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厄介ごとは続く ー3ー


「はぁ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」


 本日もセレナ撒きに苦戦した。

 ようやく落ち着ける場所に辿り着けたが、ここまで来るのに苦労したため盛大に息を吐き出してしまった。


 そんな私の姿を見た塩内さんは、ずいぶん疲れているなと驚いていた。


 今日は塩内さんからの招集があった。

 目立たないようにとのことだったので、あまり使われていない教室を集合場所に選んだ。もともと場所は2人で決めていたから良かったものの、セレナをはじめとする多生徒からの監視の目を掻い潜りながらここまで辿り着くのには、本当に苦労した。

 今回は緊急の招集だったが、塩内さんと話し合う機会を設ける度にこんな苦労をしていたら時間が無駄になってしまう。


 今日だって、すでに放課後になってから一時間は過ぎている。この間に話し合えることはたくさんあったはずだ。


 その時間を取り戻すためにも、私は塩内さんに本題に入ってほしいとお願いした。


「その、実はな……ここ最近、高橋さんについて何やら悪い噂が広まっているみたいでな……」


 あぁ、なんだ。

 多分だけど、塩内さんは私がここ最近陰口を言われまくっているのを心配してくれたんだ。


 前々からそんなことを言われることはあったが、今の状況はセレナとかいうよくわからない奴が私に絡んでくるのが100パーセント悪い。

 とにかく塩内さんには事情を説明し、セレナの申し出は必ず退くのでそしたらそのような陰口も言われなくなるだろうから心配しなくていいと伝えた。

 しかし塩内さんはそうではないと言う。


「ルナ……あの嬢ちゃんが嫌がらせを受けていて、その主犯格がミラーー高橋さんだっていう噂が立っている」


 ドクリと心臓が一拍、大きな音をたてた。

 まさか、ここでそんなことを言われるの……?


「最近俺も小耳に挟んだくらいなんだが、早めに高橋さんの耳にも入れた方がいいと思ってな」


 引き続きルナのことやその周辺のことは調べるつもりだと塩内さんは言った。

 今は、何より彼の言葉が頼もしい。

 

 私が彼女をいじめているという噂がなぜ流れはじめたのか、全くわからないというわけではない。むしろ、本当にここがゲームの世界だとするなら、これはストーリーに沿った展開と同じで、強制力が働いている……と考えられる。

 それか、別で考えるなら悪意を持った人間が学園の嫌われ者に全ての悪事を被せようとしてきているか……。


 どちらにしても、濡れ衣を着させられる感覚というのは、最悪の気分であることに変わりはない。

 手が微かに震える。


 今後の生活は、もっと慎重に行動しなくては……。




「そういえば塩内さん、調べ物の方は順調ですか?」


 彼が前に、ルナに恨みを持っていそうな人物を探すと言っていたのでその進捗を尋ねてみた。

 塩内さんは頭をポリポリとかきながら答える。


「あまり……進んではねぇな。さっき話した噂のせいか、最近は手のひら返してルナを可哀想だという声が多いんだ。一応前々から心当たりがあったんで、そいつらのことは調べたけどな」

「その心当たりある人とは?」

「学園祭のときに俺を物置小屋に閉じ込めやがったやつらだ。あそこまでするってことは、相当ルナを憎んでるんじゃないかと思ってな」


 そういえばあのとき、塩内さんから複数の女子生徒たちに連れてこられたと説明を受けたていた。冷静に考えられる状況じゃなかったし、何より塩内さんが焦りからか早口でいろいろと話すものだからすっかり忘れていた。


「ただそいつらも俺の顔を覚えているらしく、俺の顔を見るなり逃げてくんだよ。流石に人が多い場所で女の子たちを追いかけたら、今度こそ俺は捕まるだろ?だから話すらできなくてよ……」


 塩内さんの言葉に何も返せない。

 正直言ってあのとき私が物置小屋で見た光景は、一発アウトの現行犯逮捕ものだった。それがわかってるから、今や彼も慎重になっているんだろうけど。


「だが、その中でもリーダーっぽい女子生徒の名前だけはわかった。緑色の髪をしたやつだ。名前はエアリス・ベイリー。確か、三学年の生徒だったと思う」

「エアリス……うーん、聞いたことないですね」


 多分、ゲームでもそんな名前の人はいなかったと思うけど。毎度のごとく自分の記憶が頼りにならないせいで、はっきりとわからない。まさかこんな形できちんとストーリーを覚えていなかったことを後悔するとは。


「そうか。なら覚えているだけでいい。おそらくなんだが、こいつは高橋さんにもよからぬ感情を抱いてそうだからな」

「えっ!私はその人のこと何にも知らないのに」

「嬉々としていじめの噂を話していたぞ」


 私は頭を抱える。

 一体、こういうことをしている人たちは何がしたいのだろうか。


「――それから、もうこうして会うのはやめよう。何が高橋さんの敵になるかわからない状況だ。俺と会ってることだって何か不利になるかもしれねぇし……」


 今までで一番申し訳なさそうな表情で塩内さんがそう告げた。私のことを心配して言ってくれてるのに、なんでそんなに申し訳なさそうなのかと、少し笑ってしまった。


「そうですね。私だけでなく塩内さんにも危害が及ぶかもしれませんし」

「…………あぁ、本当にすまない」


 それだけ言うと塩内さんは会話を切り上げてそのまま去って行ってしまった。

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