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56・・・「奪う、其はまさに災いなり」


「欲しい…か」


スチールが反応した。その右目は打って変わって光っていた。そんなはずはないのにまるで別人のような。


「その心、俺ぁ嫌いじゃないぜ禁忌。あんな出鱈目なもん欲しくてたまらねぇってのは。けど限度ってモンがあるのはよーく覚えときな。行き過ぎるとそれァ災いになる」


欲望の厄災の権限能力、発動。


どんな生きとし生けるものであろうが必ず欲望は存在する。

食べたい、生きたい、寝たい諸々。

だが誰しも思ったことはあるだろう?


【自己犠牲無しで欲しい、リスクは誰かが背負えばいい】


という欲を。

もちろん無理だ。なぜなら皆災いになることを恐れるからだ。

しかし、その欲望の頂点に立つのがこの欲望の厄災。


この厄災の権限能力は、何かを欲する感情を持ち、増大した時、該当者は対象の欲しい部分だけを概念レベルで仕分け奪うことができるようになるというもの。しかし魂と心は奪えないという制約はあるが。


もっと分かりやすく述べよう。

ノーリスクで欲するものを奪えるのだ。


欲しいから奪うという感情を世界のシステムが許す限り極限まで突き詰めた結果災いになることも厭わなくなった存在、それが欲望の厄災なのだ。


スチールは元々とある鉱山からの採掘物でやりくりしていた国の所謂奴隷だった。

最初から奴隷だったのではない。幼少期は普通の家庭で普通の生活をして普通に育っていた少年だった。

だが鉄の能力に目をつけられ家族を奪われ自身も拉致されたのだ。


彼は憎んだ。そして欲した。

自身を縛る屑どもを蹴散らし自由を手に入れることを。

そこに王が現れた。


『お前…強ぇ欲望持ってんなぁ。どす黒い欲望…。俺様ならその欲望満たさせてやれるかもしれねぇぜ?乗るか?』


『ああ…乗る』


欲望の厄災となったスチールはとりあえず自分を虐げた者どもを殺めておき、奴隷を解放し、国を出て旧日本へやって来たのだ。

しかし如何せん居場所がなかったスチールは王が持っていた「ミスト」に居候することで生活していたのであった。

だがそのスチールであっても蘭太の存在を知らなかった。ただ「新たな怒りの厄災が誕生した」という連絡を聞いただけだった。


それもそうだろう。蘭太は施設内では自由にいることは出来たが外部とは完全に隔絶されていたのだから。存在や情報も。


「お前はその限度を超えられない。なぜかって?お前は奪う気がないからさ。矛盾してんだよ。()()()()()()()()ってな。バカか?」


「欲しいからって奪うのとは違うだろ!」


「何がだよ?欲しい→奪うってのは太古から存在する流れだろ?獣でもするぜ?そんな綺麗事並べてる限りお前は強くなれない。そのままでも別に良いがアノコの足で纏いならまだ良くて最悪死ぬぜ?」


「違う…俺は死なない!」


必死に否定する火鉈をスチールは鼻で笑う。


「運ゲーするつもりか?悪いが戦争で運ゲーは通用しない。あのなぁ…残酷かもしれねえがよ、大体そう綺麗事並べてる奴が先に死んでいくんだよ!!…悪いがそんな運ゲーに頼る奴に力を得る資格は無い。そこで見てろ、災いの力をな」


火鉈から視線を外し、猛威を振るっているヘルヘイムに目を向ける。


ヘルヘイムはどうやら腹を空かしているようで人々を闇に包んでは食らっているようだ。

何故わかるか?通った跡が血で赤黒くなっているからだ。


普通なら絶望的なこの状況だが、スチールにとっては逆だった。

スチールは歩いて血の池まで行き、能力を発動。すると血の池から鉄で出来た銃火器が作られた。

何故造ることが出来るのか?単純である。

人間の体には鉄分が含まれている。それを利用しただけだ。


無論生きた人間を使う事もできるが後ろが喚くのは正直面倒くさい。

しかし血や屍などが散乱した今の状態では何の躊躇いもなく原材料となった物質を利用できるというわけだ。


スチールは生成物を担ぎ、闇へ向け引き金を引くと銃口からはレーザー光線が発射された。


当たったのだろう。闇が震えて薄まり、ヘルヘイムは収束器官で闇を圧縮して照準を自身を攻撃したスチールへ合わせる。


「ホラ、撃ってみろよ?ご自慢の闇でなァ!」


発射されたブレスをスチールは片手で迎え撃つ。

普通であれば自殺行為、だがスチールにとってはまた別。


能力奪取(スティール)。俺が使ってやる。だからさぁ…有り難く寄越せよ!」


闇はスチールに飲み込まれた。


心なしかヘルヘイムの目が見開かれたような気がした。


「くは、ごっそさん。んじゃあ俺からは感謝のお返しだッ!!」


左手の親指と人差し指の先を合わせて奪った闇を圧縮し、人差し指を前に突き出して闇のレーザー砲を放つ。


まさか自分が同じ技をされると思っていなかったであろうヘルヘイムは一瞬反応が遅れ、体を捻らせ回避を試みるが右後ろ足をレーザーが貫通し、通ったところが消滅して血が吹き出た。


ギィヤァァァァァァァァァァ!!!


