89話 赫き稲妻の『追放者』(3/3)
Q.2-3章オルゼと戦う前、分裂したエウロペはどうなったの?
A.全員撤収しました
――ブシュゥゥゥゥゥ……。
噴き上がった赤い煙は、上へ、上へと昇っていく。
この地下空間の“蓋”を舐めるように広がり――
やがて。
――ズズズ……。
空を覆った。
「……なんだ...これは!?」
アイザックが顔を上げる、天井一面が赤い“雲”に染まっている。
そしてゆっくりと、渦を巻くそれは。
まるで――雷雲。
――バチッ。
「ッ!?」
赤い雲の奥で閃光が走る、次の瞬間。
――ドゴォォォォンッ!!
落雷、それは地面ではなく、一直線にオルゼへと叩き込まれた。
「……ッ!」
だが、焼け焦げるどころか赤い雷を纏っていく。
筋肉が膨張し、鎧の隙間から赤光が漏れ出す。
人狼の耳と尻尾、その先端から赤い稲妻が噴き出している、迸る雷は空中で絡み合い形を保ち――
まるで“角”と"龍の尾"ように立ち上がっていた。
実体はない、だが確かにそこには確かに「有る」、揺らめくその輪郭は、感情に呼応するように微かに歪み続けている。
「はははははッッ!!」
「なんなんだ!?お前今何をしたんだ!!」
「結論から言うとお前らは『獣』になるッ!」
「……はあ!?」
オルゼの声が、地下空間に反響する、それに呼応するように赤い雲がゆっくりと脈動した。
「その煙はな、いわば“種”だ」
――ズズ...ーー。
天井から、薄く赤い靄が降りてくる。
「吸い込んだ時点で終わりだ、遅効性...だが確実に侵す」
「……ッ」
アイザックが思わず息を呑んだ。
「ここの人間は『獣』と化す、そして『獣』と化した強者達は弱者共を喰らいに上層にかけあがり、地獄が完成すると言うわけだッ!!」
「はぁ!?ふざけんなッ!!」
「ここには帝国最強や世界最鋭もいる」
オルゼは一歩踏み出した。
「この大会が始まった時点で――この国は詰んでいるんだよ!」
「ッ!!」
思い出す。
この下層『アンダーハイ』から上層へ繋がる通路ら『獣』の侵入を防ぐための防衛機構。
だが。
ダイコーやシオン、ミークやシュガー、ガレットのような“強者”が――全員“獣”になったら。
「……っ」
背筋が冷える。
「そ、そんなの絶対させるかッ!!」
「なら止めてみろッ!!」
ーーードォォォォオオオオオンッ!!
轟音、雷鳴共にオルゼは背後に現れた。
「なっ!?」
疾すぎる。
ーーーバゴォォォオオッッ!!
それは『神の怒り』か、雷電がアイザックを貫いた。
アイザックの骨は軋み喉が焼け、全身が硬直しながらも抗う術もなく転げ回る。
「ギャァァアアアアッ!!?」
絶叫、全身が熱い。
「ァァアアアア!!『螺旋起動』ッ!!」
ーーードッッ!!
アイザックは音速で移動する。
甘かった、「じわじわ削る」は無理だ、自分まで死にかねない、そう思ったが故の行動。
しかし...。
ーーーガッ!
「なっ!?」
「捕まえた」
そんな速度でも、アイザックの足は彼に止められる。
「『魔光斬』ッ!!」
手から魔力の刃を突き出しオルゼに襲いかかる。
――ザンッ!!
至近距離、逃げ場のない一撃、そのはずだった。
――ギィンッ!!
「なッ!?」
止められた。
オルゼの腕に纏う赤雷が、刃を弾く。
「だからそれは――」
低く、言い放つ。
「見たと言ったはずだ!!」
「……ッ!」
瞬間。
――ドゴォォォッ!!
「がぁッ!!」
掴まれた足ごと、地面へ叩きつけられる。
肺の空気が潰れ、視界が白く染まる。
さらに。
――バチィィィィッ!!
「ぐぁああああッ?!」
更なる追撃、オルゼの雷電が連続してアイザックの背中を焼く。
「アイザック、命乞いをしてみろッ!!もしかしたら助けるかもしれんぞ!!」
「やなこった!!」
「そう来なくっちゃなッ!!」
ーーードドドドドッッ!!
「ガァァァアッ!!」
地面が割れ飛沫が舞う、全身が焼け付くその時...。
「むッ」
ーーードッッ!!
一筋の光が一直線に走る。
「なんだ?」
しかしそれはオルゼに対してではなく、遥か遠くに見える、遠くから、また別方向の遠くへ、オルゼから見れば自分に関係のない意味のない攻撃。
しかし。
ーーーギギギギギッッ!!
「ッ!!」
その光はオルゼへ向けて薙ぐように向かって来たのだ。
「はぁッ!!」
ーーーゴォッ!!
