自分の仕事
エルダーとセシルが会話していると、急にジルが目を覚ます。先ほどまで死んだように眠っていたはずなのに、彼は即座に起き上がり、剣を手に取った。その様子にセシルも警戒を始めた。セシルはエルダーに目配せをし、まだ眠っているアメリアを起こさせた。
「囲まれている……、またあの男もいそうだ」
「分かるのですか……?」
「逆に聞くが分からないのか?」
セシルはグッと奥歯を噛み締める。ジルは背中を合わせたセシルがいることを感じながら、外へ出た。そこには黒衣の男が待ち構えていたかのように立っている。
「出迎えとは律儀だな」
「こちらに気づかれるとは、間抜けは誰か……」
「自分の可能性は考えないんだな。俺は、忘れないぞ」
ジルは黒衣の男の気を引くように飛び掛かる。それが合図かのように隠れていた刺客が姿を現した。ジルは彼らに目もくれず、セシルが対応するしかない状況を作りだす。ジルが振るった剣は、岩をも割るほどの力が掛かっていた。
「怒りか? らしくないな」
「お前に言われたくはない……!」
さらに力を掛けて黒衣の男を押しつぶす。両手の短い剣で受け止められるが、力はジルの方が勝っている。しかし、黒衣の男は力を流すように身体を傾け、衝撃をずらす。すぐさまジルの追撃が襲った。剣を振り回し、その重みが何度も与えられた。重量によって加速した剣を黒衣の男が受け止めたが、腕の骨が折れる。黒衣の男は攻撃を止めて距離を取った。
「逃げるのか」
「俺は戦士じゃないんでね……。お前こそ、後ろは大丈夫なのか?」
ジルが後ろを振り返ると、セシルに任せた他の刺客の刃が、今にも彼女の喉を貫きそうになっていた。小競り合いをしている刺客の脇腹に蹴りを入れて引き離し、崩れた体制のところに剣を振り降ろす。この最後の一人に手こずっていたようで、他の者はセシルが倒していた。あの男はどこかと振り返ると、そこにはもう誰もいなかった。
「折るべきは足だったな」
「すみません……私が足を引っ張りました」
「なんだ、足に掛けてるのか? つまらん冗談だな」
「……」
いつもならすぐに否定する言葉が飛んできそうだが、また敗北したセシルは静かに地面を見つめている。家の中からは、そっとアメリアが顔を覗かせていた。
「ま、アメリアは護れたらしい。なら、護衛の仕事は果たしたな」
「そんな慰めを」
「俺は、あの男以外ほとんど手を出していないがな。刺客を止めたのは、お前だろ」
セシルがまだ受け入れられずにいると、アメリアが家から飛び出し、セシルに抱きついた。
「アメリア様、まだ敵がいるかもしれません。お隠れを」
「セシルが護ってくれたんだよ。あの人、自分の仇討ちに夢中だったんだから」
「否定はしきれない。それで言えば俺はまた逃げられた」
いやいやながら、ジルはそう言葉にする。そこでやっとセシルの表情も少し綻ぶ。




