唐突なお話し ー3ー
頭が真っ白のまま、予鈴が鳴った。
放課後にもう一度話そうという約束をして、私は教室へと戻っていった。
教卓の上で何かを喋っている教師。
その話の内容が全く頭に入ってこなかった。
ずっと頭の中が、よくわからない何かでグルグルにされている気がする。
『全てが無駄だから』
『さぁ、いつも通りに』
『思い出せ』
『何よりも君が知っている』
『だって君も、君の中にもあるから』
「ミラ様!!」
慌てて顔を上げる。私、ずっと机に伏せていたんだ。
目の前にはペーシュが立っていた。彼女は私の顔を心配そうに覗き込んでいる。
あれ、もしかして授業ってもう終わっていたの?
それまでずっと寝てた?
「ミラ様、お顔の色が悪いです。体調が悪いのでは?保健室に行きますか?」
「……だ、大丈夫。でも確かに少し気分が優れない、かも。保健室に行ってくるね……」
「それなら私も、」
「本当にごめんなさい。今は、少し一人になりたくて……。マルリー達にも今日はそのように伝えてほしいの」
「わ、わかりました……。あ、あの、本当に無理はなさらないでくださいね」
「ありがとう……、迷惑かけてごめんなさい」
心配してくれている彼女には悪いけど、私が向かうべき場所は保健室ではない。……でも、少し横になって休みたい気持ちもある。本当はそうするべきなのかも。
だって、さっきから頭の中がガンガンと打ち付けられているように痛いの。
『君が何をやっても無駄になるよ』
「ーーーーッ!」
ううん、ダメ。
今は休んでる暇なんてない。
とにかく詳しい話を聞くために彼の元へ行かなくては。
約束した場所まで駆け足で行った。
すでに塩内さんはその場所にいて、ボーッとしながら私のことを待っていたようだ。
「お待たせしました」
「おう、来てくれたか」
彼は嬉しそうに私を呼ぶ。
最悪な気分の私と、どこか嬉しそうな塩内さん。
私たちの反応があまりにも正反対すぎる。
「なんか顔が暗いな。体調でも悪いのか?」
「さっきの話が上手く飲みこめていないんです」
「まぁ、そりゃそうだよな。時間が繰り返していることを知らなかったってことは、今回が一回目ってことだもんな。困惑するのも無理はない」
「そこら辺の話についてもっと詳しく聞きたいんですけど、時間が巻き戻るって本当ですか?」
「こんなこと嘘をついてどうする。俺だってふざけているわけじゃないぞ。――って言っても俺もよくわからないことだらけで、詳しく説明なんてできない。こればっかりは、嬢ちゃんも実際に体験してみたらわかるさ」
塩内さんはため息をつきながらそう言った。彼はすでに、時間の巻き戻りに慣れてしまったのだろう。
もし私が、また今年の4月からやり直しすることになったら……ぺーシュやマルリー、アルノーとは初対面からになるだろう。
そうなったら私はまた彼女たちと仲良くなれるだろうか。
楽しく過ごした記憶を私だけ知っていて、彼女たちは私と一緒に過ごしたことを綺麗さっぱり忘れてしまう。
いや、忘れるとかそういうものではない。無かったことになってしまうのだろう。
「……私が今の記憶を持ったまま、巻き戻るとは限らないのでは?もしかしたら、時間が巻き戻っているのはあなただけかもしれませんよ」
「おいおい、つれないことを言わないでくれ。俺からしたらようやく見つけた仲間なんだ。確かに信じられないことかもしれないが、一回体験してみたらわかる。きっと、嬢ちゃんも俺と同じように繰り返すことになるはずだ」
「……?どういうことですか?あと私のことを嬢ちゃんって言うのをやめてください。見た目は確かに若いですが、中身はそう呼ばれる年齢ではないんです」
「おお悪い。嬢ちゃんの元の名前は……高橋奈々、っていうんだっけか?高橋さんでいいか?」
「はい、それで大丈夫です。――――なんだか懐かしいです。そう呼ばれるのは」
「だろ?なんだか嬉しくないか?」
――嬉しい、のかもわからない。なんだか彼の言葉に自分の気持ちが追いつかなくて、曖昧な返答しかできなかった。




