私の、ゲーム攻略法 (ルナ視点)
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ループを繰り返す中で、自分の中でいくつかの決定事項をつくった。
まず一つ目、モブにまで愛想を振り撒く必要はない。
はじめは攻略対象たちに話しかけようとすると、周りの人たちから身の程を弁えろとかくだらない説教をされるけど、これは一学期の間だけ。
悪役令嬢からの嫌がらせが始まると、みんな手のひら返したように私のことを可哀想だと言いだすから。そのときになったら、努力家で前向きなヒロインを演じ始めればいい。
二つ目、悪役令嬢は早期退場させないこと。
どんな嫌がらせを受けても、彼女が本気で命を狙ってくるまでは耐え忍ばなくてはならない。もし彼女をゲームのシナリオより早く断罪すると、私の寿命が縮んでしまう。
その襲撃は、何をしたって防ぐことができなかった。
三つ目、絶対に“ミラ”を信じないこと。
最近、ミラが人間らしくなるときがあった。嬉しそうにはしゃいでいたり、私と会話を試みようとしたりすることがあったのだ。それに油断して心を開こうとすると、ミラはまた人形みたいに無表情になって私に危害を加えてくる。
転生、だとか言ってくるからもしかしてって思ったのに……。
この三つのルールは、言わば自分で考えた自分のためによるものだった。必要以上に精神を割かないために、危機を増やさないために、絶望しないために。
…………けれど、結局最後は失敗してしまうから。
それなら今回はこのルールを一つだけ破ってみようと考えた。
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長い長い廊下を大股で歩いていく。
本当は大声を出してこの感情を発散させたいところだが、そんなことをしたら可憐なヒロインではなくなってしまう。
けれどやはり、わかってはいても腹の虫は治らない。
(――セレナ・オルディナリウス!私のことを好きになるどころか、関心すらないじゃない!一体どうして?!)
“The sound of the bell”に登場する5人目の攻略対象者。
オルデナ帝国の第一皇子、セレナ・オルディナリウス。
とある条件を達成しないと現れない隠しキャラ。
彼のルートを解放するためにいろいろと苦労したのに、肝心の彼は私に見向きもしない!それに腹が立つ!
――いや、それだけじゃない。
本来なら今頃私は、悪役令嬢から陰湿のいじめを受けていて、そしてそれに屈することなく勉学に励む私の姿に感銘を受けた周りの人たちから同情と称賛を浴びている頃なのに!
ようやくその流れが最近できたと思ったら、悪役のくせに変に味方を作って行動しているせいで、噂がデマなのではないかという話も出てきてる。
そのせいで最近は、セレナにアプローチをする度に周りから冷ややかな目をされるくらいだ。もうそういう目で見られることには慣れたけど、陰口を言われ続けるのはやっぱりイライラする。
しかし今はそれを気にしている暇はない。
一刻も早く、セレナを攻略しなければならないことには変わらないのだから。
「ミラの動きも警戒しなくちゃ……」
ミラ・スカーレットレイク――何を考えているかわからない、不気味なやつ!私が今辛い目に遭っているのも、全部全部アイツのせい!何故だかわからないけどセレナが彼女に関心を寄せていることも気に食わない。
もしかしてこれもルート修正ってやつなのかな。それならまだ許せるんだけど。
もともとセレナは、ルートさえ開放してしまえば他の攻略対象と同じく4月から出会えるキャラだ。
でもここをゲームではなく現実世界と考えると、セレナを登場させるのは本来不可能。なぜなら、セレナは全ルートを周回しなければ解放されないキャラクターだから。
しかも、ただ周回すればいいってわけじゃない。既存の攻略対象の好感度を学園編終了までに最大値まで上げる必要がある。
“The sound of the bell”では好感度の最大値が100とすると、恋人になれる好感度の値は70くらいに設定されている。残りは上げなくてもエンディングには関係のない値だ。
それに、第二章の冒険編でも続けて好感度を上げることができるため本来なら急いで上げる必要性はないのだが……。
学園編までに好感度を最大値まで上げたときだけそのキャラからもらえる特別なアイテムがあるのだ。
それが、セレナルートを解放するために必要なアイテム。
砂漠の国の王子様、ルハーニ・アザルからは、イヤリング。
魔法の国の王子様、アルノー・イヴァン=カプールからは、ペンダント。
夜の国の王子様、ハルメート・シュルビアからはブレスレット。
極寒の国の王子様、フランツ・ドゥルマからは……指輪。
それぞれ彼らの大切なものをヒロインに贈ってくれる。
ゲームなら周回の特典としてステータスやキーアイテムはそのまま引き継がれているけど、現実はそうはいかない。
学期試験とかは何度もやってるから答えを暗記してるし、魔法の使い方だって熟知してる。けど体力とかはいくら増やしても元に戻ってしまうから、鍛錬しても意味がない。
持っていたアイテムだって、時間が戻れば当たり前のように手元からなくなってる。だから、セレナルートを解放することは絶対にできないと思っていたのだ。
でも……、私は諦めなかった。
既存キャラを何度も攻略をして彼らのツボを熟知している私なら、セレナルートを解放することができるんじゃないかと考えた。その結果、やはり仮説は正しかったのだと確信した。
(アルノーが私を避けるようになったのは焦ったけど、一時期は私のこと本気で好きだったのは間違いないし……)
アルノーは馬に乗るとき、危ないという理由でいつもペンダントを外していた。そのときを見計らって、少しだけ“借りる“ことにしたのだ。
好感度メーターが目に見えるわけじゃないけど、あんなに私のことが好きだったのなら、多分MAXまで上げられていたたと思う。それなら彼のペンダントを一時期でも私のものにしてしまえば、条件は満たされるはず。そう思って行動したらやっぱり予想通りだった。
イレギュラーはあったけど、ここまで上手くいったんだからあとはセレナを仲間にするだけ。とにかく、セレナを攻略しないと。
多分、彼がいまミラのことを気にしているのはいろいろとルートが混ざっているから。これはボタンのかけ間違いのような些細なもの。ミラの本性がわかれば、次は私のことを気にし始めるはず。
一番の問題は時間。
多分私が無理やりセレナルートを選択してしまったから、きっと今回はいつもよりすぐに終わってしまうはず。
セレナルートには冒険編が存在しない。だって彼が学園でミラを倒し切ってしまうから。
「いっそのこと、無理やり彼を戦闘メンバーに加えちゃおうかな……」
そうだよ、逆手にとって考えてみよう。
国の一大事になったら、あの人だって動くだろう。
セレナはとにかくそういう人だったから。ヒロインと恋に落ちるまで、人ではなく国を第一に考える冷たい人。
だからあえてここでミラを刺激して、強制的に戦闘を発生させよう。なんだかあいつの動きも怪しいし、先手必勝だ。
極めて高いステータスを持ったメインキャラと、物理攻撃が誰よりも強い彼が加わればきっとミラも倒せるはず。
(何より学園編のミラはまだ弱いから……)
今回で、決着をつけてみせる。
この世界のラスボス、ミラ・スカーレットレイクに!




