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疑惑 ー2ー

 さすがに王女様から言われたことを無視する訳にもいかず、言われたとおり指定された場所に行くことにした。

 授業中、彼女のことを少しでも理解するためにいろいろ考えていたのだが、少し思い出したことがある。

 名前から薄々察していたが、マルリーはアルノー=イヴァン・カプールの妹だ。アルノールートの冒険編で、彼の故郷である王国に行ったときに少しだけ登場するキャラクター。

 まさかこの学園にいたとは……。


 マルリーは15才なのでルナと同じ一年生だ。

 属性魔法は紫魔法で、敵キャラにデバフをかけるのを得意とする。

 すっかり忘れていた私が言うことではないけど、見た目や性格を考えると普通に個性あるキャラクターだ。

 それなのに学園編では全く出てこなかったし、冒険編でもアルノールートを行かなければ出会えない。出会えたとしてもあまり出番はないが。

 そんなキャラが悪役令嬢役の私に何の用なのだろうか。


「よく来たわね!」


 よくぺーシュと魔法の練習をする場所でとりあえず話を聞いてみることにした。


「私が言いたいことは他でもないわ。あの平民の女狐のことよ」

「平民って……ルナさんのことですか?」

「あんな人の名前なんてどうでもいいわ!女狐よ女狐!」

「女狐って……」


 マルリーは両手を拳にして、ぶるぶると震わせている。


「わたくしの……わたくしのアルノーお兄様を誑かす女狐!許せませんわ!」


 …………わたくしのお兄様。


「お兄様にお会いするのは実に3年振りなのですが、久しぶりに会ったアルノーお兄様の様子に引っかかりを覚えたので、後を追ってみたらふてぶてしくお兄様に近づくあの女狐の姿を捉えました。しかもその女狐は恵まれた魔力をお持ちになりながら、全く勉学に励もうという姿勢もなく、委員会や部活動にも入らずに他国の高貴な殿方達にすり寄りに行くだけ!そんな方がお兄様のお相手なんて到底許せません!」

「3年振りなら、多少変化があっても仕方がないのでは?」

「貴方はお兄様の何を知っているの?お兄様はもっと勤勉な方で――ッ!」


 どうやら随分と鬱憤がたまっているみたい。

 そういえばアルノーと初めて会うためには、一定数の学力が必要だった。

 ストーリ上何となく課せられた必要条件なのかと思ったが、彼女にも交際を認めてもらうために必要なステータスだったのかもしれない。


 大体は聞き流しているが、マルリーの言い分も納得はできる。

 彼女は敬愛する自分の兄が、変な女に誑かされたいるように見えているのだろう。

 今日まで私が見たルナの行動も、事実として並べて考えると授業中以外の時間は様々な男性と一緒に過ごしているだけだ。


 でもゲームの流れとしてはそこまで間違ってもいないんだよね。

 私が目にしたルナは、別の意味で引っかかっている部分があるけど、ゲームとして考えると時期的には様々な攻略対象との出会いの季節だから、いろんな殿方と親交を深めているのは不思議なことではない。

 ある程度進行が進めば、本命一本に絞って攻略を進めていくから、三学期くらいになればいろいろな男をとっかえひっかえしているようには見えなくなる。

 でもその本命一本に絞るためにも自己研鑽をしなくてはいけないのに、それをしていないのだから他人から見てルナがだらしなく見えているのだろう。


「しかし、ルナさんは中間試験では学年トップでした。全く勉強をしていないとは限らないのでは?」

「それはそうかもしれないけど……って私それだけを気にしているんじゃないわ!一番許せないのはお兄様に言い寄っておきながら、他の殿方達にも甘いお顔をしているということよ!」

「(甘いお顔……)それならば、どちらかあるいは双方に忠告なさった方がいいのではないですか?」

「もうしたわ。でもお兄様はあまり相手にはしてくれず、めぎt…………ルナさんにいたっては無視をされました。本当に腹が立ちますわ!」


 心優しい性格といういかにもな主人公キャラが、人の話を無視するなんて……。

 …………前々からうっすら考えていたけど、もしかしてあのルナって――


「そこで貴方には私の作戦に協力してもらいますわ」

「……なんでですか?」

 

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