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唐突なお話し ー1ー

 それからしばらくは、学園全体の様子で見てみる分にはいつも通りの日常が流れていた。しかしマルリーの話によると、1年生の間ではルナはどことなく腫れもの扱いで遠巻きにされているみたいだし、アルノーによると彼のクラスではルハーニ・アザルがずっとまわりを威嚇しているみたいで気が落ち着かないらしい。

 2年生や3年生の間にはそんな雰囲気が一切ないかと言われると、そうでもない。ルナに熱をあげている攻略対象は、もちろんその学年の中にもいる。

 ルハーニ・アザルのようにいろんな人にたいして疑いの目を持っているようではないけど、たまに彼らを見かけると威嚇するような目線を飛ばされることがある。


 全くもって意味が分からないし、こっちを見んなとすら思ってしまう。


(次は移動か……ってヤバい!忘れ物した!)


 急いで忘れ物を取りに戻り、授業に遅れないように駆け足で移動する。この前マルリーにたまたまこの姿を見られた時はめちゃくちゃ説教されたので、出来る限り人目のない場所を駆けていく。

 すると曲がり角に入った途端、突然目の前に何かが飛び出してきたので驚いて咄嗟に身体をできる限り捻って、その対象物を避けた。何とかぶつからずに済んだものの身体の勢いは止められず、私は盛大に転んでしまった。


「……は?!なんで私じゃなくてあんたが転ぶの?意味わかんないんだけど!」


 廊下を走っていた私も悪いが、何とか避けようとして転んだ私に対して何たる暴言と思いつつ顔をあげると、そこには現在要注意人物のルナが立っていた。

 まさかの人物にこいつと接触するのはまずいと直感的に考え、すぐに立ち上がりその場を去る。後ろから「ちょっと!」という声が聞こえてきたが無視である。


 

 ゼェゼェと肩で息をしながら、教室の扉に寄りかかる。

 なんとか授業には遅れずに済んだ。

 教室に入る前に簡単に制服についた汚れを払う。

 

「な、なぁ、お嬢ちゃん」

 

 今度は誰かに話しかけられる。

 話しかけられた方向を見てみると、1人の男子生徒が立っていた。……いや、お嬢ちゃんって私の事呼んだけど、同い年くらいですよね?と疑念を抱く。

 もしかして、私ってここの生徒に見えないのかしらと冗談を心の中で言いながら「私ですか?」と返答した。

 

 話しかけてきた男子生徒は、とてもガタイがよく背も高い。パッと見でも力が強そうだという印象を受ける。しかしそんな図体のデカさに比べて、彼の眉毛が申し訳なさそうに下がっているものだから不思議と恐怖とかは感じなかった。


「なんでしょうか?」

「い、いやぁ……さっきの様子を見てたんだが、少し話ができないかなと」


 男子生徒はしどろもどろになりながら私にそう言った。流石にその挙動不審さには別の警戒心を抱く。


「申し訳ないのですが、もうすぐ授業が始まりますので……」

「あ、そうだよな!でも、その……嬢ちゃんにとっても悪くない話っていうか、俺が個人的に聞いてほしいことなんだ。だからその……、嬢ちゃんがよかったらでいいから昼休みとか時間の空いているときにでも話を聞いてくれないか?」

「……?わ、わかりました」

「本当か?!じゃあ中庭にある噴水のところで待ってるから!呼びとめて悪かった!」


 男子生徒は満足そうにそういうと、すぐにどこかへ去っていってしまった。予鈴はすでに鳴ってしまっているのに、あんなに呑気に歩いていて大丈夫なのだろうか?

 それにしても、先ほど彼が言っていた「さっきの様子」って、ルナとぶつかりそうになって私が盛大に転んだあの現場のこと?それについて話したいということだろうか?

 お説教?それとも私に対する安否確認?でも、そんな雰囲気じゃなかった気がする。


「私にとっても悪くない話って……?」


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