痛みと怒りによる大咆哮を上げ再び闇を圧縮しようとするヘルヘイムだが、ここでスチールを除く全員が異常に気づく。


()()()()()()()()()()

当たり前だ。スチールに闇の能力を奪われたのだから。

今ではヘルヘイムはただ空を飛ぶ巨大な龍でしか無くなってしまったのだ。


とはいえ油断は禁物。

好機と判断して突撃した者をヘルヘイムはその巨体で弾き、怒り狂った様子で襲いかかる。


ヘルヘイムの体長は100mを優に超える。1.7m程度しか無い人間にとっては身震いする程度で十分脅威になるのだ。

当たり前だがヘルヘイムは闇の能力に依存しきっているわけではなく、自身の巨体を生かした攻撃方法も備えている。


さて、そんなヘルヘイムの尾を闇の光線が通り切断した。


「おぃコラァ、ヨソミしてねぇでこっち向けよ?そんな雑魚共より俺の方が重要だろ?」


ヘルヘイムはこれまで以上の殺気を漲らせる。完全スチールを敵視し、殺しにかかるのだ。

横槍を入れる兵士を咥え、スチール目掛け投げつける。


「人間弾丸ってか?粋な事考えるねッ!!」


飛んできた人をスチール軽く腕で弾く。その人は気絶していた。

代わりという風に闇の光線がヘルヘイムを穿つ。


そこからの戦いはスチールの一方的な攻撃だった。

即死攻撃を失ったヘルヘイムはスチールにとってはただの大きな動く的に過ぎず、奪った闇の力を扱うスチールによって嬲るように遊ばれていた。


本気で敵視した時には既に遅かったのだ。


数分後、断末魔の叫びを上げヘルヘイムは死んだ。


「あ?なんだ?こんなもんか?しょーもねーな」


物足りなさげなスチールだったが、戦闘終了と共に権限能力の効果も切れた。


「本当にやったんですか…?」


目を見開く舞が呟く。


「ああ。ヤローは完全に死んだろうよ。まあざっとこんなもんすかな厄災(ドラゴン)級の力は」


「本当出鱈目ですね…」


「7人しかいないんだぜ?こんなくらい優遇されてもいいだろ」


ところで…、とスチールは火鉈に話を振る。


「これが災いの力だ。呆気ないもんだろ?…で、何人…いや、何割死んだ?」


「分からない…彼方、分かるか?」


「探知してみるわ」


彼方が風を起こす。

この風達は彼方に操作されているという特性上探知機としての役割も果たすことが出来る。

そうして人数を調べていくうちに彼方の表情が青くなり、ふらつく。その彼方を舞が支える。


「どうしたっ!?」


「多……すぎる……」


ここで「生存者がか?」と尋ねる馬鹿はいない。ヘルヘイムの所業を見ていれば間違ってもそんな言葉はでてこないのだ。

では…。


「何割…だ?」


「落ち着いて聞いて…ね?……8割よ」


「………は?」


きっと聞き間違えたのだ。まさかそんなに死んでいるはずが…


8()()()…」


「…………」


嘘だろ…?とも、マジかよ…とも言えない沈んだ空気がその場を支配した。



ーーーーーーーーーーーー



「王が…施設長…」


とは言っても正直大した関わりを持っていない蘭太は無意味に反芻するだけだった。


「それで?君は何故僕を精神世界へ引きずり込んだんだい?」


唐突な質問を浴びせられた蘭太は一瞬固まった。


「え、急だな…。なんでかってそりゃ話し合いを試みるためだよ?」


「悪いが君と話をする気はない。なんならここで君の魂を粉砕してやろう」


「うーん、それは無理。無理矢理別々の精神世界を繋げてるだけだから俺とあんたの間を行き来できるのは声だけだよ」


「面倒なことを…」


「まあそれ狙ってこうしたからそう言われるのは承知してたけどね…。じゃ本題に入りましょか。といっても前も言ったかな…、俺達はこの力を世界破壊には使わないよ。俺達自身の信念、大事な人と一緒に暮らせる平和な世界に生きるということのために使うんだ」


「そうか…では聞こうか。その信念のためにもし世界が邪魔になった時は君は世界を壊すのか?」


「そうかもしれないね」


「なら今のうちに君を殺ーー」


「でも、その時は来ない。何故なら俺達にとっても世界は必要なものだから。ただいまって言える帰る場所なんだ。そんな所を簡単に壊せると思う?俺は思わない。もしそんな輩が出たら全霊をもって潰す」


じっ、と座った瞳で蘭太はブクリスを見る。


「ただ…」


「?」


「もし何が何でも俺達を殺したいと言う心が変わらないのなら俺達は死ぬまで抵抗する。俺達は生きるために戦うからね」


「進んで破壊はしないが邪魔なものは排除すると言うことか?」


「だいたいそんな感じ。現時点ではね。でもこれで固まる気はする」


蘭太は広げた腕を見たり手を握っては開いてをする。


「なにぶんこの力を扱い出したのが最近すぎて自分でもよく分からないんだ。でもそろそろ答えを出さなきゃいけない。未回答のまま進むわけにはいかないし、回答せずに死ぬなんてもってのほかだ。だから今もこれからも俺は死ぬ気はないよ」


「そうか…」


だんだんとブクリスも分かってきていた。この少年は完全に歴代の者と異なることを。


「ならば答えてくれ、蓮藤蘭太。君はこの戦争をどうしたい?そして終わった後どうしたい?」


「最速で終わらせる。その後は平和に暮らしたいな」


答えた蘭太は決意と希望で少し笑んでいた。



ど、う、も、どらっごです!


ヘルヘイム呆気なっ!()

いざ書いてみるとそう思いました。


とは言っても損害がバカみたいなので存在感はあるのでは…?とも思ったり。


それでは、また。

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