表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/98

とりあえずの作戦 ー2ー


「学園祭?」

「はい。そろそろ定期試験が始まって、その後すぐに学園祭の準備期間に入ります。ゲーム本編では、この学園祭のときに主人公に災難が訪れるんです」


 この災難とは、いわゆる悪役令嬢ミラからの妨害なのだが……。



 

 まずアメシティーオーズ学園で開催される学園祭とは、私たちにとっても馴染みのあるものだ。つまりは生徒が催し物を決めて、学園全体がお祭り騒ぎになるやつである。

 少し違う点を挙げるなら――出し物を決める際に、誰と一緒にやるのかまで好きに決めていいらしい。同じクラスや委員会、同好会などではなく、学年関係なくいろんな人とグループを作っていいということである。

 例えば、最近忙しそうにしているマルリーやアルノーは、主にサラヴァン王国出身の者を集めて魔法を使った出し物をしようと決めたらしい。

 

 そんな感じで、アメシティーオーズ学園で行われる学園祭は同じ出身国の人とグループを組むのが多いらしい。活気な商業を自慢とする国の人たちは、その国で取り扱っている物などを自分たちで仕入れて販売するとか、芸術に自信があるならちょっとした値打ちの絵を飾って展覧会をするとか……ここらへんはさすが金持ちって感じがする。


 グループを組むのにも、同じ出身国ではないが興味があるなら一緒に組むとか、絶対に同じ出身国ではないとダメとかそのグループ内で好きにルールを決めることができる。

 ほとんどの場合は、興味がある者同士一緒にやろうスタイルが多いのだという。

 

 私もマルリー達に一緒にやってみないかと誘われたけど、まだ魔法の使用に制限があるため辞退した。

 ペーシュは私が参加しないと聞いて彼らの誘いを断ろうとしたらしいのだが、去年から憧れていたグループでの出し物に目を輝かせていたので、私のことは気にしないでほしいと言って背中を押した。


 どのみち彼らには内緒でルナと接触しなくてはいけないから、そうしておいて良かったと思っている。


 ここでゲームのシナリオに戻る。

 主人公は一番好感度が高い攻略対象から誘われ、その攻略対象が結成したグループに加入することになる。

 それぞれの攻略対象の特色に合わせたような出し物をするのだが、ここでのイベントはスチル絵が違うことくらいで話の展開はあまり変わらない。

 

 学園祭当日、主人公はグループの仲間から出し物に使うための大事な備品を物置から持ってくるように頼まれ、それが置いてある物置小屋まで足を運ぶ。しかし何者かに背中を押されて物置小屋に押し除けられると、そのまま閉じ込められてしまうのだ。

 早く備品を持っていかなければグループのみんなに迷惑をかけてしまうし、何より物置小屋に閉じ込められていることを誰かに気が付いてもらえるのか不安になっていく主人公の元に、ヒーローが駆け付けてくれるというイベントだ。


「と言うことは……閉じ込められたところを俺たちが先に助け出して、そのまま話をするってことだな!」

「でも、このイベントが必ず起きるかわからないんです」


 すでに知っての通り、この事件の犯人もミラ・スカーレットレイクである。

 本来なら私が行動を起こさない限りこのイベントは起こらないはずであるが、私はむしろゲームのシナリオ通りに強制的にルナにはこのような災難が降りかかるのではないかと考えている。


 前に、ルナの教科書が破かれていた事件……。あれもゲーム通りのイベントで間違い無いだろう。

 今はミラのポジションに立っている私が、何も知らないのにゲームと同じことが起きたということは誰かが代わりに行動したということになる。

 正直言って今のルナに対して嫌がらせをしそうな人はたくさんいそうなのだけれど、裏を返せば誰が嫌がらせをしてもゲームと同じことが起こっているということになる。

 それはつまり、ゲームとしての強制力的なものがこの世界に働いているのではないだろうか?

 

 ……と、推察してみてもこれには根拠がないし、あの教科書の事件に関してはただの偶然だった可能性もある。

 けれど、もしシナリオの強制力が働いているならば、塩内さんが言っていたことにも信憑性が増してくる。


 今回の学園祭でルナと接触するのには、二つの利点がある。

 一つはルナから私が悪役令嬢ではないと知ってもらうため。今のルナは私のことを、ゲーム本編の悪役令嬢ミラ・スカーレットレイク本人であると思っていると考えられる。だから今回でその誤解を解く。

 もう一つは、本当にゲームの強制力が働いているのかどうか。

 私は、今回の学園祭でのイベントでそれを見極めたい。


 これらのことをざっと要約して塩内さんに伝えると、彼は苦い表情になった。


「それはつまり、絶対にあの子と話せるとは限らない賭けになるかもしれないってことか?学園祭はまだ先の話だろ?そこまで何もしないってのもアレだし、上手くいかなかったらどうすんだ?あっという間に冬になっちまうぞ」

「このイベントは保険だと思ってもらえればいいです。それまでの間に、どうしても彼女と話す機会が得られそうにないならこの機会を待ってみましょう」

「なら、そのイベントとやらを確実なものにするために、俺があの嬢ちゃんを閉じ込めてみるか?」

「何言ってるんですか?!姿を見られたら今後彼女は私たちを完全に警戒するでしょうし、第一、閉じ込めておいて話し合いしましょうなんて応じると思います?」

「…………、ダメか」


 塩内さんは、私の言葉に残念がるような姿を見せた。冗談で言ったようにも見えない。あの言葉は彼の中では本当にやるつもりで私に聞いてきたのだ。

 もしかしたら彼の中では、“閉じ込める“という言葉は使えども、もう少し穏便な方法を想定しながら私に提案してきたのかもしれない。

 けれど、さすがに彼の発言には驚いてしまった。


 塩内さんが痺れを切らさないうちに、ルナと会話できるといいんだけど、大丈夫かな……。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