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ようやく見えた希望の光を離したくない ー3ー (塩内視点)

今回の話も塩内ジーク・ギルシリ視点です。


「な、何やってるんですか塩内さん!」


 駆けつけてきたのは高橋さんだった。どうやら俺を探してここまで来てくれたようだが、彼女は俺の姿を見るなり責めるような声色を出す。


 ……あ、しまった。


「い、いやこれは……」

「いいから手を離してください!」


 そう言われてようやくルナを放す。

 ルナはすっかり恐怖により腰が抜けてしまったようで、放心していた。

 その姿を見て、罪悪感を感じる。

 怖がらせるつもりはなかったってのに――。


 高橋さんは、俺をできるだけ遠ざけてルナに優しく声をかける。けれどもルナはまだ何も答えない。仕方がないので俺の方を見て何があったのかと聞いてくる。

 とにかく俺は彼女に説明をした。ルナを怖がらせてしまったのは事実だが、決してやましいことがあったわけじゃないとわかってもらうために。

 俺の話を聞いていた高橋さんは、焦ったような顔から段々と眉間に皺を寄せて苦渋の表情になり、しまいには肩を落とした。


「多分、これがイベントのことです」

「な、なんだって?だってここ……」


 そうだ、俺が勝手に体育館だと思っていたが、物が多いなとさっき考えていたじゃないか。じゃあここがイベント発生する物置小屋だったのか。


「……てっきり、別の場所かと」

「ここは本来体育館なのですが、学園祭のときだけは物置小屋として使われるらしいんです。すみません、小屋って言い方がよくなかったですね……」

「…………」

「それに、――やっぱり私が何もしていなくても、イベントは起こるみたいですね」


 高橋さんはちらりとルナの方を見ながらそう言った。

 彼女はもう一度ルナに話しかける。


「ルナ……さん?大丈夫ですか?」

「――――ハ、ハハ……やっぱり、やっぱりあんたが仕組んでたのね。こんな手を使ってくるなんて、陰湿過ぎでしょ!私が言う通りにならないから、あんたも手段とか選ばなくなってってわけ?」

「え?ちょ、ちょっと待ってください」


 突然おかしなことを言い出したルナに、高橋さんが困惑したような声を上げた。

 俺もそんなルナの態度に驚いている。


「今回のは流石にない。あんたのこと、ずっと前から、ゲームで見ていたときからないって思ってたけど、ほんとに性格終わってる。なんでこんなことすんの?てか、あんたってほんと何がしたいの?いい加減解放して欲しいんだけど」

「ちょっと待ってくれ!今ゲームって言ったか?!」

「あ、あんたは話しかけてこないで!」

「ほんとに話を聞いてくれ!嬢ちゃんもこの世界の人じゃないんだろ?!日本とか、そんな言葉を知ってるんじゃないのか?!」

「な、なんでそれを」

「やっぱりか!俺たちはこの世界のことを知りたいだけなんだ。それで嬢ちゃんの話を聞かせてほ」




「――おい、ルナに何してやがるんだ」





 声が聞こえた。低い、唸るような声だった。

 その瞬間、体に何かの衝撃を感じた。

 気が付いたら俺の身体は床に転がっていて、体の節々から痛みを感じる。


「ル、ルハーニ……」

「大丈夫か、ルナ。何があった?」


 痛みで目がぼやけるが、なんとか凝らしてみると、そこには男子生徒の姿があった。長身に、赤い髪……確かルナがここ数日一緒にいたイケメンの兄ちゃんだ。

 

 ルハーニと呼ばれた男子生徒は俺の胸ぐらを掴み、そのまま顔を数発殴ってきた。

 

「や、やめてください!」


 高橋さんが彼を止める声が聞こえて、衝撃は止んだ。

 けれどもルハーニの怒りは収まらず、標的を高橋さんに変えたようだった。やめろ、と言いたいのに全身が痛くて立ち上がれない。クラクラする。

 なんとか顔を上げると、高橋さんがルハーニに胸ぐらを掴まれていた。


「お前、もしかしてこの前ルナの教科書を破った犯人か?お前だっていう噂、よく聞くぞ」

「ち、違いますッ……」


 高橋さんはなんとか彼に話を聞いてもらおうとしているが、首がしまって苦しいのか苦悶の表情を浮かべている。


 ちくしょう……どうして彼らは俺らの話を聞いてくれないんだ。


「じゃあこれはなんだ?なんでルナがここにいて、お前らが取り囲んでいる?ルナの様子から見てだいぶ怖がっていたようだし……言い逃れできると思ってんのか?」

「は、話を……」

「ふん、俺のルナに手を出したんだ。覚悟はできてんだろうな……?」


 ルハーニは高橋さんを掴むその腕をぶんと振った。

 その瞬間、俺のほうに何か重い衝撃が飛んできてそのまま俺の意識はブツリと切れてしまった……。


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