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55・・・「絶望の闇」


「王を知らない厄災(ドラゴン)級…?いったいどうすればそんな者ができるんだ…?」


ブクリスは頭を抱えていた。


実は厄災級能力者は実質的には禁忌能力者と変わらない。「厄災」の力を得ることで全ステータスが上昇し、翼を得る。

本来であれば厄災級能力者になる際は王が目の前に現れ自身に授けるという工程を必要とするため該当者は必ず王のことは知っているはずなのだ。

ちなみに厄災級能力者の翼には飛行能力しかないのだが、蘭太は元から自分の翼を持っていたため別の用途にも使える。


「あ、俺一時期記憶を別場所に移されてた時期があったよ」


「え」


「なんか諸事情あって名前はついぞ分からなかったけど施設に居させてもらっててね、そこで暮らす代わりに色々実験とか受けてたんだよね内容は全部は分からないけど。そしたら容量オーバーで暴走したらしくて、鎮静はされたんだけど解決策として記憶移植受けて施設から出されて一人暮らしを開始って言う経歴がある」


「施設…?」


「そう。よく分からないけどね。そこでだよ。怒りの厄災が俺に宿ったのは。…あれ、確かその時自称施設長のおじさんがくれたんだっけな…?」


「おじさん…施設長…」


ブクリスの思考に何か引っかかる。

あれは確か15年ほど前だったか。

王が各々の厄災級に「俺組織と施設作ったわhahaha!慈悲深き俺様は良いことするなァ!」と宣っていた気がする。

あっ。

…それじゃね?


「蓮藤蘭太」


「なんです?」


「そのおじさん…が傲慢の王だ」


「………」


静止画のようにフリーズ。


「は?」


口から出たのはマヌケな声だった。



ーーーーーーーーーーーー



夜が明けた旧日本軍の一角。


「…すまない」


スチールは火鉈達に頭を下げていた。

謝っている内容は言わずとも知れているだろうが、蘭太を止められなかったことである。


「あんたが謝ったとこでどうにもならねぇよ。今俺たちに出来るのは生き延びること、それからあいつが生きていると信じること、んでもって生きて合流することだ」


動揺してはいるが頑張って落ち着いて振る舞う火鉈。

今すぐ飛び出していきたいがスチール曰く「付いてくるな」と言われたそうだ。厄災級のスチールでさえそうなのだから自分達が行ったところで確実に足手纏いになるのは目に見えている。


現在、旧日本軍はほぼ機能していない。

散弾砲は全て破壊されてしまったし、変身能力者も今でさえ回復している者もいるが殆どが倒された。幸い火鉈達は無事だが。

今ここを安直に離れればもし帰ってきた時に壊滅しているかもしれないという不安もある。


「さて…どうする…?」


その時。空が少し暗くなった。


「…?夜が明けたばっかだよな?」


「そのはずなんですけど…いったい何が…?」


全員が空を見上げ不審がる。

見ると、空を暗雲が覆い尽くしていた。それも地平線の彼方までではなく、旧日本軍の駐在する区域にのみ。

明らか異常事態である。そう思った瞬間。



キィィィィィイイイィィィィンンンン!!!!



耳をつんざく大音量の高音に全員が耳を塞ぐ。

そして、雲が膨れ上がり現れたのは巨大な闇。


ナニカということは分かるが全体が闇に包まれているため何者なのか、はたまた物体なのかすら分からない。


だがとてつもなく危険な相手だということは分かる。身を切り裂くほどの殺気が嫌でもそう感じさせる。


「て、敵襲!!戦闘用意ッッ!!」


戦える兵士が次々と変身し、その闇に攻撃を試みる。


「火鉈!スチール!ボサッとしてないで私たちも!」


すでに変身した彼方が火鉈とスチールを急かす。


「お、おう!」


「待て禁忌!」


火鉈の肩をスチールが掴む。火鉈だけでなく3人も止まる。


「何すんだ!行かねえと!」


「アホ!未知の相手に迂闊に近づく奴がいるか!攻撃したとして超遠距離だ!今は様子を見るに徹しろ!」


バカ言え、と反論しようとしたが火鉈達は見た。初めて見るスチールの何かを恐れ、警戒する表情を。


まさにその時だった。


ギィィィィィイイイィィィィンンンン!!!!


