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現状を打破する方法を考えろ ー2ー


「いい加減、私につきまとうのはやめてください」


 私の拒絶の言葉に、セレナがパチリと瞼を動かした。

 私の平穏な日常を取り戻すためには、もはや彼を退ける他ないのだ。


 それなのに目の前にいる相手は、いつものように笑っているだけだ。


「顔色が悪いね」

「誰かのせいで悩み事が増えたんです」

「うーん、いつもより冷たい対応だ」


 彼はメソメソと嘘泣きをしている。


「どうしてそんなに君は僕のことを嫌うんだろう?僕の何がそんなに気に食わない?」


 そういうところかな。

 というか態度全てが嫌いかなって言えたら、どんなに気持ちがスッキリすることだろうか。


「まず誠実性が欠けているところですかね。年齢詐称してますし、身分も詐称してますし……」

「本当のこと伝えて困るのは君のほうじゃない?僕の正体が今みんなに知られたら、余計面倒なことになると思うよ」


 よくもまぁ、そんなことが言えるものだ。

 わざわざ身分を偽ってまでアメシティーオーズ学園に編入してくるなんておかしすぎる。

 皇太子なんだから、権力を使えばもっと簡単にことを運ぶことだってできるはず。私のことを婚約者として据え置くことは、周りの人からは賛同が得られてないとかなんとか言っていたけどそれでも学園にまでくる必要はないはずだ。


 そうなると、彼にとっても何かしらの考えがあってこの学園に来たって考えられる。

 

「というより、なんでこの帝国の第一皇子なのにみんなあなたのこと知らないんですか?」

「城の人たちは知ってるよ?公の場にはいろんな事情があって出てなかったけど。あと、顔合わせしたことがある婚約候補者もいるね。この学園にいるから、お願いして黙ってもらってるけど」


 ……こんな人が皇太子でいいのかな。

 とにかく、本題に入ろう。

 

「私について、学園で広まっている噂をご存じですか?」

「もちろん知ってるよ、っていうかその話はこの前も聞いてなかったっけ?」

「そっちじゃありません。最近新たに私が言われてることです」

「なにそれ、どんな話?」


 妙に楽しそうにしているセレナは話の続きを促す。人が苦労しているっていうのに、なんで嬉しそうな顔をするのだろうか。この人も別ベクトルで性格が悪い。


 一先ず怒るのは後にして、事の顛末を説明する。

 セレナが全て悪いというわけではないのだが、やはりあらぬ疑いをかけられ変な噂が広まるようになったのは彼と関わり始めてからである。セレナの見た目は誰よりも目を引くから、彼がこちらに関心を持つだけで周りの人たちが勝手に嫉妬してくるのだ。

 こう考えると、彼のお相手となる婚約者は精神力の強い女性の方がいいのではないだろうか。それこそ彼の言う“気の強い人“の方がぴったりだと思うんだけど。だって、気弱な人だとすぐにメンタルがやられてしまいそうだから。


「へー、そのルナって子を君がいじめていることになってるんだ」


 面白いねと語尾につけていそうな彼の口調に、こめかみに青筋があらわになりそうになる。いやすでに浮かび上がっているのかもしれない。


「冗談、冗談。もちろん知ってるよ。こっちが聞いてもいないのに勝手に喋り出す人たちが多いからね」


 私が苛立っていることに気が付いたのか、セレナは私の話にこう答えた。


「ルナという人物も知ってるよ。平民でありながら多大な魔力量を持つ白魔術者。多くの人を瞬時に癒せるのだとしたら、彼女一人でどれほどの戦力になるだろうね」

「……なら、彼女はどうですか?私よりもよっぽど、」

「ダメダメ、あの子も僕が何も言ってないのに話しかけてくるような子だよ?たまに興味深い話をしてくるときがあるけど、基本的には会話ができない。一方的に話しかけてきて、勝手にどっか行く。たまに落ち着きがないときもあるし、何をそんなに焦ってるんだろうね?」

「具体的にどんなことを話しますか」

「…………結構政治的話題だったり、彼女の身の上話だったりかな。初めて会ったときは“ようやく会えた“とかなんとか言ってたけど、興味がないからそんなに覚えてないなぁ〜」


 “ようやく会えた“……か。

 

(もしかして、セレナ・オルディナリウスって“鐘”の隠しキャラとかだったりするのだろうか……)


 出会う前からセレナのことを知っていて、尚且つ彼に会いたいと考えていたのなら……セレナはゲーム内において何か特別な存在だったとしか考えられない。

 

「そんなにあの子のことが気になる?みんなが噂してるのもそうだし、君たちは何かしらの因縁があるのかな」

「……“私“にはありませんよ。それに、噂を流している人たちはあなたからアプローチを受けている私が気に食わなくて好き勝手話しているんでしょう」


 

 

 

 



「――君はそう思っているけど、彼女は違うかもしれないよ?」

「…………え、どういう意味ですか?」


 思わずセレナの顔を凝視してしまう。それでも彼は、いつものように微笑むだけだった。目の前の私が、あまりに滑稽で面白いとでも言いたげだ。


「ま、君がそういうなら、これからは人目が多いところでは話しかけたりしないよ」


 セレナは椅子から立ち上がりながらそう言った。


「出来れば今後一切私に近づかないでほしいんですが」

「あはは、それは少しばかり無理な話かなぁ。これから面白そうなことが起こりそうだしね」

 

 私の現状を面白いと言う彼の神経に腹が立つ。

 やっぱり、彼のことは到底好きになれそうにない。


「それしたらもう一つあなたに聞きたいことがあるんですがーーエアリス・ベイリーというご令嬢のことはご存知ですか?」


 

【お知らせ】

 投稿をしばらくお休みします。

 私生活が忙しくなったことに加え、話の構成をもう一度整えたいと考え、連載をお休みさせていただきます。次回投稿を楽しみにしてくださる方がおりましたら、今しばらくお待ちいただけると幸いです。

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