待望の学園祭 ー1ー
あっという間に二学期の定期試験が終わった。次に来るビッグイベントは、アメシティーオーズ学園の生徒たちが心待ちにしている学園祭だ。
ペーシュ達は自分たちのグループの出し物のために毎日忙しそうにしている。
放課後は特に準備に力を入れているみたいで全く会えないし、昼休みも一緒に食べれたり食べられなかったりと日によってまちまちだった。
特にマルリーとアルノーはグループ内でも中心的立ち位置なのか、一番忙しそうにしている。この準備期間が始まる前から何かとバタバタしていたので、ルナのことを気にする余裕もないようだった。
私は特に何かをするわけではないので、いつも通り気ままに過ごしている。たびたび塩内さんことジークと一緒に進捗状況について情報交換をしているだけで、他の人たちに比べるとだいぶ暇だ。
塩内さんはルナと会話ができないことを、いつももどかしいと言っていて、チャンスがありそうだと思ったら何度も接触を試みていると話している。
私も何回か会話を試みてはいるのだが、塩内さんほどチャンスがない。なぜなら私の場合は彼女の姿さえ見つけることができないからである。
――そうして日数が過ぎていき、多くの生徒が待ち望んでいた学園祭の日がやってきた――。
もちろん私たちも、この日を待ち望んでいた。
メインストリートの一角で、こっそりと周囲の様子を観察している。
学園祭当日は、出し物をする生徒たちが朝早くから開催に向けて各々の会場場所で最終準備をしている。どのグループにも所属しなかった人たちはまだ寮内で身支度をしていると思うから、今この場所で呑気に過ごしているのは私と塩内さんくらいだった。
「意外とこういう祭り事に積極的に参加する人がいるもんなんだなぁ……。こういうのはみんな消極的なのかと思ってたがそうでもないのか」
塩内さんは学園のメインストリートに並んでいる、アラビアン風のおしゃれなテントの幕を撫でながらそう言った。ここら一帯は全て、ジャナサール王国の町を模倣した市場になるらしい。
ジャナサール王国といえば、その国の王子であるルハーニ・アザルだ。つまりここのお店は全部、彼が取り仕切っている。
今回の学園祭では、ルナはルハーニの誘いに応じて、こちらのグループに参加することにしたらしい。その場合、主人公は売り子を担当していたと思う。
「なあ、ゲームのイベントが起こるのは何時くらいなんだ?」
「正確な時間はわからないのですが、多分夕方ごろだったと思います。主人公が閉じ込められた物置小屋の窓から、夕陽が差し込んでいたので……」
ゲームでは、物置小屋に閉じ込められるのは決定事項。たとえ違うグループに所属したとしても、この展開は変わらなかった。学園祭が盛り上がり午後に入った頃、備品か何かで足りないものができてそれを取りに行くように主人公が頼まれるのだ。
例えば今回のルハーニのグループであれば、店の品数が足りなくなってきたから在庫を持ってきてくれと頼まれる感じだ。
快く引き受けた主人公は、物置小屋に1人で物品を取りに行く。そしてそこで隠れていたミラによって扉を閉められて固定されてしまい、出られなくなってしまうのだ。
「なるほどな……。でも用心するに越したことはない。今日一日はここら辺で様子を伺ってるか」
「…………それなんですけど」
実は今日の朝、学園祭に向けて今まで準備に力を入れていたペーシュたちの様子を見に行っていた。彼女たちは私の姿を見つけると、ぜひ自分たちの出し物も見て欲しいと言っていた。
どうやら彼女たちは魔法を取り入れた演劇をするようで、芝居はもちろん衣装や小道具などにも十分なほどの力を入れているそうだ。
魔法を使った演劇ってどんなのだろうという好奇心と、純粋に友人たちの晴れ舞台を見たいという気持ちがあり、せめて午前の部だけはそちらに行きたいのだ。
ここを離れるリスクはわかっている。
思えば、一学期に起きた魔法実技試験のときも、ルナの教科書が破られていたときもゲーム本編とは少し様子が違っていた。今回のイベントだって、知っている内容とは違うことが起きる可能性もある。
だからできるだけここを離れずに、ルナの動向を見ていたほうがいいのはわかっているけど――――。
「ん〜…………わかった、行ってきていいぞ」
「え、本当ですか!」
「まぁ、今回は高橋さんがいてくれていたほうが心強いんだが俺は協力してもらっている身だしな。無理強いはしないさ。ただ、午後は流石に帰ってきてくれると助かる」
「もちろんです。必ず戻ってきます」
塩内さんにお礼を言い、私は急いで会場に向かう。
ペーシュたちの演劇はメインストリートから少し離れた闘技場で行われるらしい。
学園の闘技場は、生徒同士の模擬戦や学園が用意した低級の魔物か、魔法道具のホムンクルスなどを使った実技演習をするときに使用する場所だそうだ。
ゲームでは一度も出てきたことがない場所だから、そんな施設まであるのかと当初は驚いていた。
あと、一般的に演劇って体育館や講堂みたいなところでやるものではないのか?と初めに聞いたときに思ったのだが、どうやら演出上この場所の方がいいと考えられたらしい。
天井がないほうがいい演劇って、どんな劇なんだろうってワクワクする。
会場に行くまでの道を歩いていると何人かの生徒とすれ違った。忙しそうに駆け回っている人もいたし、友達と楽しそうに喋りながら、まず始めにどこへ行こうかと相談している人もいた。
どうやら、そろそろ学園祭が始まるみたい。
【お知らせ】
誤字報告をしてくださった方にこの場を借りて感謝申し上げます。報告してくださった箇所は修正いたしました。




