厄介ごとは続く ー1ー
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「そういえばマルリー様、どうやらこの秋からアメシティーオーズ学園に転入された方がいらっしゃるみたいですよ」
ペーシュとマルリーは学園の庭園を眺めながらお茶を飲んでいた。
本当はミラも誘うつもりだったのだが、学園祭も終わったというのに何故か忙しそうにしている彼女に断られてしまったため、こうして2人だけのお茶会を開くことにしたのだ。
たった2人といえども、話題はたくさん出てくる。
例えば、最近新しくアメシティーオーズ学園に入ってきた男子生徒の話題など。
「あら?その人って留学生ではなかったかしら。でも、どちらにしてもめずらしいわよね。せっかくこの学園に学びにきたのだから、短期間ではなくて4年間通えばいいのに」
「噂によれば、とても麗しい方らしいですね。最近はどこにいてもその人に関する噂話が聞こえてきます」
「私も少しだけ見たことがあるけど、アルノーお兄様と比べたら全然だったわ」
己の兄を自慢するマルリーの姿に、ペーシュは微笑ましく思い笑った。あまり笑みを深めてしまうとマルリーに怒られてしまうので、そっと口元を隠すのを忘れずに。
「最近、あの人もご執心らしいわね」
ペーシュは一瞬、はて?と考えた。マルリーが指している“あの人“が誰なのか、すぐにはわからなかったからだ。
しかし彼女の表情を見てすぐに合点した。きっとルナのことを言っているに違いないと。
ペーシュはどう返答すべきか悩んだ。この手の話題は、あまり触れるべきものではないと前々から感じていたから。
「ごめんなさい、この場に相応しくない話だったわね。最近古代語の授業でこんな話を学んだのだけれど――」
ペーシュが気まずそうにしているのに気が付いたマルリーは、すぐに話題を変えた。そして、自分で自分の機嫌が悪くなるような話をしてどうするのだと反省したのだった。
ペーシュは内心ホッとしながら、マルリーが振ってくれた話題に相槌を打つ。
2人はまた楽しげに話し出すのだった――。
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図書室でありえないくらい大きな声で叫んだ私は、図書委員に厳重に注意をされ、図書室から追い出されてしまった。
私が大声を出す前にも、会話がうるさかったらしい。
申し訳ないと思いつつ、先ほどセレナという男子生徒から言われた爆弾発言の整理をしたかったので、そのまま彼をつれて人目が少ない場所まで移動した。
「あの、全く話が追いついてないんですが……誰が誰の婚約者だって?」
「君が、僕の、婚約者」
「……あなたは誰でしたっけ?」
「この帝国の第一皇子、セレナ・オルディナリウス。覚えられそう?」
いや覚えるとかそんな次元じゃないんだけど。
「婚約者って……一体いつからのことですか?」
「今のところ僕が昨日勝手に決めたから、正式にってわけじゃないけど」
「は?!勝手に?昨日?!」
説明を求めているのに、より訳のわからないことを言われて半ばキレ気味に返答する。そんな私を見て、セレナは愉快そうに笑っている。
殴りたいなと率直に思った。
(てか、ほんとに当初よりキャラが違くない?!)
「まぁ、安心してよ。父上も母上も、20にもなって婚約者を決めない僕に業を煮やしていたからさ。多少面倒ごとはありそうだけど上手くいくよ」
「そもそも私、承諾していないんですが」
「あ、やっぱり?強引に押せばいけるかなって思ったけど、ダメそうだね」
ここまでいくと、怒りを通り越して呆れがくる。
図書室での彼は、第一皇子の名に恥じない所作を披露していたのに、今は酒屋にいるほろ酔い客のようにフットが軽く、話が変に通じない人になっている。
「はぁ……、なんで私なんですか?」
「そうだなぁ……端的に言うと、君が一番初めに婚約者候補を辞退したからかな」
「???、まず候補だったこと自体が初耳ですが、辞退も何もしてませんよ」
私が何も知らないことをようやく理解してくれたのか、セレナはこれまでの経緯を説明し始めた。
先ほど聞き流してしまったのだが、セレナの年齢は20歳。しかしこの年齢になっても未だ婚約者はおらず、彼の両親――つまり現皇帝と皇妃は一人息子の将来をいたく心配しているのだそう。
一応彼には婚約者候補と呼ばれる令嬢たちがいたのだが、なんとその候補にもともとミラが上がっていたらしい。
(養子とはいえど、公爵家の令嬢にもなれば否応なしにも候補にさせられるの?)
ではなぜセレナは、その婚約者候補のなかから将来の皇妃となる令嬢を今まで選ばなかったのか。
答えは単純で、彼が興味がなかったからだという。
「次期皇帝がそんなこと言っていいんですか?」
「いやぁ〜ちゃんと考えて進言した結果だよ?流石に興味がないからとは父上たちにも言ってないよ。言っちゃえばさ、今僕の婚約者候補の令嬢たちって気が強すぎてさ。みんな顔合わせたらすぐ互いに血を流しあうんだ。怖くない?」
それって、候補争いがあまりにも激戦でってこと?
それは確かに怖いけど……。
「だから前々から、候補者でありながら今まで全く主張してこなかった君にしちゃおうかなって考えてたんだ」




