頼もしい(?)協力者 ー2ー
アドミールが使用人たちに声をかければ、目的の人物はすぐに見つかった。突然呼び出されたその人は、目を白黒とさせていて挙動不審になっている。
「あああの、あののの……わ、私に何かごようでしょうか……」
こっちが可哀想だと思うくらい恐縮しているその使用人は、随分と若い女の子だ。もしかしたらミラと同い年くらいかもしれない。
「何をそんなに緊張しているんだ?」
挙動不審なその姿に、アドミールの眼光はますます鋭くなり、それを見た使用人はますます委縮して悪循環に陥っている。このままでは話が進まない。
「あなたから聞きたいことがあるの。えっと……申し訳ないのですが名前を教えてくれませんか?」
「わ、私はローネと申します。わ、私は使用人ですので敬語は不要です……」
「……わかった。ローネ、貴方がいつも私の部屋まで配膳をしてくれているのね」
「そ、そうです……あ、あの、私は何か……粗相をしてしまったのでしょうか?」
「いいえ、そのことについては全く問題はないわ。貴方はなぜいつも私の部屋まで食事を運んでくれるの?」
「そう申し付かっているからです……」
「他にもそのような指示を出された人はいる?いや、これだと回りくどい……。そうね、質問はこれ。私の身の回りの世話について、食事の配膳、部屋の掃除とかに担当者はいるのかしら」
「え、は、はい。食事をお嬢様のお部屋まで運ぶのは私で、お部屋の掃除は私の他に2名ほど……」
「あ、そうだったのね。もしかして今日も掃除をしてくれたの?」
「はい……。お嬢様がお部屋にいらっしゃらないときに掃除をしなさいと命じられたので……」
それについては、まぁ、申し訳ないかなと思っている。
「それはいつぐらいから始めて、いつ終わらせたの?」
「お嬢様が外出されたと聞いてからすぐに取り掛かって……1時間ほどで終わりました」
「その時に何か気が付いたことはある?他の2人の挙動がおかしかったとか、部屋が荒らされていたとか」
「そのようなことはありませんでした!他の者たちも普段通りに業務を全うしていたと思いますッ……!」
それもそうだ。そもそも私の部屋は荒らされているとかそういうのはなかったし、彼女たちが犯人ではない限り、何か異変に気が付いたら誰かしらに報告するだろう。仕事には何事にも報連相が大事だ。仕事の基本だから、こんな高貴な家柄に勤めている使用人にとっては、基本中の基本として刻まれているのだろう。
私は今日の朝10時頃には屋敷を出ていた。その時には何も異変はなかった。そこから彼女たちが部屋の掃除をして1時間。ここにも異変はない。
私がここに帰ってきたのは15時過ぎくらい……。すると大体犯行可能時間は約4時間……って長いな。全く参考にならない、あまり考えても意味がないかも。
「何があったのかお聞きしても宜しいでしょうか……?」
「……部屋に置いていたはずの物が無くなっていたの。状況から考えて、誰かが故意に持ち出したと私は考えているわ。だから、アドミール様にも協力してもらってその人を探しているの。最悪犯人が見つからなくても、無くなったものだけ見つかればいいから」
「え、えぇ!?」
「それで、貴方は掃除が終わった後の時間も私の部屋に入った?それか誰か私の部屋に入った者を知っているかしら?」
「わ、私は掃除をした後からはお嬢様のお部屋に立ち入ることなどしておりません!他の者についても、何もわかりません!!」
「そう……念のため、一緒に部屋の掃除をしたって言う2人も連れてきてくれる?理由は明かさず、ただあなた達を呼んでいるってね」
ローネにそう告げると、彼女は一目散にこの部屋から出ていって他の者を連れてきた。
呼び出された2人もローネと同じように呼び出されたことに驚いていて、理由を告げると顔面蒼白になり無実を訴えてきた。
彼女たちがここまで怯えているのは、ただ単に私が怖いからではない。私の後ろに立っているアドミールが怖いのだ。彼は今のところ被害に遭った私に事情聴取する場を譲ってくれているみたいだが、じっと黙って被疑者である使用人たちを睨んでいるその表情が怖い。彼のおかげで使用人たちが次々と証言してくれているのである。それを狙ってはいたのだが、ちょっと圧がかかりすぎている気もする。
(関係ないけど、ミラと同い年くらいの子ばかりだなぁ)
主に私の身の回りのお世話をしてくれていたという使用人たちは、10代半ばくらいに見える。夏休みが始まって最初に公爵家に来たときは、目についた使用人のほとんどは30か40代くらいの人が多かった。
みんなムスッとしてて固そうというか近寄りがたい雰囲気が満載だったのだが、いつも背筋がピンと伸びてて品格があった。ベテランだったのだろう。
今、私の目の前にいる彼女たちはその人たちに比べると、少し自信がなさげで落ち着きがない。……取り調べを受けてるからかもしれないけど。
「どうするんだ?この者たちからこれ以上得られそうな情報はないが」
「うーん……」
とりあえず彼女たちにも仕事があるだろうから、礼を言って持ち場に戻ってもらった。
「父上は今夜遅くに帰宅なさると言っていた。そのときになったら大規模に調査はできると思うが」
「え、いやぁ……それは」
「どうした?父上なら、力を貸してくれると思うが」
そもそも今日って、公爵はこの屋敷にはいなかったんだ。公爵がこの屋敷に帰ってきた時、まだ持ち去られた本が見つかっていなかったら、事態が悪化している可能性が大だ。
うーん……アドミールにはきちんと話しておいた方がいいよね。
「それでは色々と手遅れなんです」
「どういうことだ?」
「実は――――」
私はアドミールに時間が問題であることと、その理由を話した。すると彼は眉間に皺を寄せて、苦々しい表情になってしまった。
「そんな話……私が在学していた頃には聞いたことがなかった。本当なのか?」
あ、そっか。ミラも通ってるんだから、アドミールもアメシティーオーズ学園出身に決まってる。彼が在籍していたのは何年前なんだろう。
「はい。むしろそれがあったおかげで、本自体はすぐに見つかると私は考えています。ですが、何も知らない人たちは大変驚くと思われます」
「ふむ……ならば、それを逆手に取ってみたらいいのではないか?」
口に手を当てて考え込んでいた彼が、一計を思いついたようにそう言った。




