表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/47

早く見つけなければ大惨事 ー2ー

「……もしや、アドミール様の関心を自分に向ける為に、お嬢様がわざとそう言っているだけではないのですか?」





「は…………?」


 予想していなかったことを突然言われ、思考が停止する。今私は何を言われた?アドミールの関心を引くために、私が騒ぎ立てていると言わせたのか?


「あり得ないお話ではないかと。お嬢様は今までこの家の誰からも注目されることはありませんでしたが、夕食会の事件以来周りから憐れまれるようになりました。あのようなことが起きれば皆が自分に振り向いてくれるのかと思い、今回の事件も必要以上に事を大きくしようとしているのでは?」


 はぁぁぁぁぁぁ?!

 そんなわけないでしょ!黙って聞いていればなんでそんなこと言われなくちゃいけないのよ!

 そもそも、ここの人間誰一人として私に関わってこなくて平気だわ!!




 ーーーーと、大声で言い返してやりたかったが、感情的になっても仕方がない。とにかく深呼吸をして落ち着く。

 というかこの人さっきからなんなんだ。早く事件を解決したいんだから、余計な事を言って場を乱さないで欲しい。


 まずはこの人から黙らせないとダメかもしれない。


「そうお考えになる割には、私の部屋から物がなくなったというお話は信じてくださるんですね」

「なんですって?」

「メイド長はさっき私が皆さんの関心を引くためとおっしゃっていましたけど、それなら今回のことは始めから私の狂言だという可能性のほうが考えつくではないですか。でも、そそう言わないということは……少なくとも物が無くなったということは信じてくれているのですね」

「そ、それは……」

「メイド長は先程、夕食会での事件までは私が解雇されたあの使用人たちから嫌がらせを受けていたことは知らなかったと言っていましたよね?でも今回もすんなり受け入れていますから……私は嫌がらせを受けていても不思議ではなかった、ということですか?あぁ、とっても悲しいです」

「…………」

「急に黙って、どうしました?――でも、ちょうどいいです。そろそろこの話、進めたかったので」


 メイド長は静かに、申し訳ございませんでしたと言うと、その後は何にも言わなかった。彼女の表情から、突然スッと感情が消え失せ、何だか薄気味悪さを感じた。

 けれど、横槍が飛んでこなくなったので、ようやく本題に入ることができる。もっとすんなり話を進めるはずだったのに、余計な時間をくってしまった。


 話を進めるために、声を張る。


「大広間に皆さんを集めた理由には、確かに今回の事件と関係があります。しかしそれは、犯人探しというわけではありません。後にその調査も行いますが、まずは皆さんの安全確保のためです」

 

『なんだって?』

『私達の、安全のためってどういうことかしら……?』


 私の発言の意味がわからず、使用人たちは困惑の声を上げた。


「私の部屋から盗まれた物は、アメシティーオーズ学園から借りた本です。学園は生徒の勉学のため、貴重な魔導書の貸し出しを惜しむことはありません。しかし、それには紛失などのリスクを伴うため、学園は生徒たちに出来る限り本を丁重に扱ってもらおうと考え、おまじないを施すことにしたのです」


 少し前にペーシュが図書委員の仕事をしなくてはならないからと、お昼休みや放課後は彼女と一緒に過ごせなかったときがあった。そのとき彼女は、“返却処理チェック”は最後まで成し遂げなければいけないと言っていた。


 返却処理チェックとは、貸し出す際に施したおまじないが返却された際に、きちんと解呪されているかをチェックするという図書委員にとって大切な仕事だ。万が一、解呪されていない本をそのまま本棚に戻してしまうと、数時間後に“大変なこと“が起こってしまうため、定期的にそのチェックが行われる。

 

 その“大変なこと“が今から起きそうだから、というかもう起こっていると思ったからみんなを集めたのだ。


「おまじないとは何ですか?」

「本から煙を出し続けるおまじないです」

「…………え?」


 使用人たちはみんな、頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる。

 慌てた様子の一人が、私に質問を投げかけた。


「そ、それは、どういうものですか?煙が出続けるって、大丈夫なんですか?」

「はい。本を借りた生徒本人が、煙を抑える呪文を定期的にかけていれば問題ありません」


 私も初めて聞いた時は驚いた。普通、本を傷つけたくないんだったら防護魔法とかそういう類の魔法をかけるのではないのか?と思ったけれど、生徒自身がきちんと意識して失くさないようにするためにこのおまじないをかけるようになったという。因みに、あくまで煙を抑えるだけなのでおまじないの効果がなくなるわけではない。解呪のまじないは、図書委員しか知らないらしい。

 

 なので、生徒が本を失くした場合には当たり前だがその本からあり得ないくらいの煙が出続ける。煙の発生源を辿ればすぐに見つけることができるが、周りの人たちにも失くしたことがバレるため、恥ずかしい思いをしたくなければきちんと管理をしろという意味でもあるらしい。



 ……こんな面倒くさいおまじないがかけられるってことは、前に誰かが貴重な本を紛失したり破損したりしたことがあるってことだよね……。




 学園にいる間に借りるなら、抑える呪文を唱えるのは2日1回の頻度でいい。たとえ少しの間なら忘れていても、煙が部屋に充満するくらいだから、まぁ平気だろう。

 しかし夏休みのように長期期間に借りるとなると、制限が厳しくなる。1日に2回呪文を唱えなければならない。今日私は街に出かける前に一度唱えたが、時間を考えるとそろそろ唱えないと非常にまずい。

 

 突然屋敷の中が煙だらけになったら、何も知らない人たちはみんな大パニックになるだろうと思って大広間にみんなを集めることにした、という訳だ。


「そんな……!では今この部屋の外はッ」

「煙だらけになっておるかと」


 そういった途端、部屋の後方――つまり出入り口の扉付近で小さな悲鳴が上がった。皆がそちらに視線を向ける。



 その扉の隙間からは、すでに手遅れだと言っているみたいに青い煙が流れ込んでいたのだったーー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