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初めての友人 ー3ー

 ゲーム内では、休日に街へ行くことができる。

 学園編では、攻略対象とデートに行ったり、デートに着ていくための服を買いに行ったりするために行くのだ。

 

 流石に服を買いに行くときは主人公1人で行くが、関係値がある程度進むと攻略対象とばったり会うというイベントも起こる。

 ただしそのイベントもデートに誘えるのも友達くらいの関係にならないとダメなので、そんなにすぐに出来るわけではない。ましてや主人公のステータスアップと並立しながら攻略対象との関係値を進めるのは、1か月を少し過ぎたくらいの月日では完全に無理だと思う。


 


『次はあっちに行ってみましょ!』

『うんいいよ!行こう!』


 …………………………。

 

 無理、だと思っていたんだけど、私が座っているところから少し離れたところに見える2人組は間違いなく主人公と攻略対象のうちの1人だ。

 攻略対象の名前なんだっけ……。

 ってか、なんでそんなに攻略が早いの?


 ――――――――

 ――――――――――――――

 ――――――――――――――――――


 


 私たちの今日の散策は、始めに洋服屋に行き、その後は街を自由に歩いて、雑貨屋に行ってアクセサリーを見たりカフェ屋でお茶をしたりした後、噴水広場まで歩いてそこで一緒に会話を楽しんでいた。

 

 そこでぺーシュが、買い忘れがあったからここで待っていてほしいと頼んできたため、ベンチに座って休憩をしていた。

 そしたらゲームでよく聞いた声が聞こえてきたので、思わず顔を向けたらその2人組を発見したということだ。

 主人公の隣を歩いている黄色い髪の男性……名前は忘れたけど、明るく元気なキャラクターで攻略するのが比較的簡単なキャラだったと思う。

 

 それでもデートに誘えるくらい仲良くなっているのは早すぎると思うけど……。


「お持たせいたしましたミラ様!あら、あちらにいらっしゃるのは学園で噂のルナ様と侯爵令息のフランツ・ドゥルマ様ではないですか?」

「おかえりなさいぺーシュ様。あちらの方たちをご存知なのですか」

「ええ、どちらの方も私たちと同じ学園に通っています。女性の方は膨大な魔力を持っていると噂されている特待生のルナ様で、男性の方はアルスタン王国の侯爵家ご令息のフランツ・ドゥルマ様です」

「マァ、アノカタガソウナノデスネ」


 知っています。でも名前は思い出せなかったので、教えてくれてありがとうございます。

 主人公の名前はルナというのか。確かに初期の名前そんな感じだった気がする。


「一緒にお出かけなんて、きっとあのお二人は仲がよろしいのですね」

「そのようですね。ところでぺーシュ様は何を買いに行かれたのですか」

「あ、えっと……こちらです」


 ぺーシュが差し出してきたのは可愛い小包だった。

 

「これ私がもらってもいいのですか……?」

「はい、気に入っていただけるといいのですが……」


 中をあけてみると、スズランが描かれた栞が入っていた。

 

「え――!すっごく可愛いです!でも、どうして私に?」

「今日のお礼です。私、本当に楽しくて……。いつか友達と呼べる方と一緒にこうやって遊びに行くのが夢だったんです」


 ペーシュは私の隣に座ると、少し俯いて話し始めた。


「私の髪の色……ミラ様はあまり気になさらないですが、他の人から見ると異質のようで……怖れられる、という訳ではないのですが、よく避けられてきました」

「そんな……」

「はじめは私が何か粗相をしてしまったのかと色々と考えていたのですが、幼い頃に同世代の子から髪の色を指摘されて合点しました。私は、バケモノみたいだと……」

「そんなことありません!」


 ペーシュがバケモノ?

 こんなに可愛い天使みたいな子に対してなんてことを言うんだ!私がその場にいたらそいつの声帯を引っこ抜いてやるわ!


「ペーシュ様!ペーシュ様は今日のことを感謝していると言いましたが、それなら私だってそうです。私の噂なら、ペーシュ様だってご存知だったはず。それでもペーシュ様は倒れていた私に声を掛け、治療だってしてくださいました。そんな心優しいあなたがバケモノだと言われるなんて、到底許されるべきことではありません!」

「えぇッ?!そ、そこまで言ってもらえるなんて……」

「というか!こんなに可愛らしいあなたを形容するなら、そんな言葉ではなく可憐とかお花とか天使とかそういう言葉だと思ってます!」

「え!あ、あの」

「そんな言葉を言った人は何処のどいつですか?!今から私が二度とふざけたことを抜かせないように、息の根を止めてきますから!」

「だ、ダメですそんなことをしたら!」


 勢い余ってとんでもないことを言ってしまった。

 ペーシュ様は少し青ざめて私を宥めている。

 今まで私は、学園の問題児として嫌われているであろう存在になった自覚があったため、ペーシュと交流していくことに不安があった。

 私に関わることで、ペーシュの交友関係に亀裂など入ってしまわないか……。しかしそんな心配をよそにペーシュは私にたくさん話しかけてくれた。きっとペーシュのご友人ならそんなことで見限るような人たちではないと思っていたのだが、そんな理由があったなんて。

 幼い頃に投げつけられた心無い言葉と、クラス内で遠巻きにされることで、ペーシュは人との関わりに不安があった。

 それでもいつか、友達と一緒に遊びに行きたいと願っていたその健気な想いを聞いた今、誰だって一緒にいてあげたいと思わずにいられないだろう。


 ペーシュはとても優しい子だ。

 倒れている人がいたらすぐに声を掛けて、いじめのような現場を見たら、すぐに助けようとする。今だって自分のことを傷付けた相手のことを庇うのだから。


「ペーシュ様!」


 私はペーシュの手のひらを握った。

 ペーシュは突然のことに驚いて、目をパチパチとさせている。


「私たちはずっと友達です!これからもよろしくお願いします」

「……!はいッ、こちらこそよろしくお願いします……!」


 ペーシュの目尻から、涙が溢れている。

 なんだか私も心の中が熱くなって、2人で笑い合った。



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