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驚異的な実力を持つ、この世界の主人公 ー2ー

 突然辺りの人たちが一斉に騒ぎ始めた。

 なんだ?と思って振り返ってみると、あたり一面が真っ白になっていて驚いた。


 白い?いや違うこれは光だ。1年生の方から物凄い光がここら一帯を包んでいる。


 これってもしかして……。





『落ち着け!くッ、なんだ?この光は……』

 

 多くの生徒たちがパニックになって、叫び声をあげたり呻いていたり、あとたぶん光から逃げようとして逃げ回っているような足音も聞こえて阿鼻叫喚だ。

 でも、不思議だ。こんなに眩しくて何も見えないのに、目が痛いとか何もない。むしろこの光景を、どこかで見たような……そんな感じさえする。


 次第に光は収まり、それを発していた張本人の姿が見えた。そこにはやはり、予想通りの人間がいた。

 

「ルナ……」


 光が収まったことで、周りの人たちも私と同じようにルナのことを見ている。


『うそ、あの平民があんなに強い光を発していたの……?』

『お、恐ろしい……!』



 ーーーーあれ?おかしい。ゲームでも主人公のルナが誰よりも強い光を発してみんなを驚かせるのだが、周囲は彼女のことを怖がったりなんてしなかった。さっきの光景は私も驚いてしまったけど、ゲームの演出を現実で体験してみるとこんな感じなのかと思ったくらいだったのに。


「うぅ……」

「!ぺーシュ、大丈夫!?」


 隣から苦しそうな声が聞こえて、ぺーシュが地面に座り込んでいるのが見えた。彼女は左手で顔を覆っている。

 咄嗟に声をかけると、かすかに大丈夫ですと返事があった。

 そうだ、マルリーは?私たちよりもルナの近くにいた彼女は大丈夫だろうかとマルリーを急いで探す。しかしそれは杞憂だったようで、マルリーは倒れている人に声をかけたり、パニックになっている人たちに落ち着くように声をかけたりして事態の収束を図っているようだ。


「ミラ様はお怪我などございませんか……?」

「平気。ぺーシュ、目は痛む?」

「いいえ、少し目が眩んでいますが痛くはありません。不思議ですね、あんなに強い光を見たのに……」


 教師たちはいち早く事の収束に取り掛かっている。しばらくすると他の人たちも落ち着きを取り戻してきた。しかし、中にはパニックになって騒いでいる人が数名いたため、何人かの教師が彼らを落ち着かせようと必死になっている。

 

 この様子では、試験を続けることはできないかもしれない。


 ちらりとルナの様子をうかがう。彼女は自分が起こしたことなど興味がないようで、ただ立っているだけ、のように見えた。ここからでは遠くて彼女の表情まではわからない。


 混乱した状況を収束するため、教師はあちこちに走り回っていた。やはり、今日の魔法実技試験は中断となった。不幸中の幸いか、試験をまだ受けていない人が残り少なかったため別日となってもそこまで時間がかからないことだろう。


 試験監督者はため息をついていた。




ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーー

ーーーー

 

【3日後】

 


 本来ならば今日は試験が終わって学園も休みの日なのだが、私とマルリーは学園に赴いて中庭でお茶をしていた。

 ぺーシュを待つためである。

 ぺーシュはこの前の魔法実技試験を受けられなかったので、急遽設けられた別日に試験を受けることになった。しばらくマルリーと談笑をしていたら、アルノーがやってきた。


「お兄様!どうかなさいましたか」

「この前、下級生が受ける魔法実技試験で事件が起きたって聞いたから様子を見に来たんだよ。僕は昨日その話を聞いてね。とにかく2人が無事でよかった」

「ご心配をおかけしました」

「何があったんだい?」

「……その、ルナさんの魔力が強くて、彼女が放った光に驚いた人たちが少々混乱してしまって……」

「あぁ……」


 彼女の名前を出したとき、アルノーの表情が少し陰った。彼女に対してまだ何か思うところがあるのかもしれない。


「彼女がこの学園に編入したのも、その魔力量が多いからだと聞いたけど……その場を騒然とさせるくらいなんて思いもしなかったよ」

「私も驚きました。彼女は平民出身なので、魔法についての勉強は王族や貴族と比べて機会も少なかったはず。それなのに、あんなにオーブが光るなんて」

「光らせるのって、ただ魔力が多いだけでは駄目なのですか?」

「当たり前よ。その魔力をコントロールする力がないと、きちんとした魔法が発動できないわ」


 やっぱりそうなんだ。

 ゲームのイベントからも考えて、監督者のアドバイス一つだけでオーブを光らすことができた主人公のポテンシャルは凄まじい。しかし、あの光の威力は周りの反応から考えると異常だったのだろう。

 つまり、今の彼女はそれだけ魔法の扱いに長けているということ……?


