そこへ向かうは ー1ー
「どうしてこうなった……」
互いが互いを守ろうと躍起になるアルノーとマルリー。
そんな2人を宥めようと、慌てふためくペーシュ。
赤く眼を腫らしながら、気合い入れるぞとガッツポーズを取る塩内さん。
カオスな状況を楽しむセレナ・オルディナリウス。
そして、何もかもに置いてかれている私。
暗く薄気味悪い森の中、私たちがいるこの空間だけは周囲の空気と全くマッチしない。緊張感も何もない、突然の冒険が始まってしまった。
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数時間前、アルノーとマルリーは言い争っていた。
どちらが廃教会へ調査をしに行くか、という論争だった。彼らの場合は、相手にその役割を押し付けあっているのではなくむしろ自分が行くから、という主張をし合っているのだけれど。
「私が行きますから、お兄様は休んでいてくださいませ!」
「あそこは危険すぎる。それに何が起こるかわからない以上、マルリーにはできる限り安全な場所にいてほしい」
こんな感じのやりとりをずーっと続けていた。
始めの方は私も「互いが互いをこんなにも想い合っているなんて感動的!」と考えていたけれど、流石に20分以上も続けば「もう一緒に行かない?」と思うようになってしまった。
そして当然のことながら、こんなにも騒いでいれば巡回に来た教師にすぐに聞きつけられてしまい、私たちは説教を受けることになってしまった。
私とマルリーは『できるだけ部屋から出ないこと』という決まりを破ったことと、さらに男子生徒寮に忍び込むということもやらかしているので、見つかった瞬間から怒られた。
アルノーは最初こそ怒られなかったが、教師はすぐに彼の部屋の違和感に気がつき、そして床に落ちたロープを見つけ、アルノーが寮の外へ抜け出していたことを察して大激怒。
これが通常なら何かしらの罰則が科されるどころか、下手をすれば処分とまでいくところだった。
けれど今の学園は非常事態。
一人の教員による厳重注意のみで私たちは解放された。
説教が終わって部屋へ戻れと言われた私たちは、大人しく女子生徒寮まで戻って来たがそこでマルリーがポツリと呟いた。
「今夜、行くしかないわね……」
「え、?!行くってアルノー様が言っていた廃教会にですか?!」
「そうよ!そこ以外どこに行くっていうの?教師に見つかってしまった以上、急がないと何か対策を練られそうだわ。今しかないのよ!」
「いやいやいや!危ないですって!いつものマルリーならもっと慎重に動くじゃないですか!だいたい、何で2人ともその廃教会にこだわるんです?」
「お兄様が怪しいって言ってたからよ!言っておくけど、あなたはここにいなさいよ。私一人で行くから」
「何言ってるんですか?!マルリーが一人で行くほうがもっと危ないですって!」
「フン、あなたは知らないでしょうけど、私武器があればそこそこ戦えるのよ」
「その武器とやらを持ってませんよね??」
「大丈夫よ、模擬訓練室から拝借するから」
どこが大丈夫なんだ……と心の中でツッコミを入れるが、それは言葉に出さなかった。私が黙るとマルリーは寮を抜け出すルートをブツブツと呟きだす。
「お二人とも、何かありましたか……?」
「あ、ペーシュ……」
マルリーと口論していたら、いつの間にかペーシュが来ていた。彼女は心配そうな表情で私たちを見ている。
どうやら、今日も自分の部屋を抜け出していたというペーシュは、いつも通り私とマルリーの部屋を訪ねていたらしいのだが、どちらも部屋にいなかったため驚いたと言う。
寮内を探し回っていたら、私達の声が聞こえてここに来たらしい。
「その、お二人の言い争う声が聞こえたので、まさかとは思ったのですが喧嘩でもされていたらと……」
「全然そんなんじゃないの!ただちょっとマルリーとこの状況についてどうしようかと話し合っていて……」
「それに、ハイキョウカイ?とか武器とか聞こえましたが、一体どんなお話を?」
「「……………………」」
私はマルリーの方をチラリと見る。
すると彼女も私の方を見ていた。
「どうするのよ!?ペーシュに聞かれちゃったじゃない!」
「何とかいい感じに誤魔化すしか……」
『やぁ、随分楽しそうだね』
今度は後方から別の声が聞こえる。
もう、次から次へと何なの?しかもこの声は私の嫌いな人の声じゃない。
「…………何であなたがここに?」
後ろを振り返れば、やはりセレナ・オルディナリウスがそこにいた。
「ここ女子生徒寮ですけど」
「男子生徒寮に忍び込んだ君にそんな注意をされるなんてね」
…………何でこの人もう知っているの?
まだそんなに時間は経っていないはずなのに。
どれだけ口が軽いのかしらあの教師……。それとも、この状況下ではこの学園で起こったことは全てセレナの耳に入るようにでもなっているのだろうか。
心の中で舌打ちをする。
この際ペーシュに聞かれるのは全然いいけど、セレナはとっても面倒くさそう。
「随分面白い話をしていたようだね。できれば僕にも聞かせてくれないかい?」
「いえ、あなたがそんなに気にされるような話ではないです」
「僕たちの協力を断ったカプール第二王子の話だろう?じゃあ、とっても気になるな」
予約掲載日を間違えておりました。
大変申し訳ございません。