雷鳴と共にオルゼは射程外へ瞬間移動し回避、アイザックの真上を掠めた。
その背後に影が迫る。
「だぁぁああああッッ!!」
現れたシオンがオルゼの頭上に剣を振り下ろす。
「ふぁッッ!!」
ーーーバヂィィィッッ!!
しかし、予知したかの如くオルゼの腕が差し込まれた。
シオンの剣から発する雷とオルゼの赫い稲妻が交差し周囲へ分散する。
「シオンッ!ミークッ!!」
ーーードゴッ!
「ごふっ?!」
オルゼの拳がシオンの鳩尾へ突き刺さる、そしてその胸ぐらを掴み至近距離まで引き寄せた。
「ッ!!」
2人の同じ色の瞳が、視線が交差する。
「ゴミ虫がよくここまで足掻けたもんだな」
「あ...が...っ...!!」
悶絶するシオンをそう吐き捨て、アイザックに投げつけた。
「うぉッ!?」
「きゃッ!!」
ーーーバチィィッッッ!!
アイザックはシオンを抱いて激しく吹き飛んだ刹那、更なる追撃、雷撃が地面を走り2人へ迫る。
「ーーーックッ!!」
ーーーガッ!
「シオンッ!?」
シオンが力を込めてアイザックを引き寄せた、まるで庇うように。
ーーードッッ!!
「ぁぐッ!!」
「シオンッ!!」
シオンは背中に雷撃を受けた。
「シオンちゃん!!アイザック君ッ!!」
「はぁぁぁッッ!!」
刹那、アイザックは抱かれながらも『魔光斬』を地面に突き刺し空中で静止した。
「お前らは飛べないようだな、ならッ!!」
「ッ!!」
ーーードォォッ!!
ミークは奇襲を入れた後アイザック達の元へ向かっていた、その矢先。
丁度たどり着いた途端、目の前にオルゼが迫っていた。
「次はお前だ」
ーーーガッ!
「んぐっ!!」
ミークの胸ぐら、そして腰を掴み抱え上げ、そして地面へ急降下。
「ぐぅぅっっ!!!」
ミークの身体が掴まれたまま地面が迫る。
「ッ……!」
空中でわずかに身体を捻る、ほんの一瞬の抵抗、ほとんど意味のないわずか抵抗。
だがそれも虚しく。
ーーードォォォォオオオオオンッ!!
背中から地面に触れたその瞬間、オルゼの膝に叩き込まれ、身体が折れた。
一撃だった。
「ぁーーーッ!!」
捻り出したような悲鳴、その瞬間をシオンとアイザックは捉えた。
「ミィィィィィクーーーッッ!!」
「早くもお前1人だな」
「くそぉぉぉッッ!!」
悲鳴を上げる身体を鞭打ち立ち上がる、『螺旋起動』により身体が熱湯でも注がれたように痛みが走る。
『使えて3回』
アイザックはすでに3回使った。
「...関係...あるかァァァァッ!!」
それを水晶越しに見ていたレーチェが叫ぶ。
「アイザック...!!やめろ、お前死ぬ気か!!」
そう叫んでもアイザックには届かない。
「『螺旋起動』ァァァァッッ!!」
ーーードッッ!!
最大出力、魔力を体内で全力で回す。
「『魔光斬』んんんーーーッ!!」
そして手から放出する魔力の刃、魔力という魔力を全身から捻り出したアイザックにとっての最大の状態。
ーーードォォォォオオオオオンッ!!
地面が爆ぜる、もはや光速をも越えてオルゼの頭上へ現れる。
「むッ!!」
「喰らえェェエエエええーーーーッッ!!!」
ーーードッ!!
完全な隙を突いてオルゼの首元へ『魔光斬』を突き立てた。
しかし。
「なーーー」
腕が止まった。
「ここまでなってしまったらもう...効かねぇんだよッ!!」
ーーーバギィィッ!!
「ガァァァア!!」
下顎から襲いくる衝撃、アイザックはオルゼの突き上げをまともに受け激しく転んだ。
「最初の状態でそれ喰らったら不味かったがな...今の俺には効かない、残念だったな」
「が...ぁ...」
身体が動かない、全身が激しく沸騰し目から赤い雫が垂れる。アイザックが立ち上がれないことを確認したオルゼは空へ舞い上がる。
「はははははッッ!!」
それでもなおオルゼの魔力は上昇していく。
ダイコーは全身大火傷、
シュガーは戦意喪失、
シオンは度重なるダメージと雷撃により重症、
ミークは背骨粉砕で戦闘不能、
アイザックはすでに限界を迎えている。
「もはや俺に敵はいないッ!!」
指を翳す。
大地が割れ、瘴気が噴き上がる。
「ここから先は“俺の世界”だッ!!ゴミめら共、明日を迎えられると思うなよーーーッ!!」
笑う、嗤う、ただわらう。
「ははははははッッ!!」
1人、ただ1人頂点に立つその男の笑い声が地底に響いていた。
次回投稿は4/11 7:10!!
アイザックの『奥義』のヒント、そして名前が判明します!!
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