86話 W魔光斬
Q.ダイコーさんって故郷どこなの?マナタン帝国所属なのに「故郷」とかいちいち言ってたよね
A.2-3章ラストに明かされます、ダイコーさんのセリフや行動に注目。
廃墟の街の中心、見上げる程の巨大な魔石が見下ろす巨大なクレーター。
ーーードンッッ!!ドンッドンッッ!!
先刻、ダイコーの放った衝撃波によって天井が限界を迎え、大岩が次々と落下する。
瓦礫は地面に突き刺さり、まるで石の林のように戦場を埋め尽くしていた。
相対する2人。
『追放者』オルゼ=スティングレイ
そして、アイザック。
合わせ鏡のように2人の目は互いを映していた。
「アイザック、大人しく死んでおけば苦しまずにすんだのにな」
「悪いが俺は無敵なんだ、毎日3食しっかり食ってるからな」
「何?」
「煮干しがいいぞ、牛乳よりもカルシウム豊富で出汁にも使える、タウリンもいっぱいあるから疲れにも効く」
「...ふっ...はははは!!」
オルゼは腹を抱えて嗤った。地底に笑い声が響き渡る。
やがて岩の上に立ち、まるで立場を示すようにアイザックを見下ろす。
「もっといいものがある」
「ーーーッ!!」
その時、オルゼは腕を明後日の方向に向ける、その先にいたのはシオン。
「支配だ」
ーーードンッッ!!
雷撃が飛ぶ、シオンは這って逃げようにも間に合わない。
しかし...。
ーーーバシッ!!
「!!」
アイザックが雷撃を弾き飛ばしていた。
「ほう」
常軌を逸した速度で割り込み、拳一つで軌道を叩き逸らす。
雷は目的を失い、遠くの闇へと霧散した。
「ふん...情は捨てきれないか、あれほど言ったのにな」
「どうかな、俺だってさっきとは違う」
「そうか?なら...どうする?」
オルゼは口角を歪める。
「守りながら戦えるか...?そのゴミを守りながら」
その時だった。
アイザックの身体から魔力が溢れ出す。
空気が軋む。目で見えるほど濃密な魔力が、霧のように周囲へ広がった。
「...ッ!!」
まるで空間そのものが沈み込んだかのように、周囲の空気が一瞬で変わる。
アイザックは静かに息を吐いた。
ーーーもって5秒、使えて...3回ってとこか。
「『螺旋起動』ッッ!!」
「なんーーっ!?」
ーーーバゴッッ!!
瞬間、アイザックが消えた。
爆風、遅れるように巻き上がる砂埃、激しい突風に晒される。
「なんだ...今のはッッ!!」
オルゼは驚愕した、爆風ではない、刹那垣間見えたアイザックの変化に。
ーーーバギッッッ!!
「がッッ!?」
瞬間、オルゼの頰に衝撃が走る。
視界に入ったのは――まるで夕日に染まるような髪をした、輝くアイザックの姿だった。
その瞳は深く燃え、まるで戦場そのものを切り裂くように静かに光っている。
遅れて突風が走りも砂埃が舞い上がる中、オルゼは衝撃で後ずさる。
沈黙は長く、重く、そして――
次の瞬間、戦場に再び轟音が落ちるまでのわずかな静寂だった。
「ちぃッッ!!」
ーーーダンッ!
跳躍、距離を取る。
「逃すかッッ!!」
ーーーダンッ!!
アイザックも後を追うように跳躍、大地が割れるほどの勢いでオルゼに追いつき拳を振り上げる。
「こいつッ!!」
追い打ちの連打がオルゼを襲う、オルゼは舌打ちをしながらその腕を弾く。
ーーーガンッ!!
「ふぎぃッッ!?」
しかし、間を縫うように放たれた拳がアイザックの顔面に命中。
だが、それと同時にアイザックの指がオルゼの腹部に添えられる。
「ッ!?」
「『魔轟拳』ッッ!!」
ーーードゴォッ!!
「がッッ!?」
衝撃、オルゼの背中が不自然に盛り上がり、激しく吹き飛ばされた。
「守りながら、だと!?」
ーーードゴォッドゴォッ!!
クレーターを飛び越え廃墟に突っ込むオルゼを見て、アイザックは激しく鼻を鳴らした。
「へッ!!お前周り見てる余裕あんのかよ!!」
廃墟の前に降り立つと同時に『螺旋起動』を解除。
「い"ーーーッッ!?」
全身が焼け付くような痛み、呼吸がままならず疼くまる。
「ふぅーーー!ふぅーーー!ふぅーーー!」
悟られないよう痛みを堪えて呼吸を繰り返す、心臓を何度も叩き鼓動を抑える。
「...魔力消してやがるな」
廃墟の中、オルゼのドス黒い魔力が感じられない。
この地底を支配する魔石、それから溢れ出る魔力の霧に乗じて完全に気配を立っている。
「...」
アイザックは目を閉じて、そして思い出す、師匠の言葉を。
『どこに来るか、どこに敵が潜んでいるわからない場合、やる事は一つじゃ』
「ーーーその盤面を根本から崩すッ!」
アイザックの腕から放たれる蒼光。
『魔光斬』を伸ばす、魔力の高圧噴射による斬撃、しかしアイザックはそれをーーー。
「ふんッッ!!」
もう片方の手からも伸ばした。
「何...?」
その様子をオルゼは廃墟の影から見ていた。
『魔光斬』、魔力の刃なのは知っている、だがしかしその魔法は魔力消費が激しく数秒と持たない。
しかしアイザックはそれを維持するどころか両手から発動させた。
「へっへっへ、二刀流だぁー」
アイザックは自由に振り回し、その先を見据える。
「この廃墟にいるのは確実なんだ、だったらやる事は一つだよなァ!!」
「こいつ...ッッ!!」
「W魔光斬だコラァァァァッッ!!」
アイザックはーーー廃墟を支える柱を次々と両断し始めたではないか。
ーーードンッッ!ドンッッ!ドンッッ!!
