現状を打破する方法を考えろ ー1ー
自分にあらぬ疑いをかけられていることを知った私は、まずは周囲の信頼できる人に相談しようと考えた。
何かあったとき、私が無実だと訴えていたことを知っている人がいたほうが心強いと思ったからだ。
もちろん一番初めに相談したのは、ペーシュ達。
「許せないね。そんなことを言う人たちがいるなんて」
「この学園にも低俗な人っているのね」
「ミラ様、私たちはあなたの味方です!」
今や心からの友人であると考えている彼等を信じていなかったわけではないが、やはり噂を鵜呑みにしてくれなくて良かったと心の底から安堵する。
「確かに、前にあの人の教科書が破られているところを見たことがあるわ。ミラも覚えてるでしょう?だから、いやがらせ自体はあるのでしょうけど、どうして主犯がミラになるのかしら?」
「でも、ルナがミラを避けているのも事実だ。学園祭前はそれを利用して、僕に近づかないようにしようと考えたくらいだし……」
「そうなると、まるでルナ様のほうがミラ様を快く思っていないように感じられますね」
「ミラ、あなた彼女に何かした覚えはないの?会うたびに睨みつけてたとか」
「し、してないですよ!」
「あらそう?私はしてたわよ。彼女の本性がわかったあとは常にね」
マルリーの微笑に、アルノーが苦笑いをする。
「とにかくミラ、貴方は今後できるだけ私たちと共にいなさい。あと、たまにフラフラと一人でどこか行くことがあるけど、それは控えること。もし用事とかがあるなら、誰かと一緒に行くか、人目の多いところにいなさい」
「は、はいッ!」
彼女の言葉は、頼もしい。
そして同時に、私は彼女達より年上であるはずなのにこんなに世話になってしまって……不甲斐ない。
けれどそれも考えていても仕方のないことなので、今は彼等のアドバイス通りに生活しよう。出来るだけ人目の多いところにいて、何かあったときにアリバイを証明してもらうため、みんなの側に引っ付いていよう。
それに加えて、私は保健室の先生にもこのことを相談することにした。こういうことこそ、先生に相談して巻き込んでいくべきだ。
なぜ担任の先生に相談しなかったのかというと、もちろんはじめは自分のクラスの担任にでも相談しようかと思っていた。でも、その日がたまたま私の定期検診の日だったことに加え、いつもの救護棟の医者ではなく保健室の先生から検診を受けることになったので、ついでに保健室の先生に相談してみようと考えたからだった。
正直言って、担任よりも保健室の先生の方が何かと交流もあって信頼しているので、相談するのは彼の方が安心できる。
いつも通り救護棟の先生から受けている検診――と言っても、最近は問診のようなものだが――を受け終わると、保健室の先生が最近何か変わったことがないかと聞いてきた。
「最近、体調不良を訴える生徒が増えてきてねぇ……君は大丈夫そうかい?」
「あ、その……体調のこととは関係ないんですけど……ちょっと相談したいことが――」
――――――
――
「なるほどねぇ……」
先生はうーんと困ったように首を傾げた。
「すみません、こんなこと相談してしまって……」
「なんで君が謝るんだい?君は何も悪くない。それに僕たち教員にとっても、こういう話を早く相談してくれることはすごくありがたいことなんだ」
全く問題ないと笑ってくれる先生に、感謝の念が心の底から湧き上がった。先生は私が罪悪感を抱えないように明るく笑ってくれているのだ。
「今のところ、実害とかはあるのかい?」
「今、は……ない、です……」
そういえば、私が高橋奈々としての記憶を思い出したきっかけって階段から突き落とされたからだったなと思ったのだが、それはもう半年も前のことだし今回のことと関係ない。
でも……相談に乗ってくれてこういうこともしっかり話を聞いてきてくれるのだから、ミラはこういう人を頼ろうと考えたことはなかったのだろうか。
(まぁ、ミラが周りの人を全く信用していなかった可能性の方が高いけど……)
「事情はわかったよ。私は君の担任にこの話を共有したいと考えているんだけど、平気かい?」
「もちろんです」
再度、何か困ったことがあったらまた相談して欲しいと伝えられ、私は保健室を後にした。学園側がどのように動いてくれるかはわからないが、あとは自分の行動に気を付けていれば、そのうち噂がデマだったと他の人も考えるだろう。
しかし、どうしてこんな目に遭ってしまうのだろうか。
(これがゲームとして――悪役として仕方がないことなのかどうなのかすらわからない……)
腹が立つことには変わりないけど。
ため息をつきながら、廊下を歩く。
少し進めば、話し声が聞こえた。
その話し声の中に私の名前が聞こえた気がして、思わず立ち止まる。
『ねぇ、聞いた?ルナさんがあの落ちこぼれから目をつけられてるって噂……』
『もちろん知ってるわ。ミラ嬢に目を付けられるなんてツイてないわよね』
『ほんと可哀想よね。聞くところによると、あのお方から気にかけてもらえて舞いあがっているみたいよ。それで調子にのって――』
(………………くだらない)
こういう人って、やっぱりどこにでもいるんだ。
自分の好きなように相手を見下し、陰口を言い続ける人達。
私はこういった人たちの中で、特に自分の話を二転三転と転がす人が大嫌いだった。
今あそこで陰口を叩いている彼女たちには見覚えがある。ーヶ月ほど前はああやってルナの悪口を言っていた。
それなのに今は、セレナに言い寄られている私が気に食わなくてルナを擁護する話をしている。
どうせ彼女たちにとっては、ルナがいじめられて可哀想というよりも、私がルナをいじめているという噂を信じることによって、セレナと釣り合っていないことを信じたいだけだろう。
根も葉もない噂を、どうして軽々しく信じることができるのだろうか。
いや、噂を嬉々として流している人達にとっては事実かどうかなんて重要じゃないのかもしれない。ただ気に入らない人を好き勝手に言いたいだけ。
いずれにしても、少し前まで貶していた相手をどうして可哀想なんて言えるのだろうか。嫌がらせを受けている彼女に同情するのなら、彼女の陰口を叩いていたあなたたちはどうしてそんな顔ができるの?
…………自分の嫌なものは、全部無視すればいいのに。
そうしてくれれば、嫌われるほうもマシなのに。
「とにかく今は、この状況をどうにかしないと……」




