吹雪の夜
山を登り始めてすぐに、アメリアの息が上がっていた。岩場も多くなり、馬の扱いに慣れていなければ、苦労する道だった。
「休むか?」
「平気……!!」
そう啖呵を切るも、その手元はすでに危うい。馬の方も辟易としていた。
ジルは自分の馬を降り、アメリアの馬の手綱を取った。
「落っこちるなよ」
セシルには先に行けと顎で差し、進ませる。アメリアはしっかりと鞍に掴まり、ジルに操作を任せた。岩場を越えれば、まだマシになる。
山越えは数日掛かる道のりだった。山の中腹に到着した頃、日は沈んでいく。空は雲に覆われていた。
「……これは荒れるな」
「雪が降りそうですか」
「近くに小屋がないか見てくる。ちょっと待ってろ」
二人にキャンプの準備を任せ、ジルは周囲を探索した。山の中腹あたりとはいえ、既に高い木はなく、背の低い植物が稀に雪の間から芽を出している。
しばらく歩き回ったが、山小屋らしき建物はなく、夜を越えられそうな場所もなかった。せめて早く雪が降ってくれれば、かまくらを作って凌げるかもしれないが、吹雪いてくればそれも難しい。せめて火種になりそうな乾いた木の枝をいくつか拾って帰った。
「どうでした?」
すでに準備を終えたセシルが不安げに聞く。アメリアも食事の支度を手伝っていた。山小屋は見つけられなかったと報告する。
「そうですか……、ではやはり耐えるしか」
「藁はある。積もった雪で今のうちに壁を作ろう。少しは凌げるだろう」
食事の用意を任せ、ジルとセシルは溶けていない雪をかき集める。それを固め、火を囲うようにドームにした。
日は沈みながら雲に隠れ、徐々に明かりを消していく。遂に雪が降り始めた。馬も凍え始め、せめて風だけでも凌げるように、雪の壁の中へ移動させる。屋根はないが、それでも幾分かマシだった。馬にも食事を与え、ジルたちも温かいスープを飲む。冷え切った身体には、染み渡った。
「寝るなよ、今日は。明日は山小屋を探そう、そこで休んでからまた出発すればいい」
「セシル、引っ付いてようね……」
雪の壁に背を預け、藁を被って吹雪を凌ぐ。火を絶やさぬように風から守り、枝を放り込んでいく。
長い夜だった。強い風が吹いて身体は震え、手先の感覚はなくなっていく。指は動かなくなれば、火に当てて熱を取り戻す。セシルとアメリアは互いの熱で寒さを凌ぎつつも、震えている。
そして明けた朝、吹雪も止んでいた。辛い夜を越えたため、疲労で今にも眠ってしまいそうな若い二人を立たせ、先に進んでいく。休むための山小屋を探しながら、また上へと登っていった。




