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強引な断罪 ー4ー

 

 この中でルナに対して一番怒りを感じているのは、アルノーなのかもしれない。彼の怒りは、私が冤罪で糾弾されているからーーというだけではないようだ。


「何かあったんですか?」


 気になってしまったので、声を抑えて尋ねてみる。

 アルノーは私のことを見ると、眉を下げて困った顔をしながら事情を説明してくれた。


「実は、僕のペンダントが前から行方不明でね。状況的にも、誰かが持ち出した可能性が高いんだ」

「え?!」

「ルナだっていう確実な証拠は無いけれど、そもそも僕のペンダントのことを知っている人は限られている。君やペーシュがそんなことするはずないしね」


 それでルナを疑っているんだ。

 ペンダントが無くなっていたなんて、そんなの知らなかった。マルリーにも話してはいなかったのだろうか。

 ちょっとくらい相談してくれても良かったのに……。


「アルノーはともかく……どうしてハルメートまでそんな目で私を見るの?!私じゃなくてミラに敵意を向けなさいよ!そして私を守りなさい!私のことが好きなんでしょ?!」

「なぜそう考えているのか、甚だ疑問ですね」

「どうしてよ?!私にブレスレットをくれたじゃない!」

「あぁ、これですか」


 ハルメートは左腕を少しだけまくり、自身の手首をあらわにした。そこには確かにブレスレットが付けられている。

 ルナはそれを目撃すると、信じられないというように目を大きく見開いた。


「私の大切なブレスレットです。にも関わらずあなたが欲しい欲しいと煩いので、偽物を作って渡しただけです。お揃いみたいになるので本当は嫌だったんですけどね」

「ーーーーえ?じゃあ待ってよ……だからセレナは来なかったの?もしかして私、ちゃんとルート解放できてないのに、このイベントを強行しちゃったの?」


 ルナは俯きながらそう言葉を溢していたが、やがて周囲の視線に気がつくと混乱したように吼え出した。


「い、意味わかんない!意味わかんない!なんで私が責められてるの?!」

「置かれている状況は違うけれど、ミラだってそう思っていたさ。君はなんの罪もないミラを追い詰めようとしたんだから、」

「ハァ?!なんの罪もない?!ソイツが?アンタは知らないからそんなこと言えるのよ!ぁああ!もう終わりだ!今回もおしまい!」


 ルナの豹変ぶりに周囲の人たちは引いている。

 ルハーニよ、今こそ目覚めてくれないだろうか。


「どうやら彼女は、別次元の世界に住んでいるようですね。妄言もここまでくると恐ろしさを感じます」


 恐ろしいと言っているが、ハルメートの表情は冷ややかだ。


 しかし、この状況は一体どうやって収束付けるべきなのだろうか。ルナがあんな様子だと、彼女の話には信憑性がないと考えてもらえるかもしれない。けれどもそれは、私の無実が証明されたことにはならない。

 ルナが嫌がらせを受けていたのは事実だから、彼女の精神が壊れるまで私が彼女を追い詰めたのだと思われてしまうかもしれない。


「大丈夫だよ、ミラ。そんなに不安そうな顔をしなくても、僕が君の無実を証明して見せるから」

「あ、ありがとうございます」

「でも、その前に彼女との決着をつけないとね」


 アルノーはルナを見つめている。

 決着……と大げさな表現にはなってしまっているが、私は最初からルナときちんと話し合いたいだけだ。


 私はルナと方へ歩み寄る。


「ルナさん……私とお話をしてくれませんか?あなたに伝えたいこと、あなたから聞きたいことが沢山あるんです」

「……ない、…………がない」

「?、お願いですから、私の話を、」

「ミラ、ミラ・スカーレットレイクッ!ここでアンタを殺すっ!こ、これ以上、アンタの好き勝手にさせてたまるかァァァァアアア!」


 えらく高い声が金切るように聞こえるものだから、思わず耳を塞いでしまった。いや、塞ごうと思った。

 しなかったのは、ルナがこちらに突進しようとするのが見えたから。


 その彼女の手には何を持っていた?

 専用武器のスティック?

 それにしてはギラギラと光って——、


「あ……」




 

『キャャャャャャャャァァァア!!!!』



 私の身体は床に倒れた。

 遠くでアルノーが必死に何かを叫んでいる。

 手のひらが生暖かい。なんか濡れてる?

 というか、お腹が熱い……痛い。

 

 よくわからない、けど体からどんどん体温が抜け出していくのを感じる。このままだと、死ぬ?


 体を震わしながらルナのことを見上げる。

 ぼやけてよく見えないけど、彼女が私のことを静かに見下ろしているのだけはわかった。


 最初から最後まで、結局彼女のことがわからなかった。

 あなたが怯えているその原因、私にも教えて欲しかった。

 私はあなたの敵じゃないってことを、伝えたかった。

 

 重い瞼についに抗えなくなり、私の意識は暗い闇の中へ落ちていったーー。

 

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