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波乱の予感? ー2ー

 


「あぁ、いや…………何でもないよ」


 何でもない、と言ったわりにはどこか居心地悪そうに顔を背けるアルノー。そんな彼の様子が気になった私たちは、彼が向いていた方向に目を向けた。そして同時に彼の行動に合点し、マルリーにいたっては眉をひそめた。

 

 マルリーの機嫌が一気に悪くなり、アルノーは気まずそうにしている。


 その原因は、視線の先にルナが立っていたからだ。


 彼女は、また物陰からこちらの様子をうかがっていた。私と目が合うとすぐにどこかに行ってしまったが、アルノーの様子を見るにルナは彼に付きまとっているのかもしれない。


「また来たのね」


 マルリーは椅子から立ち上がり、ルナが去って行った方向を睨みつけている。ぺーシュは私たちの様子を見て何かしらの雰囲気は感じ取っているみたいだが、詳しい事情は教えられていないのでただ不安そうにしていた。


「どうやらアルノー様に用があるみたいですね。あれ以来、何かしらの接触はありましたか?」


 ”あれ以来”というのは、二学期が始まる前に私たちが顔を合わせた日のことだ。


「あぁ……、二学期が始まってから何度か……。はじめは前みたいに一緒に話してほしいって言われて、それを断ったら僕の持っているペンダントを欲しいって言われたよ」

「なんですって?!なんて図々しい!」

「ペンダント、とは?」

「これだよ」


 アルノーは胸元から小さなペンダントを取り出した。ぺーシュがそれを見て感嘆の声を漏らす。

 確かに綺麗で上品な物だった。値打ちはそこそこするのだろうか。

 

 アルノーがペンダントの横の引っ掛けに指をかけて中を開ける。その中から美しいお城の絵が現れる。


「これはサラヴァン王国の城だよ」

「つまりお二人の故郷の風景なのですね……!とっても綺麗なお城ですね!」

「ふふ、そうでしょう?」


 しかし、ペンダント……?ゲームの中でもそんなアイテムがあったような気もするが、それって装備アイテムとかでだっけ?

 いやでも私、”鐘”では武器コンプリートと装備コンプリートとかしてたから、どんなアイテムがあったのかは覚えているつもりなんだけどな。もしかして入試難易度が低い物とか、あんまり強くないアイテムだったのかな?

 それかアルノーが持っている物だし、彼の装備アイテムとかだったのかな?攻略対象の装備アイテムまでは完全に憶えていないから、それなら納得ができるかも。


「ですが何故、ルナ様はそのペンダントを欲しがっているのでしょうか?何か理由でも、言っておられましたか?」

「それがよくわからないんだ。確かに僕はこのペンダントを肌身離さず持ち歩いているけど、あまり人前に出したことはない。彼女にも話したことは――ないはずなんだ。だからペンダントのことを言われたときは驚いてしまったよ」

「どちらにしても、お兄様の物を欲しがるなんて不敬にもほどがあります!私、一言物申してやりますわ!」

「待って、マルリー」


 怒りながら、ルナに何か言ってやろうと彼女の後を追おうとしたマルリーをアルノーが引き留めた。マルリーは不満げな顔をしたが、アルノーの言うことを聞き、私たちのもとに戻ってきた。


「マルリー、できれば彼女には近づかないで欲しいんだ」

「何故です!まさかルナさんを庇われてッ」

「違うんだ。むしろその逆で、彼女の様子は何かおかしい。思えば僕との会話だって不審な点がたくさんあった。確かに僕が悩んでいるときに、彼女にその理由を話してしまったこともあったけど……それ以前に彼女は僕の心中を全部言い当ててみたし、僕の生まれ育った環境とかも知っているようだった。それにこのペンダントのことだ。まるで、彼女は最初から全て知っているみたいに振る舞うときがある」


 真剣に話すアルノーの姿を見て、ぺーシュとマルリーは息をのんだ。

 しかし私としては、特に驚きもしない。彼の言葉により私と同じ転生者でなければいいなという微かな望みが砕け散ったくらいだ。

 

 まぁ、彼女の行動はすでにおかしいことだらけだった。定期試験のこととか、明らかに早すぎる攻略についてもだ。私への対応もおかしかったし、これで転生者でなかったらバクでしかない。


「それに……君たちはジャナサール王国のルハーニ・アザル卿のことは知ってる?彼は僕と同じクラスの人なんだけど」

「もちろん知っていますわ。あのルナさんがべったりと付いていた殿方ですもの」

「僕が知っている限り、彼は結構大雑把な性格なんだ。けれど、いつも付けているイヤリングを大切にしているみたいでね。前に一度、どこかに失くしてしまったらしくて大慌てで探し回っていたよ。でも先日彼の片耳にイヤリングがついてなくて、落としたんじゃないかと思って尋ねてみたんだ。そしたら気にするなって言って、どこか嬉しそうな顔をしていたんだ」

「つまり、その御方は自身の大切なイヤリングをルナ様に渡した……ということですか?」

「断言できるわけではないけど、僕はそう考えている。彼は今、彼女に大切なものを預けるくらいには心酔している。もし彼女に何かあったら何をするかわからない」

「そ、そんなに野蛮な人なのですか?」

「……僕の杞憂だといいんだけど、どちらにしても厄介な相手からの顰蹙なんて買うものじゃないだろう?」


 それについては全くもってその通りだ。

 しかし、ルハーニ・アザルにイヤリング?うーんこれもどこかで聞いたような組み合わせだな……。この思い出せそうで思い出せない感じが、すっごいもやもやする。


「でも、ルナさんは何をしたいのかしら……少し不気味ね」


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