また高音が響き、闇が薄れる。


「ドラゴン…?」


露わになったのは長大な体に一対の巨大な翼を生やした龍。

その龍は頭部の額部分に闇を集め、発光させた後、巨大なブレスを口から放った。


だがそのブレスは真下に直撃、旧日本軍の兵士には誰にも当たらない。


「…なんだ、照準音痴か?」


そこで油断した者は気づかない。その龍の視線に。


「違えっ!!変身!」


焦ったスチールが変身し、火鉈達に巻き込んで自分ごと吹っ飛ばす。

直後、さっきまで自分達が居たところを闇の奔流が駆け抜けていった。

その闇龍は真下にブレスを放った後、その向きを前へ変えたのだ。


そして火鉈達は絶望的な光景を見る。


闇(・)が(・)通(・)っ(・)た(・)と(・)こ(・)ろ(・)だ(・)け(・)不(・)自(・)然(・)に(・)人(・)が(・)い(・)な(・)い(・)。


「…え?」


「まさか……」


「ああ…消滅したな」


龍を見ると、再び闇に包まれていた。



【黄泉送り】。

闇魔龍ヘルヘイムの特殊能力。

この龍が纏っている闇は冥界と呼ばれる世界のものであり、圧縮されると冥界へ引きずり込むという効力を持つ。

ヘルヘイムは収束器官(発光した額部分)で闇を圧縮することが可能で、それを利用する。

この圧縮した直後の攻撃を受けた者は自我を持っているか魂が存在するか、つまりは生きている者ならば問答無用で体を消滅させられ、冥界へ送られる。

ちなみにヘルヘイム自体が冥界と繋がっており、(闇を断つには冥界ほ滅ぼすしかないが、あまりに非効率かつ不可能である)このため今のように圧縮攻撃の直後再び体を闇で覆うことを可能にしている。


「ド畜生が!!」


地中、そして空気中の鉄分を利用し、スチールは即席の砲台を作り、弾を装填する。


「喰らえゴラァ!!」


ドォン!と轟音が響き砲弾が弧を描いて闇に吸い込まれるが、当たった感じがない。

ヘルヘイムは自らを隠す闇の中で的確に砲弾

避けたのだが、彼らからはそれがわかるはずもない。


「当たってねぇ畜生!」


お返しと言わんばかりにヘルヘイムは収束器官に闇を圧縮し、放つ。


「死ぬ!無理!うおおおおぁぁあ!!!」


砲台を操作して自分を弾き飛ばしなんとか回避。とても心臓に悪い。


「ぐえっ、お前ら生きてっか!?」


「生きてるよッ!お前がちょっかいかける時から予め退避してて正解だったぜ!…で、どうすんだアレ……」


姿が見えたと思えば直後の攻撃は即死モノ、かと言って闇に包まれた状態では攻撃が通らない。


「1つ案があるわ…」


彼方が口を開いた。


「あの龍が額を光らせる時、つまり姿が見える時に攻撃を叩き込むっていうのはどう?とてつもないリスクを孕んでるけど…」


「出来ればいいんですけど…」


舞が頭を抱える。

ヘルヘイムと旧日本軍では絶望的に相性が悪い。

なぜなら旧日本軍には飛行可能な者が少なく、ヘルヘイムは常に空を飛んでいるからだ。

さらにヘルヘイムは長大な体でありながら飛来物を躱すという芸当もこなすため、まず見えるところからの遠距離攻撃は当てられないと考える方が妥当。

だが奴もそれを危惧しているのか、谷部にその身を浮かしている。


悩んでいるうちに別方向に向けヘルヘイムが収束器官に闇を溜める。


「とりまやる!!ぶちかませッ!!」


岩の槍と火球と毒矢が風に乗ってヘルヘイムへ迫り、当たる。


ギュイィィイインン!??