「ミラ様ー!マルリー様ー!」


 遠くの方からぺーシュの声が聞こえてきた。

 彼女の表情は晴れやかで、無事試験が上手くいったのだとすぐにわかった。


「無事に終わりました!あ、そちらの方は……」

「初めまして。僕の名前はアルノー=イヴァン・カプール。妹のマルリーから君の話を聞いているよ」

「お初にお目にかかります。私の名前はぺーシュ・エラ・カルティエと申します」


 ペーシュが慌てて挨拶をしたが、急いでいるというのに見事なカーテンシーだ。貴族のマナーとかを最近マルリーに指導してもらうようになったが、まだまだ彼女のような完璧な身のこなしができない。


「それでぺーシュ。試験はどうだったの?」

「私の持てる限りの実力で挑めたと思います」

「それはよかったわ」

「はい!ありがとうございますマルリー様!」




 それからしばらくは4人でお茶会を楽しんだ。といっても会話の話題は、あの時の乗馬合宿訓練でのこと。特にぺーシュが私に関してのことを聞きたがっていたので、それをマルリーとアルノーが当たり障りのない感じでぺーシュに話した。それから、私の体調のこととか、属性魔法についてだとかに話が転々と変わっていった。


「そういえば、もうすぐ夏休みだね」

「期末試験が全て終わり、結果が出たらすぐに長期休みに入るのでしたっけ」

「じゃあもうすぐ船旅だ」

「う……」

「もしかしてマルリー様は、船がお嫌いなのですか?」

「あまり得意ではないわね。あの、なんとも言えない浮遊感が少し苦手だわ」

「でも僕たちが帰る日は、どうやら波が穏やかみたいなんだ。きっとあの日みたいに大きく揺れることはないと思うよ」

「あの日……とは?」

「僕たちが幼いころ、お父様たちと一緒に船に乗って隣国までいったことがあったんだ。ただ、帰りのときに少し天候が荒れてね。その時のぺーシュの顔色は見ているだけで死んでしまうのではないかと心配するほど青白くて……」

「その節はご心配をおかけしました……」


 アハハと笑うアルノーと、恥ずかしそうに顔を赤らめるマルリー。その2人の姿を見ているだけで、昔から本当に仲の良い兄妹だったのだろうと感じる。



 ふと隣を見ると、ぺーシュが彼らを見つめている。2人はお互いに話が盛り上がっているので気が付いていないみたいなので、私がこっそりとぺーシュに話しかけた。


「どうしたの?」

「あ、いいえ……。お二人の仲が、少しうらやましくて……」

「……?」


 ペーシュは兄妹を、少し悲しそうに見つめていた。

 

「ちょっと、聞いていますの!?」

「え?」

「は、はい!」


 突然マルリーがこちらに話を振ってきた。もちろん聞いていなかったため、ぺーシュと一緒に聞き直した。


「もう、ちゃんと聞いていなさい!特にミラ、あなたよ!」

「え、私ですか……?」

「そうよ。夏休みに入ったら、私たちが貴方の食事を見張れなくなるの。私たちがいないからって不摂生を働いたら、どうなるかお分かりね?」

「マルリー様の言う通りです!ミラ様、ご自分のお身体を常に労わってください!」

「あはは……」


 話についていけてなかったはずのぺーシュも、マルリーの言ったことにすでに賛同している。どうやら随分と私のことで心配されているみたいだ。


「き、気を付けます」

「気を付けるのではなくて、やるのよ」

「はい……肝に銘じます……」


 2人の圧にとにかく従うしかない。それでも私の身を案じて言ってくれているのだから、反発する気はないのだけど。


「うふふ、それでいいのよ」

「……前々から思っていたけど、マルリーってとっても可愛いですよね」

「はぁ?!だからそうやって言うのを」

「身内にはとことん甘くなるからね、マルリーは」

「お兄様?!」

「……ふふッ」

「ぺーシュ?今笑いまして……?」


 慌てるぺーシュの頬っぺたを、マルリーがキュッとつまむ。アワアワと慌てるぺーシュの顔を見て、怒っていたマルリーも笑い出す。

 そうして私たちは、陽だまりの中、楽しそうに笑い合っていた。


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