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一変した日常 ー4ー

—————————————————————————————


『調査報告書』


• ーーーー年 4月 


 オルデナ帝国領ーー地方で、微量の魔力を検知。

 現地では目立った点は観測されず、特に問題はなし。


[緊急度 E]



• ーーーー年 6月 


 アメシティーオーズ学園の簡易保護魔法の結界内にて、魔物の出現が見られる事項が発生。また、その魔物は本来ならオルデナ帝国領に生息しない魔物であったと報告されている。

 学園長の要請により、調査隊を派遣。


【調査隊の報告】

 魔物と遭遇した生徒の証言より現地を調査したが、魔物の姿は確認できず。一生徒が放ったと見られる魔法の証跡は発見したが周辺には魔物の死体はなく、焼け落ちた大木だけがあったとのこと。

 また学園長より周辺の捜索を依頼されたが、同じく発見には至っていない。引き続き調査を継続する。


[緊急度 C]


• ーーーー年 7月 


 6月の魔物襲撃の件を受けて以来、アメシティーオーズ学園の管轄外である森周辺で魔物の目撃情報アリ。目撃された魔物は、同じくオルデナ帝国領には生息しない魔物である。

【現在発見されている魔物】

 サラヴァン王国領 セイレム。

 ジャナサール王国領 サンドワーム。

 ヴェスペリア王国領 カゲボロ。

 アルスタン王国領 ホワイトウルフ。


 しかしながら、調査隊による現地視察では魔物の姿は発見されず。怪我人はナシ。

 引き続き調査を継続する。


[緊急度 B]


・ ーーーー年 9月 


 今年の4月に感知された魔力が増加しているとの報告があり。

 依然として影響は見られないため、このまま経過を観察する。


[緊急度 D]


・ ーーーー年 11月

 

 アメシティーオーズ学園内で、謎の病が流行しているとの報告あり。症状は大まかに三つに分かれ、原因・治療法は判明していないとのこと。


[緊急度 E]



・ 同上


 観測された魔力が、著しく増加しているとの報告があり。

 派遣された調査隊のうち、ーーー部隊が消息不明となる。

 皇室からの命令により、全ての調査を一時中断し最優先で取り掛かるようにとのこと。



[緊急度 A]


———————————————————————————




「これ…………、」


 セレナから手渡された報告書を見て愕然とする。

 11月に入って、2つの報告が上がっているけど……学園からの要請は緊急度が一番下にされている。


(病に罹っているのは何も帝国の貴族だけじゃないのよ!?それなのに後回しにするなんて……!)


 これではその病に罹ったアルノーはどうなるの?




 でも、もう一つ気になることがある。

 7月に報告されている、目撃された魔物の一覧だ。

 どれもこれも、ゲームの冒険編に出てくる魔物ばかり……。

 特にこの地方の名前は、攻略対象の故郷の名前ではないか。


 この世界に来てからわかったことだけど、何もゲームに出てくる名前が全てではなかった。ペーシュの国の名前だって教えてもらって初めて知ることができたから。


「一体、何が起こってるんだろうね」


 セレナが不意に呟いた。

 思わず彼の横顔を見つめる。


 彼の顔色は先ほどより悪くなっている気がする。それに額には汗が浮かんでいるし、もしかしてだけど、セレナも体調が悪いんじゃない?


 彼は私の視線に気が付いたようで、静かに笑う。

 こんなときにまで笑っていてどうするの?!


「ねえ、本当にいいの?皇室がこの件を後回しにしていたら、あなただって危険なんじゃ……」

「心配してくれるのは嬉しいんだけど、僕のは他の人とは少し違うみたいなんだ。なんて言ったらいいかな……たまに胸が貫かれるように痛むことがあるんだよ」


 胸って、それだいぶ危ない症状じゃない?

 でも確かに、私の知っている症状ではないみたい。

 だからといって、無視してもいいことじゃないけど……。


「君は、これが本当に病によるものだと思う?」

「そ、そんなの私にはわかりません。だからちゃんと調べたほうが良いって、」

「一部の生徒はね、幻聴も聞こえるんだって。その声を聞いていると赦してくれって懇願したくなるそうだよ」

「なに、それ……」


 セレナは目を細める。

 けれども何も言わず、ただ私のことを見つめるだけだ。

 その視線が私には意味深に思えて、少しだけたじろぐ。


 しかしそれは一瞬だけで、また彼はニコリと笑うのだ。

 

「詳しい話は、ハルメート・シュルビア卿から聞くといいよ。僕のこの憶測も、彼から聞いた話なんだ」


 ハルメート——攻略対象の1人でありながら、ルナのことを疑っていた人。彼が何かを知っているって?


「彼は、今どこに?」

「救護棟にいない生徒は、みんな寮にいるはずさ。彼もまだそこにいるんじゃないかな」


 ということは、普段は入らない男子生徒用の寮に向かわなくてはならない。多分非常事態だからバレないとは思うけど、通常なら罰則になるだろうなとか、関係のないことが頭の中でよぎった。


「不安なら僕も一緒に行ってあげようか?」

「それはいいです。それより、あなたも休んだほうがいいと思います。先ほどより顔色が悪くなっているので」


 セレナのことは苦手だけど、苦しんでいて欲しいわけじゃないから。私が彼のことを好きになれないのは多分、根本的な理由。根っからの部分で、彼のことを信じることがどうしてもできないのだ。


 でも、今こうして顔色悪くしている姿を見ていい気味だとか感じるわけでもない。そのくらいには、彼のことを嫌いでもないようだ。

 

 とにかく、今はハルメートに会いに行かなければ。

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