85話 「人」の本質
Q.そういや1章に名前だけでていた僧侶のラミスって今何してるの?
A.名前を隠して既に主人公達と接触してます、誰か考察してみてね
ーーー街が爆ぜた。
建物は瓦礫となり、塵となって弾け飛び、
塔は粉々に倒壊し、砂が嵐となって吹き荒れる。
「きゃあああぁぁぁぁぁああああ!!!?」
シオンはひたすら爆風に晒され、地面を転げ回っていた。
「ぐっぅぅああああああああーーーーッッ!!」
ーーーガンッッ!
剣を取り出し地面に突き刺す、風圧で身体が浮き上がり今にも飛ばされかねない。
砂で前が見えない、髪の毛も、服も埃だらけに、口を開くこともできない。
そしてしばらくした後、風が止みシオンは地面に叩きつけられた。
「ぐぇ」
受け身を取ることを忘れ、鳩尾に衝撃を喰らい数分悶絶、よろけながら立ち上がる。
「だ、ダイコーさんは!?」
瓦礫を伝って見通しの良い場所へ駆け上がる、すると...。
「なーーーなに、これ...!?」
そこには...。
巨大なクレーターが出来上がっていた。
「これ...ダイコーさんがやったの...!?」
シオンは見ていた、流星の如き速度で地面に激突する二人を、二つの光が地面と衝突する瞬間は芸術のように思えたあの光景を。
「...ダイコーさーーーッッ!?」
ダイコーはすぐに見つかった、しかし...。
「ぁ...ぐぁ...」
立ちこめる煙の中、ダイコーは全身大火傷で横たわっていた。
「そ...そんな...ッッ!?」
黒い外郭は消し飛び、彼女の象徴とも言える軍服すらも燃え尽き、かろうじて原型は保つもののもはや戦える状態とはとても言えなかった。
「が...ぁ...し...おん...?」
「ダイコーさん!!」
ダイコーを抱き寄せ、懐から魔石を取り出し魔力を込める。
「止血魔法と鎮痛魔法をかけます、じっとしてて!」
「ず...まん...」
魔石はかすかに光り輝き、ダイコーを癒していく。
これで生きているのは奇跡か、それとも執念か、シオンにはわからない。
だが、ダイコーはその身を犠牲にしてでもダイコーに勝った、それは事実ーーー
ーーーそのはずだった。
「ッッ!?」
「!?」
シオンは瞬時に振り向いた、その先にあるのはクレーターの中心、巨大な大穴。
「なん...で...!?」
強大な力による衝撃波により、魔力の靄はしばらく吹き飛んだ、だからこそ魔力を感じ取れた。
「......やられた....」
「え、なにが...なにが起こってるの...!?」
その大穴の中から身の毛のよだつほどの禍々しい魔力が溢れ出る、一度感じ取れば2度と忘れない、それほどの気持ちの悪い魔力。
それがまるで意思のある泥のように、大穴から溢れ出ている。
「....やつ...は...物理戦闘を得意と...する、故に...失念していた...」
「...まさか...え、...ーーーまさかッッ!?」
「やつは
ーーーボンッッ!!
現れたのは無傷のオルゼ=スティングレイ、全身をほぐすように動くその姿は余裕そのもの。
「ーーー魔法使いだ」
「ッッ!!」
「当たりだ」
オルゼの身体は橙色の光を纏っている、それはシオンが最もよく知る魔法であり、仲間の魔法でもある。
「『転送.....障壁』....!?」
「ほう、知っているか」
受けた攻撃を2度まで無効化する魔法、ミーク以外で使っているのは初めてだ。
「そんな....そんな...!!」
「さすがに発動までは数秒かかるがな、ダイコー、お前は俺に時間を与えすぎた」
「..........」
「だが、ここまで戦ったことは褒めてやろう、そこでーーーだ」
オルゼが目の前に現れた。
「ッ!!」
シオンは剣を構える、が。
ーーーバギッ!!
