初めての友人 ー2ー
一日の終わりに今日起きたことを自室で振り返った。
多分だけど……あのとき詰め寄られていた茶髪の女の子は、ゲームのヒロインだろう。一瞬しか見えなかったけど、瞳の色が翡翠であったからほぼ間違いないと思う。
茶髪は特に珍しくないけど、翡翠の瞳はどうやら珍しいみたい。
普通に赤とか青とか黄色などの様々な瞳の人がいるからよくわからないけど、緑は珍しい。この世界ではそうなのだという。
とりあえずそれは置いておいて、主人公があんな風に集団で詰め寄られるイベントなんてあったか?ということが気になっている。
学園編はどちらかというと恋愛要素の方が多いので、あまり興味がなかった私はほとんどのイベントを早送りをしていた。
だから学園祭に関するイベントはあまり印象が残っておらず、ただ忘れているだけという可能性もあるけど……。
ここは身分の高い貴族が通う学校だから、平民が通っているというだけで気に入らないと考える人はいるかもしれない。それでもゲームの中では、面と向かって主人公に突っかかってくる人はミラしかいなかったと思う。
現時点で、私と主人公の接点はない。
というかこの時期は私にとっても主人公にとっても安息の時期と言える。
ゲームの中で、ミラが主人公に嫌がらせを始めるのは二学期からである。ミラは主人公の膨大な魔力量と学園内でも認められる魔法の技術に嫉妬していた。
主人公がすごいと噂されるようになるのは、一学期の期末試験にある魔法実技試験を終えてからである。
魔法実技試験は、ただの筆記試験しかない中間試験とは違い、主人公の魔力量が他生徒から一目置かれるという強制イベントだ。
この魔法実技試験の噂がミラの耳に届いたかなんだかで、二学期から主人公は勝手に目の敵にされ、ミラの嫌がらせが始まるという感じだ。
ちなみに、嫌がらせが始まると主人公のステータス育成が上手くいかなくなる。理由は、ミラのお邪魔イベントがランダムで発生するからだ。なのでこのゲームは、一学期の内にどのくらい主人公のステータスが上げられるが後の要となってくるのだ。
けれどこれは、ゲームの話。
今の私としては、二学期が始まっても今と同じように魔法の練習をしたり、ぺーシュと共に過ごそうと思っている。
こちらから関わりに行かなければ、学年も違うのだから接点もできないだろう。
二学期の前に夏休みについての行動を考えなきゃいけないけど…………。
トントン――――。
控えめに扉を叩く音がした。
返事をしてドアを開けると、ぺーシュが立っていた。
「ぺーシュ、様!どうしたんですか」
「あの、ごめんなさいこんな時間に……その、今日ミラ様に言いたいことがあったのですが言い忘れてしまって」
ぺーシュはそわそわとしている。
どこか様子がおかしいので、立ち話よりは中に入って話してもらおう。部屋の中にまだ飲んだことないけど茶葉みたいなのがあったからお茶なら出せる。
「立ち話もなんですし、どうぞ入ってください。消灯時間までまだ時間がありますし、お茶でもいかがですか」
「あ、お話はすぐに終わります!えっと、明日は学校が休みなので……い、一緒に街へお買い物に行きませんかッ……」
ペーシュは、頬をうっすらと染めてこちらの反応を気にしながら私をおでかけに誘った。
え?もしかして私、告白された?
友人を遊びに誘うのに、そんなに勇気を出しました!みたいな態度で来られたら、本当に告られたのではないかと思ってしまう。
可愛い。ぺーシュがこの恋愛ゲームのヒロインじゃないの?私が男性だったら、完全に射止められてるんだけど。
「も、申し訳ありませんッ!突然こんなお誘い……ご迷惑、でしたよね……」
ぺーシュの可愛さに見惚れていたら、私の反応に勘違いしたぺーシュの表情がみるみる落ち込んでいったので、慌てて弁解した。
「そんなことありません!むしろ感激です!ぜひ行きましょう!!」
「ほ、本当ですか!」
すると彼女はとても喜び、明日集合する時間を伝えてから、今から準備をしてきますと笑顔で部屋に戻っていった。
本当に天使だ……。
しかし彼女の後ろ姿を見ながら、私に一抹の不安がよぎった。
「制服以外に着ていくものってあったっけ……?」
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結局、友達とのお出かけに相応しい服はなかったので、申し訳ないが制服で行くことにした。制服はおしゃれだからそんなに違和感もないだろうと、若干の諦めの気持ちでそう決めた。
ぺーシュには着ていくものがなかったと素直に言うと、私も制服で行きますと言って着替えてくれた。
私服のワンピースがすごい可愛かったから、そのままでもよかったのに……。
それにしても、以前の私の服の趣味って……。サイズも身長に対して大きすぎるものばかりだし、16才の少女が着るにはすこし渋めの色ばかりだった。
よく思い出せないけど、前の自分がいいと思ってきても、今の自分からしたら微妙な服だ。ぺーシュは前から気になっていた洋服屋があると教えてくれたので今日は何着か服を買おう。
ちなみに今の私に金があるのかと、昨日疑問に思ったが、部屋の隅にあった箱の中にたくさんあったのでありがたく頂戴することにした。
一瞬、なんで大量のお金をこんな形で保管しているのか?と思ったが、それも以前の私がしていたのかと思うと不思議な気分になる。
一体、以前の私は何を考えていたのだろうか?