明らか被弾ボイスじみた鳴き声をあげこちらを向くが、さらに別方向から顎に攻撃が当たる。

他の兵士達が攻撃に転じたのだ。


「おし!これなら行ける…があのヤローほんとにブレス…だけか?」


調子づいたところで彼方達が顔面蒼白になる。

ブレスだけが攻撃手段?そんなはずは決してない。

ブレスにだけ気を取られすぎて気づくのが遅れた。当たり前の事に。


攻撃手段が1通りの巨大生物は存在するか?否。その手のモンスターは全身を駆使するに決まっている。


ヘルヘイムは落ちるように降下、ここで弱ったと判断するか様子がおかしいと判断するかで生死が分かれた。

ヘルヘイムは落ちながら巨翼に圧縮した闇を転送していた。

その翼を落下速度を乗せて叩きつけたのだ。

例に漏れず下敷きになった者は消滅し、ヘルヘイムは再び闇に包まれる。


次第に旧日本軍は統率が取れなくなり、逃げ出す者も現れた。

後方に逃げる、つまりこちら側に来る。


「バッカ!敵に背向けんな!死と同義だろが!」


案の定ヘルヘイムは逃げ出す者に敏感に反応して回り込み闇に飲み込んで動かなくなる。

何とか闇に飲まれることは免れたがすぐ近くに巨大な闇があり、正直圧巻。


「攻撃するぞ…」


火鉈が声を絞り出す。

4人が同意し、各々の遠距離攻撃を彼方の風で飛ばす。


ギュォォォアアアンンン!??


闇の中から鳴き声が聞こえた。


「当たった!?」


だが悠長にしていられない。ヘルヘイムは反撃するべく闇を圧縮しブレスの構えを取る。

だいたい見て分かってきたが、奴は狙う方向へ視線を向ける癖がある。つまり闇を圧縮した際は目を見れば避けられる確率は格段に上がる。


そうして避けた後、ヘルヘイムの方を見ると違和感を感じる。

口元が点々と赤黒い。模様にしては不自然だし小さいが。

果たしてその下には…。


「うッ…!お゛ぇ゛っ!!」


見てしまった舞が耐えられず吐いてしまった。

そこにあったのは血の池と死体。バラバラにされ、潰され、切り裂かれ臓物を曝け出した無残な死体。


「こいつ…食いやがった…!」


捕食。

闇魔龍ヘルヘイムも生き物である。何ら不思議はない。

ヘルヘイムに背を向けて逃げ出した者達はヘルヘイムの闇に包まれ視界を奪われた後巨体による攻撃で変身を解かれ、その身を餌食にされたのだろう。

当のヘルヘイムは捕食に夢中で横からの火鉈達の攻撃に気づかず当たったのだ。


だから何だ?状況は悪いままだ。辛うじて当てたところも元々付いていなかったのかもしれないが無傷だ。


またも体を闇に包んだヘルヘイムは火鉈達には目もくれずより人の多い前線の方に行った。


このままではどれだけ希望的に見ても全滅。


「なんとか…ならないのか…?」


声が漏れる。


「この運命を変えられる力が…欲しい…」


噛み締めていた下唇から血が流れていた。



どうも!どらっごです!


魔龍の出番が来たぞぉぉ!!

巨体すぎて一回の攻撃でどれぐらい吹き飛ぶのかイメージもろくに出来ないんですけどとにかく大打撃ということは確実です!


…個人的に【黄泉送り】かなりエグい能力だと思うんですけどみなさんはどう思います?


ではでは、また。


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