「がっ!?」
オルゼの横凪ぎで激しく吹き飛ばされ、岩場に叩きつけられた。
全身に焼け付くような痛みが走る、シオンの身体もとうに限界が来ていた。
そんなシオンに目もくれず、横たわるダイコーを見下ろし、静かに告げた。
「お前さ...『獣』になれよ」
「!!」
それは意外な提案だった。
「お前ほどの者であればすぐ『適合者』まで上り詰められる、100人以上は喰わないといけないが...まぁなに、この帝国で調達すればいい」
「なに...?」
「この国は俺の支配下におかれる、人間は『適合者』を生み出すための糧として飼育されるんだ、お前ならその上に立つ資格がある」
「...なぜだ」
「あ?」
「なぜ...支配にこだわる」
「...」
オルゼは少し沈黙し、空を見上げた。
「...昔の話だ」
「?」
「俺は昔盗賊をやっていてな、貴族の親を殺して捕らえたガキ2人を殺し合わせた事があった」
「...」
「楽しかったんだよ、驚くほどにな...」
そう告げたオルゼの目はドス黒く濁りきっていた。
「人の命をこの手で握る、生かすか、殺すか――全部俺が決める」
「...」
「それが支配だ、生存権をこの手に握る事の快感...怯える女を傍に生きたいと恐怖の目で媚びへつらうゴミ共を弄ぶ、最高だ」
「...」
「支配欲...『人間』も『獣』も関係ない『人』の欲だ、立場でも空気でもいい、自分は安全圏からなんでも言える、その立場から高みの見物を決め込む愉悦こそが人の本質なのだ」
ダイコーはため息をついて、そして確信した。
ーーーこいつは人間ではない。
『獣』といえども元は人間、人の心があるのならば罪悪感の少しでも垣間見えることを期待した。
だが違った、この男は
ーーー根本的に『獣』なのだ。
「...」
そうであれば、ダイコーの答えは決まっている。
「ダイコー、お前のその火傷が心配か?安心しろ、『獣』になった直後は痛覚がない、すぐに動けるようになる」
「...」
しかしその時、ダイコーの視線を見たオルゼは言葉を止める。
「...」
「...」
その眼差しはもはや語るまでもない、オルゼは大きくため息をついた。
「...言っても無駄か」
「あぁ...私は『人間』だ」
ダイコーには過去も、繋がりも、全てを捨てる事など出来ない。
この翼は龍の外郭から、動力はツミレの技術から、ダイコーは繋がりで出来てきた。
繋がりを絶ってまで目指す境地などダイコーには無い。
「ふ...ならば死ねッッ!!」
「...」
オルゼは飛び上がる。
ーーーバシッ!!
そして手を合わし、親指と人差し指を突き出し、その照準を身動きの取れないダイコーに合わせる。
「他のやつも送ってやるからーーーあの世で待っていろッッ!!」
ーーーバチィィィッッ!!
指の間から徐々に電流が走る、そしてその稲妻は徐々に広がり赫い閃光を放つ。
「ふ...」
しかし、ダイコーは笑っていた。
「死ねッ!!!!
『魔光電導ーーー」
「ーーー遅いぞッッ!!」
「!?」
刹那、オルゼの視界が揺さぶられる。
引き伸ばされる時間の中、
オルゼの頬が激しくめり込み
痛みも次第に増大していく。
「ーーーッッッッ!!」
視界に捉えたのは、踵落とし。
ーーーその先の殺したはずの相手。
アイザック
ーーードオオオオォォォォンッッ!!
オルゼは彼方まで吹き飛び、瓦礫の下敷きになった。
「クソッ...!!」
しかし直前に懐に入られたせいか、大した打撃は与えられなかった。
「遅いぞアイザック!!」
「遅い!?いや結構急いだんだけど!!」
「アイザック...遅いわよ...!!」
「あ、あぁーーわ"ぁぁッッ!?シオンお前大丈夫かぁ!!」
血塗れの仲間を前に大慌て、威厳のかけらとない救世主がそこにいたのだ。
「大袈裟よ...頭を切っただけ...普通に動けるわよ...ボロボロだけど」
「そうか...じゃあダイコーさん連れて離れててくれ」
「え、で、でもオルゼはどうすーーー」
その時だった。
アイザックの目は覚悟の決まった目だ、ドリンク=バァの時と似ている。
だがドリンク=バァとの戦いの時とは決定的に違う、激昂による決意ではない。
ただ目の前の敵を見据えた静かな怒りが伝わる、その圧は以前よりも数段増していた。
「...休んでてくれ」
「...」
そんなアイザックが遠く感じる。
「わかった...でも、無茶はしないでね」
「あぁ」
しかし眼差しは暖かく、心地良いものだった。
そうだ、遠くになど行っていない、目の前にいるのは紛れもなくアイザックだと、シオンは胸を撫で下ろした。
「...私も休んだら、また戻るから」
「わかった、待ってる」
そういうとシオンはその場を立ち去った。
...
ーーードォォォオオオオオンッッ!!
積み上がった瓦礫を吹き飛ばし現れたオルゼ、しかし何事もなかったかのようにピンピンしていた。
「アイザック...」
「よう、まだ俺との決着はついてないぞ」
そして、2人は相対する。
この『獣冠祭』における大目玉。
アイザックとオルゼの戦いの火蓋が切って落とされた。
次回投稿は4/3 7:10!!
いよいよリベンジマッチです!
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