が、静かに舞う。
その手を荒れた大地に触れる。
「!!」
シオンは目を見開いた、まるで息を吹き返すように荒れた大地からは草やキノコなどが生い茂ったのだ。
無制限に湧き出るアイザックの魔力、
魔力は生命力に近い存在、それを与えることによる大地の再生、その光景はまさに幻想だった。
「……」
届かないと思っていた。
ずっと。
でも違う。
「届かないなら――」
「「撃ち落とす」」
それが。
答えだった。
届かなくても、終わりじゃない。
...奥義の名前は。
ーーー『星穿』
次回投稿は4/13 7:10!!
次回決着!!
決めろ『星穿』!!
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