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公爵様とのご対面 ー1ー

 翌日、私は言われたとおりに執務室とやらに向かった。

 ノックをして入ると、既に公爵は真面目な顔をして座っていて、その両脇にはアドミールとマリオスが立っていた。


 その2人もいるのは聞いていないんだけどな……。


「来たかミラ。お前にはいくつか聞きたいことがある。昨夜のこともそうだが、学園で階段から落ちたことについても聞きたい。そのような事故にお前が遭ったことを私は学園から何も聞いていない。どういうことだ」


 それは知りませんと言いたい。

 そんなん、教師とかが家に伝えるものではないの?

 それとも私から何か伝えるべきだったのか?


「――そのことにつきましては、白魔法を扱う親切な人から、熱心な治療をしていただいたので一大事には至りませんでした。先生方も問題ないと判断なされたようです」

「そのことと私への報告がなかったことについては関係ない」

「私から何も伝えなかったことについて、……それは、全く頭になかったからだとしか言えません」


 正直に、本当に何も考えていなかった。

 そもそもその時は大混乱を極めていて、「このことを言わなくちゃ!」と考える余裕なんてなかった。


 まぁ、合宿訓練のときは私が報告しないでほしいって言っちゃったからね。この件について彼らが知らないのは私のせいだけど、それより前のことについては何にも知らない。

 というより、こんなに追求されるんだ。それなら何がなんでも合宿訓練のことは言わないようにしなくては。だって、今でもちょっとめんどくさいもん。


 

 私の回答を聞いた公爵は、眉間に皺を寄せている。

 ふざけていると思われているのかもしれない。


 でも全てを話すわけにはもちろんいかないし、だからといって上手に誤魔化せる気もしない。ありのままの気持ちを伝えるほかないだろう。


「本当に問題はないのか?味覚がおかしくなったと昨夜は言っていたが」

「そのことについては気のせいだったようです。私の料理を食べてくれた使用人にお聞きになればわかるかと」

「もう話は聞いている。元料理人にもな」


 元……?元ってことは解雇されたってこと?

 え?料理人が?はやくない?

 

 いやでも、あんなに筋が残ったお肉や塩辛い副菜だらけの料理で料理人が無関係ってわけがないか。味付けはもしかしたら他の使用人が勝手に塩振りかけまくるとかしてた可能性があるけど……あのお肉に関しては料理人が意図的に処理してないとありえないことだし。

 それによく考えたら、食べ物を提供する人がそんないたずらをしてたら信用問題に関わるよね。そりゃ解雇もされるわ。


「そいつは過去にもお前の食事に”細工”をしたことを認めていた。他の使用人も知っていて黙認していたとな」

「……………………」

「お前もわかっていたことだろう。なぜ何も言わなかった」


 なぜ言わなかって聞かれると――なぜなんでしょう。

 

 最近どうも以前の私とやら記憶があやふやになってきてて、自分でも何を言っているのかわからないけど……別人の記憶じゃないのかって考えてしまう。

 誰かのアルバムを見ながら、その当時の様子をいろいろと想像するような、そんな感覚に近い。


(それこそ前に保健室の先生に聞かれたこの身体のことだって、自分自身のことだったのに他人事みたいで――)


 そこまで考えて、とあることに気が付いた。



 

 あれ、もしかしてだけど……この前栄養が足りないって散々言われてたのってあの嫌がらせのせいじゃない?




 先ほどの話によると、今回解雇された料理人たちは今までも私の食事に嫌がらせをしていた。具体的にどんなことをしていたのか全く覚えていないけど、ご飯を食べようとする度にそんな細工を疑わなければいけないなんて、そんなの苦行でしかない。

 

 そんなのが続けば、次第に物を食べることに拒否反応を示してもおかしくはないだろう。

 

 食べるという行為が完全に苦手になった結果、身体が痩せ細ってしまい、そして限界が近づいてきたところ魔法で体力を増強させること思いついたのかもしれない。少量の食事と、強力な魔法によって自身の身体を何とか保たせていた、私ーーいや、かつてのミラ。

 

 強力な魔法をすでに発動していては、他の魔法なんて満足に使えない。そのため、思うままに自分の力を発揮できずに、周囲からは馬鹿にされていたのだ。


 ゲームではラスボス戦のミラが、強力な魔法を使いまくっていた理由が今ようやくわかった。

 きっと自分の生は諦め、ただ主人公たちを道ずれにすることだけを考えたのだろう。自暴自棄になり、何もかもに絶望して暴れることだけしか、彼女の頭の中にはなかった。


(……………………)

「ミラよ、何か言いなさい」

「……わかりません」

「、何だと?」

「そのようなことは私にとって遠い過去であり、その時私が何を考えていたのかを公爵様にお話しすることはもうできません。当時の私はどこかに行ってしまいました」

「何を言って、」

「昨夜の私の行動については、責任を取ることはできます。いかようにも処分してください」


 頭を軽く下げているので前方にいる3人の表情は見えないが、私の発言と行動に息をのんでいるような雰囲気が感じ取れる。

 自分の発言がおかしいことに気が付いているが、どうしようもない。

 ここで勘当を出されると少し今後が厳しいが、まずは今ある資金をどうにかやりくりしてモンスターを討伐しまくってお金を貯めればなんとかーーー、





「……顔をあげなさいミラ」

 

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