表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/98

彼の憶測 ー2ー

「紫魔法……?」

「あくまで、同じ使い手としての感です」


 紫魔法は相手の弱体化に秀でた魔法だ。もし、これまでの症状と紫魔法を照らし合わせて考えてみるとするなら……首が痛いとか息が苦しいとか、熱いとかも魔法の仕業だったってこと?

 ゲームであった効果なら、毒とかになるのかな。


 でも毒って一定ターン毎に少量のダメージが入るくらいだったし、そんな症状とかでるものなのかな。


 いやでも本当に紫魔法のせいだったとして、魔法にする必要があるのだろうか?魔法で毒を使うなら、実際に毒を使ったほうが効率的だろう。例えばこの学園の生徒を無差別に狙ったのだとしたら、食堂の食事に毒を混ぜるとか……。

 

 確かに魔法の方が痕跡は残らないのかもしれないけど、術者は精神が擦り切れるだろう。マルリーが紫魔法が難しいと言っていたのは、相手に掛けたい魔法をイメージするのが大変だからと言っていた。


(それに、みんながずっと苦しんでいると言うことは、術者はその魔法を使い続けているということになる)


 そんなの無理だ。

 こんな大人数、そして威力。ミラより無茶をしている。


「信じられないといった顔ですね」

「それは、まぁ……」

「私も、始めは自分で考えておきながらあり得ないと思いました。ですが、それだけでこの説を切り捨てるには少々不可解な点が多くて」

「不可解な点ですか?」

「まず、これが病というにはあまりにも“体”に何もなさすぎる点です」


 からだには何もない……確か、ペーシュもそのようなことを言っていた。でもそれが病を否定する理由なの?


「そして次に、夢を見ること」

「夢……?」

「そのように訴える人が最近現れました。だいぶ辛いようで、あまり会話ができなくなっているのですが、おおよそ皆同じことを言っています。恐らく、同じまたは似たような夢を見ているのかもしれません」

「そ、それってどんな夢なんでしょうか?」

「……………………、…………」


 ハルメートは憶測を語ることも、“わからない”とも言わなかった。

 ただじっと黙って、静かにどこかを見つめているだけだった。その横顔から、私がわかることは何もない。


「………………?」

「いや、失礼……。ひとまず私が言いたいことは、他者から見て本人の言動以外に異常性が見られないことがおかしいということです。未知の病が流行しているにしても、アメシティオーズ学園以外に同じような症状を訴える者はいないようですので」


 救護棟にいる医者たちは、一番始めの患者が来たときその原因を追求しようと躍起になって調べ上げたらしい。もちろん新種の病気である可能性も考慮に入れられたが、それでも彼らから見て患者の体は()()()()()()()()()()

 体がおかしいと訴えるのは、その体の持ち主だけだ。


 だからハルメートは、魔法による仕業だと考えているのだろうか……?

 

「そしたら、この学園が誰かに狙われているということですか?」

「その場合、犯人は複数人の可能性が高いでしょう。その方が人によって訴える内容や、重症度が違うのも頷けます」

「そんな……どうして」

「この学園は各国の有力貴族や王太子までもが通っていますから、不思議ではありません。しかし、それにしては些か遠回りな手段を取ったなと思っています」


 彼はまだ自分の仮説を信じ切れていない。病が違うなら次に考えられるのは魔法だ、というある意味単純な考察でもある。多分彼の中では、もう少し思い当たることがあって魔法という可能性を疑っているんだろうけど……それは私にはわからない。


「仮に紫魔法だとして、このようなことが可能なんですか?私が知っている紫魔能といえば、相手を鈍足にしたり、目をくらませたり、眠らせたりすることくらいですけど……」

「そうですね、大抵はその種の魔法が多く使われます。それが何故かわかりますか?」

「え、?いや、わかりません……」

「それは術者にとって、その状態が想像しやすいからです。先ほど挙げてくれた例の中では、眠らせる魔法が一番簡単です。人は丸一日寝ずにいれば、自然と眠くなります。“眠い”という感覚は誰にでも経験があるから簡単なのです」


 そうなんだ……。魔法を使うことに対してそこまで考えていたことはなかったけど、魔法の種類によってイメージしやすいとかしにくいとかあるんだ。

 私はゲームで見た通りのイメージでやっていたけど、それでも概ね成功していた。だからそこまで手こずったことはないけど、何も知らない状態で相手に魔法を掛けるってことは確かに難しいのかもしれない。


「そうすると、首を痛くするとか身体を熱く感じさせるとかそういった魔法があるのですか?」

「いえ、そのような魔法が存在するというよりは“そういう風に思わせる”と表現した方が近いのかもしれません。実際に首を痛めさせるというよりは、痛いように錯覚させると言ったほうが正しいですね」

「それってつまり……、紫魔法は、相手を錯覚させる魔法ということですか?」

「厳密には違うのですが、そう考えてもらってもいいです」


 え、それじゃあゲームで相手を弱らせていたとき、実際に魔法でそうしていたのではなくて、敵が勝手に勘違いしていただけだったってこと……?!


 なんだかその事実に少しだけショックを受ける。

 じゃあ紫魔法って何?催眠術みたいな感じなの?

 自分の中で、紫魔法のティアが下がったような気がする。絶対に言わないけど、口には出さないけど。


「紫魔法を発動させ、尚且つその効果を相手に与えるならば、術者はより具体的な魔法のイメージがなければなりません。手っ取り早いのはやはり、自分にとって経験のあるものでしょう」

「…………」

「どうしました?なにやら項垂れているようですが」

「あ、いえ!何でもありません!」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