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一変した日常 ー3ー

 


 校舎の中で出会うのは、教師のうちの誰かが良かった。

 間違っても、セレナ・オルディナリウスとかいう人には出会いたくなかった。





 ペーシュと別れてから私はアメシティーオーズ学園の校舎内を歩き回った。単純に目が覚めましたって伝えたいことと、ルナのことやよくわからない病のことなどについて聞きたかったから。

 

 それなのに誰も見つけることができなかった。

 生徒がいないのは仕方がない。

 でも教師もいないのはどうしてだろう。


 各教室、職員室、保健室、中庭……出来限り探してみたけど、見つからない。そうして、いろいろ歩き回ってようやく見つけた人影がセレナだったのだ。


 彼は私を見つけるなり「やぁ、目が覚めたんだね」と軽々しく話しかけてくる。その態度からは、心配の“し”の字も感じられない。


(だからといってこの人から本気で心配されたいわけじゃないけど……)


 相変わらず飄々とした態度をとっているが、よく見ると顔は少しやつれているように見える。流石にこんな事態じゃ彼も余裕ではいられないのだろう。

 一応この国の皇太子だし………………って、この一大事に何でこの人はまだここにいるの?


「ここで何をしているんですか?」

「うーん……何をしているかと聞かれたら難しいね。僕も何をしたらいいかわからないから」


 セレナはニコリと笑いながらそう返した。

 その笑顔で胡散臭さが倍増するが、どうやら彼も事の収拾に頭を悩ませているらしい。

 どこまで話してくれるかはわからないけど、彼から話を聞いてみてもいいのかもしれない。


「友人から今の状況を聞きました。どうやら、学園が大変なことになってるそうですね」

「その大変なことの中に君の事件も入ってるけど、まぁもっと大きなことが起こっているのもそうだね」

「じゃあまずは私のことから聞きます。ルナさんってどうなりました?」

「……………………」


 セレナはじっと私のことを見つめてくる。

 何、その沈黙は……?まさか……、


「君は彼女のことをどう思っているの?冤罪をかけられた挙句、腹部を刺されて一時は生死を彷徨ったんだから相当恨んでるんじゃない?」

「そ、それは……確かに怒ってないっていったら嘘にはなりますけど、それとは別に彼女から聞きたいことがあるんです。だから教えて下さい、ルナさんはどうしているんですか?」

「安心してよ、まだ刑が下ったわけじゃない。けれど、何かわかったわけでもない。事情聴取しようとしたところに変な病が流行っちゃったからね。今はそっちで手一杯なんだ」

「だったら彼女に会うことはできますか?」

「会うことはできても、話をするのは難しいだろうね」

「ど、どうして……?」


 セレナは少しだけ目線を横に流すと、小さく溜息を吐いた。


「彼女は今、まさにその原因不明な病魔に侵されて生死を彷徨っている。……彷徨っているように見えるっていう方が正しいかな。とにかく会話ができるような状態じゃない」

「そんな!それじゃあジ、ジークさんは?!」

「彼の方は何ともない。君に対して、毎日懺悔しているよ」


 塩内さんまで病気に罹ってしまったんじゃないかと思い、慌てて容態を確認したがどうやら彼は平気なようだ。

 少しだけホッとしつつも、先ほどのルナの件で“生死を彷徨っているように見える”って言っていたけど、それはどういうことなんだろうか。


「もうね、本当に疲れたよ。君が倒れてからは公爵がずっーと訴えているし、魔物の件も、この病気の件も、とにかく大変で……この状況だと、君との婚約の話も全然進まなくてさ」


 その話はどうでもいい。

 というか、人が眠っている間に進めようとするな。


「ルナとは話せなくても、ジークさんとは会っても大丈夫なんですよね?彼は今どこにいますか?もしかして、どこか違う場所に……」

「彼はまだこの学園にいるよ。学園長が中々2人の身柄を引き渡してくれなくてね。調査するにも、刑を下すにも、まずは皇室で預かるって言ってるのにさ」


 良かった……。

 ということは、学園長に頼めば彼と合わせてくれるかもしれない。そしたら、どうして私のことを陥れようとしたのか、ルナと何を話したのかも聞き出さなくちゃ。


「一先ず、教えて頂きありがとうございました。それでは」

「え、まさかこのまま僕を置いていくの?」

「はい、もう聞きたいことは聞けたので、後は学園長に聞いてみます」

「学園長こそ、今一番忙しくて君の相手なんかしていられないんじゃないかな。現に今、彼は学園にいないし」


 学園長がいないって?この緊急事態の中、一体どうして?


「彼はね、僕の父上……つまりオルデナ帝国皇帝に会いに行ってるんだよ。大方、調査隊が引き上げられたのが納得いってないんだろうね」

「……?どういうことですか?」

「学園長は、前から皇室に協力要請をだしていてね。ほら、君も憶えているだろう?魔物襲撃事件」


 随分と懐かしい事件を出してきた。そういえば、あれからその話がどう解決したのかとか全く考えていなかった。あれ、でもそういえば……夏休みに公爵家に行ったとき少しだけ話題に出ていた気がする。

 確か、他の場所でも魔物の目撃情報が上がっていたとかなんとか……ってことは、もしかしてこの件ってまだ解決してなかったの?


「そして今回の原因不明な病が流行した件。これについても要請が出されたけど、皇室は断ったんだ」

「どうしてですか?これも一大事じゃないですか?!」

「そうだね。でも、あっちの方も重大な問題に直面しているようでさ」


 あっちって……あんたも皇室側でしょう?

 それなのに、そんな他人事みたいに言うなんて。


 その発言に私は眉を顰めるが、セレナはそんな私には気が付いていないようで、自分の懐から何かの紙を取り出すとそのままそれを私に見せてくる。


「なんですか……これ」

 

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