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ようやく見えた希望の光を離したくない ー1ー (塩内視点)

今回の話は、塩内ジーク・ギルシリ視点です。


【時を少し遡り、ミラと別れてから……】




「しっかし、こうして見ると派手な祭りだなぁ……」


 高橋さん――ミラと別れてからまもなく、学園祭が始まった。開催を合図する放送が流れて、メインストリートは一斉に騒がしくなった。


 まるで砂漠の国のお姫様のような格好をしながら、楽しそうに笑っている女の子達をぼーっと眺める。確か、上の子どもが幼い頃にこんな格好をしたお姫様が好きだと言ってたなぁ……。

 

 ……もう、声も思い出せなくなった俺の家族。

 初めてこの世界で目が覚めたとき、俺はとにかく混乱しまくりで状況すらよく掴めないうちに時間が巻き戻った。

 時間が巻き戻ることにも混乱して、ようやく少しずつ自分が置かれている環境をなんとなく理解した。そして、周りを観察しようという考えに至ったがループを経験するうちに大切な家族の記憶をだんだんと忘れていった。

 時間が巻き戻るとはいえ、俺にとっては常に時間は過ぎているようなもんだ。2年の月日を毎回繰り返しているなら、5回も繰り返せば10年という長い時間が過ぎていることになる。

 

 このままこの世界にとどまりループに巻き込まれたままでは、やがて家族の顔すら忘れてしまい自分の精神が完全に壊れてしまうだろうと考えていた。

 けれどもどうやってループから抜け出せばいいのかわからず、元の世界に戻れるのかすらもわからない状況は絶望しかなかった。

 

 そんな中、高橋奈々という女性と出会った。彼女は、俺の戻るべき世界のことを知っている人だ。


 なんと高橋さんは、このイかれた世界のことを元から知っていたのだという。それだけにとどまらず、もうー人自分たちと同じ境遇の人がいるとも教えてくれた。そしてその人は、この世界にとってとても重要な存在なのだと……。

 その話を聞いた時、俺はようやく光が見えたと思った。

 高橋さんはなぜかこの世界に残りたいと言っていたが、俺はもうこんな世界はゴメンだ。

 

 早く家族のもとに帰りたい。

 

「ちょっと、そこの貴方」


 ルナの様子を木の陰から覗っていると、後ろから女子生徒達に話しかけられた。彼女達は俺のことを少し訝しげに見ていた。

 そういや俺、今は若い男の姿になっているけど、それでもー人でずっと特定の女の子ばっかりを見つめている不審者の構図になっているな……。

 こりゃマズイ。何か弁明した方がいいか。


「あ、あー……いや、俺は怪しいもんじゃ――」

「別に言わなくて結構よ。あの平民のことを見ていたのでしょう?」


 緑色の髪をした嬢ちゃんが、ルナのことを指差していた。

 鋭い指摘に、俺はびくりと肩を揺らしてしまう。

 あからさまな俺の態度に女子生徒達は俺をますます怪しい目で見る――ことはなく。むしろ何故か嬉しそうに笑いながらこう言った。


「やっぱり!貴方、平み……ッルナさんのことが気になっているのでしょう?学園祭前から、貴方が彼女に話しかけようとする姿を私たちは何度も見ていましたもの」


 なるほど、俺が前からルナに話しかけようとしていた姿を見られていたのか。

 しかしそれで俺を咎めに来たという様子ではなさそうだ。


「俺に何の用だ?」

「私たちは、ただ貴方の手伝いをしたいだけですわ。ルナさんとお話がしたいのでしょう?なら、私たちにお任せください」


 意気揚々と話す子の後ろでは、ニコニコと微笑みながら頷く女の子たち。もしかして、俺があのルナって子に気があると勘違いしているのだろうか。

 このくらいの歳の子たちは、人の恋路とかが気になる年頃だとも言うし、今までの俺の態度を見ていて応援したくなったとか……?


 こんな歳の子たちに勘違いとはいえ貴方の恋を応援すると言われて、若干恥ずかしくなる。

 勘違いしないでほしいが、俺は妻一筋だ。

 

 しかし、これはある意味チャンスなのではないだろうか?

 高橋さんは、今回の学園祭で起こるイベント――ルナが窮地に瀕するという機会をあえて狙って、彼女との対話を試みようと考えているが、必ずしもそのイベントが起こるかわからないとも言っていた。

 それなら、今目の前にいる嬢ちゃんたちの力を借りれば、不確定なイベントには頼らずにルナと会話することはできるんじゃないか?


「そ、それはどうやって」

「あら!やっぱり私たちのお力が必要なのですね!では私たちにお任せくださいませ。すぐにルナさんを貴方のもとに連れて行きますから」


 俺の態度を見て肯定と捉えたのか、緑色の髪をした嬢ちゃんが嬉しそうに笑い、ルナの元へと向かった。

 流石に今すぐだとは思わなくて、嬢ちゃんたちを止めようと思ったが後ろでニコニコ笑っていた女子生徒たちが俺を押し切り、そのまま私たちについてくるようにと言ってくる。


(せめて、高橋さんがくるまで待っていたかったが……)



 彼女たちに連れてこられた場所は、体育館裏と思われる場所だった。

 なるほど、確かに告白の場所としてはベタな場所だ。

 けれどてっきり、外でルナを待ち構えてればいいのかと思っていたのだが女子生徒達は中で待つように促してくる。


「中で、と言われてもなぁ」

「まぁ!大切なお話をするのに外でなんていいのですか?この中なら、人の目を気になりませんわ」

「そりゃそうかもしれねぇけどよ……」


 気にするなと背中をグイグイ押され、俺は仕方なく中で待つことにした。嬢ちゃんらは終始ずっとニコニコ笑っていて、年頃の嬢ちゃんたちはこんなに人の恋路を気にするのものなのかと思ってしまう。


 俺が中に入ると、扉をバタンと閉められる。

 女子生徒達は、俺にそのままルナが来るのを待てと告げるとどこかへと言ってしまった。

 

 …………いや、ほんとにこれ大丈夫か?

 

塩内視点は次回も続きます。

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