一振り、足りなければ二振り、それでも足りなければそれ以上の斬撃で柱を次々とへし折る。
刃がぶつかる度に廃墟が揺れ埃が舞い落ち、建物全体がミシミシと音を立てる。
「自分ごと埋まるつもりか!?」
「俺は無敵だもんねー!ーーーってか、いたァ!!」
飛び出る影をアイザックは捉える、しかし。
「ぇが!?」
「⬛︎⬛︎⬛︎ッッ!!」
「違う、こいつじゃない!!」
目の前にいたのは『獣』、血まみれの両手で掴み掛かり、何人も噛み殺したであろう牙が襲いかかる。
「邪魔ァ!!」
「チッ!」
その隙にオルゼは砂埃を上げてアイザックの背後へ滑り込む。
「オルゼ!」
「まさか俺の引き出しを先に使われるとは...ッ!」
オルゼも考えていた、この廃墟を崩して生き埋めにする手段を、しかし先に使われてはやる事は一つ。
「お前が埋まっとけ!!」
「は!?」
ーーーバチィィィッッ!!
オルゼの両手から放たれた雷撃は残りの柱を砕く。
「あ、てめぇ!!」
「ははは、じゃあなッ!」
ーーードドドドォォォオオッッ!!
天井が崩れ、光が閉ざされる。
アイザックは瓦礫の下敷きになり、オルゼはいち早く脱出しその破壊された建物を見据えていた。
「くそが!!」
しかしオルゼの表情は依然として険しい。
「うぜぇなクソッッ!!」
ーーードンッッ!!
衝撃波、瓦礫の中から一回り大きな瓦礫がーーー
ーードゴォ!!
粉々に分散しオルゼに襲いかかる。
「こいつの...どこに!そんな力がッ!!」
ーーードンッ!ドンッッ!!
避けた先でまた追うように襲いかかる瓦礫の残骸、それはまるで散弾のように地面を削り、オルゼの逃げ場を奪う。
「だぁぁッッ!!」
ーーードンッ!ドンッッ!
迫り来る大岩をオルゼは粉砕、その瞬間オルゼの足元に影が落ちる。
「上か!!」
ーーードォンッッ!!
迫り来る大岩、しかしオルゼは拳一撃で砕く。
「小手先しかねぇのか雑魚ーーー
ーーーバギッッッ!!
しかしまたもオルゼを襲った衝撃、それは下から。
「がッ!?」
アイザックは地面を掘ってオルゼの真下から拳を打ち込んだ、その拳は、オルゼの顎を正確に打ち抜いた。
上下の使い分けをアイザックはこの短期間でマスターしていたのだ。
「ばーか!どーだパチもんが!!」
「き...貴様ァァァ!!」
空中で回転し体勢を立て直したオルゼに追撃の拳を立て続けに打ち込む、アイザックはオルゼを完全に翻弄していた。
ーーーバシッ!
「!」
しかし、アイザックの攻撃は止まった。
「やっぱそう...上手くいくわけねぇか」
拳はオルゼによって正確に受け止められたのだ。
「調子に乗るなよ...」
「調子に乗ってるのはお前だ」
ーーードンッッ!
2人は同時に距離をとる。
瓦礫が転がり、砂煙がゆっくりと落ちていく。
「……」
オルゼは顎に触れた。
指先に付いた血を見て、ふっと笑う。
「はは……」
やがて笑い声は大きくなる。
「ははははははははッッ!!」
地底に狂ったような笑い声が響く。
「……頭打ったのかお前?」
アイザックが睨む。
オルゼは肩を震わせながら答えた。
「いや何、楽しいのさ、久しぶりにな」
「は?」
オルゼは落ち着きを取り戻し、ゆっくりと口を開いた。
「アイザック...俺がなんで『追放者』と呼ばれてるか知ってるか?」
「いや初めて聞いたわ」
その言葉に、オルゼは小さく笑う。
まるで、どうでもいい昔話でも始めるかのように。
「…ふふ、まぁ…そう呼ばれてるんだよ、何故だかわかるか?」
「さぁ?追放されたからじゃねぇのかよ」
「それはどうしてだと思う?」
「知らん」
短い沈黙が落ちる。
オルゼの笑みがゆっくりと歪んでいく。
「俺は勇者とやりあった事があってな」
勇者、魔王と戦い世界を救し英雄。
そして、世界に疫病を広げた最初の犠牲者。
「ッッ!!」
その時、オルゼの全身が隆起する。
皮膚の下で何かが蠢き、骨が軋むような音が響いた。
「負けた...負けて牛耳っていた村から叩き出された、だから「追放者」だ...だがしかしッッ!!」
明らかに人の挙動ではないそれを見て、アイザックの全身の毛が逆立った。
「――だが、それが“理由”じゃない」
オルゼの口角が歪む
「俺が『追放者』と呼ばれるのはな――どこにも属せなくなったからだ」
「!」
「俺は勇者との戦いで限界を超えた...否、超越した!!人でもない魔族でもない、世界の理からすら弾かれた、だから俺は――」
オルゼは上着を投げ捨て、そして目に見えて黒い魔力を吹き出していた。
まるで、長く封じていた何かを解き放つように。
「全ての生物を超越した己の存在そのものがーーー「追放者」なんだよ」
これにより、戦いはさらに壮絶なものとなる。
次回投稿は4/5 7:10!!
オルゼ、変身します!!
ビジュアルお楽しみに!
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